(香港特別行政区)失業率、2期連続で大幅に改善

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

1997年のタイの通貨危機に端を発した経済危機は周辺アジア諸国にも波及し、香港でもこのあおりを受けて景気は深刻な後退を示し、雇用市場の悪化が進行して、ピーク時の1999年2~5月期と3~6月期には、失業率が2期連続で6.3%を記録した。だがアジアの景気回復の動きの中で、香港でも景気は予測を越えて回復基調にあり、これと連動して、このところ雇用市場は統計上は好転しており、2期連続で大幅な改善を記録している。

2000年6月19日発表の政府統計によると、3~5月期の失業率は5.1%で、2~4月期の5.5%から大幅に0.4ポイント低下した。就業者数も1万7600人増えて337万8000人になり、失業者数は17万7400人で、前期比で約1万3000人減少した。不完全雇用率は3.2%で、前期比で0.2ポイント上昇したが、雇用の改善は、製造、建設、運輸、通信、サービス業部門で見られた。

タン・クォン・ユウ政府エコノミストは、景気の回復に即して労働力の需要が伸びており、これに労働力人口の増加の緩和が伴って失業率の低下に寄与したと述べた。またジョセフ・ウォン人材教育長官も、全般的な景気の回復に伴い、労働市場は着実に好転しており、5月に労働局の仲介で就労した労働者は5400人という過去最高の数字を記録し、これは前年同期比でも56%の増加だと述べた。またウォン長官は、労働局に申し込まれた求人数も1万4000人で、これも前年同期比で32%の増加という高い数字を記録したと述べている。

6月の政府関係者の楽観的な見通しに続いて、7月17日に発表された政府統計でも労働市場の好転はさらに続いており、4~6月期の失業率は、前期比でさらに0.1ポイント低下して5.0%になり、1998年9月以来21カ月ぶりで5%の低さを記録した。失業者数は600人増えて17万8000人になり、ほぼ横這いだった。不完全雇用率は0.2ポイント低下して3.1%で、不完全雇用者数も3300人減少して11万3000人だった。6月に続き、雇用の改善は、特に製造、建設、輸出入部門で顕著だった。

政府関係筋は、失業者数の若干の増加は、新卒者の労働市場への参入によるとしている。そして、ドナルド・ツァン財務長官は7月24日、6月にワシントンで行った年間経済成長予測6%をさらに上方修正すると述べているが、このような景気回復予測との関連で、同筋は、順調な景気回復による労働需要の増加で、新規参入の労働力も吸収されることになると楽観視している。また、6月の労働局経由の求人数は1万3400人、労働局に仲介された就労者数は5300人で、それぞれ前年同期比で19%、38%の増加になっていることも指摘されている。

ただ、政府筋の楽観的な評価に対して、中華大学経済学部のテレンス・チョン助教授は、統計上の改善から失業が景気後退以前のレベルに戻るとの保証はできず、香港が現在サービス業から IT産業中心に労働市場の構造転換を図っていることを考慮すると、失業率が将来3%以下に下がるかどうかは疑問だとしている。また労働組合側からは、低所得者層の増加と貧富の差の拡大(2参照)が指摘され、景気の回復が貧困層にほとんど役立っていないと批判されている。

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