私営企業の急増による労使関係の新たな課題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

中国は1990年代後半から、私営企業の発展を奨励する政策を講じたため、私営企業は急速に発展してきた(本誌2000年8月号参照)。1999年12月までに、私営企業の登録数は151万社に達し、雇用労働者は2022万人に上った。しかし、私営企業の急成長は、既存の社会制度の中では対応できない新たな問題をも生じさせ、社会主義市場経済に新たな難問を呈している。

広東省中山市中横イルミネーション工場は、1998年に開業した私営企業である。2000年5月、工場の管理者は、1人の労働者が生産原料を盗んだと疑い、人を集めてこの労働者を殴り、事実無根の窃盗と共犯者リストの供述を強要した。その後、さらに19人の労働者に暴行を加え、彼らの身柄を拘束し、自由を奪った。翌日、地元警察が救助に駆けつけて、被害をうけた労働者はようやく解放されたのである。

この事件の報道を受けて、労働組合の全国組織である中華全国総工会は、即座に驚きと憤慨を表明し、中山市の総工会は、事件の解決に関与し、その処理に協力した。その後、中華全国総工会は、私営企業労働者は国有企業労働者と同様に、その法的権利は法律に保障されており、彼らの権利を侵害する行為は、法律的に責任追及されるべきとのコメントを発表した。中華全国総工会の説明によると、労働者権益に対する重大な侵害事件の大半は、労働組合を結成していない企業で発生しており、中横イルミネーション工場も労組がないため、労使関係の調整機能に欠けている。

総工会はこの事件を、私営企業における労組結成の必要性を訴えるきっかけとして捉え、新規企業での組合結成活動キャンペーンを展開している。総工会は、各級の組合と組合幹部には法律上賦与された労働者権益の保障を監督する責任があり、法的権益を侵害された労働者がいる場合、組合は全力で彼らのために代弁し、しかるべき法律的援助を提供すべきであり、労働者自身も、法律を武器として自己の権利を守るべきだと述べている。

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