(香港特別行政区)香港テレコムとシンガポール・テレコム合併構想浮上

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

香港最有力企業の1つケーブル&ワイアレス香港テレコム(C&WHKT:香港テレコムが改称)とシンガポール政府が所有するシンガポール・テレコミュニケイションズ(Sing Tel)の合併構想が浮上し、実現すると資産4350億ドル(1ドル=13.63円)の世界第6位、日本を除くアジア最大の情報通信企業が成立するので、香港で俄かに注目を集めている。また労働側からは、1999年に香港テレコムの賃金カットとレイオフで紛争を経験した経緯から、新たな合理化による人員整理につながるのではとの懸念の声も出ている。

合併構想は、C&W HKTの親会社である英国のケーブル&ワイアレス(C&W)社が2000年1月24日に明らかにしたが、構想は昨年11月以来進んでいた。Sing Telはシンガポール政府が株式の80%を所有し、C&W HKTはC&W社が親会社として54.4%の株式を所有し、市場価格でそれぞれ2040億ドル、2310億ドルの資産価値を有している。合併が実現すると、シンガポール政府が最大の株主になり、C&W社が第2の株主になる。

C&W HKTは、特別行政区政府が香港をこの地域の情報通信技術の拠点とする政策を打ち出し、情報通信産業の規制緩和を導入してから、厳しい競争に直面している。他方、SingTelも同様の事態に直面しており、シンガポール政府が2000年1月21日、2年間前倒しで情報通信市場の規制緩和をすると発表したことで、同社の株は1月24日に10%下落した。合併により、両社とも規制緩和による厳しい競争に持ちこたえることを目指しており、さらに、高成長するインターネット等の分野で一層事業を発展させることももくろまれている。

合併の実現の成否は、現段階では明らかでなく、合併後の企業名、トップ人事等もまだ不確定であるが、特別行政区政府とシンガポール政府の要人は既にこの合併について話し合いの場を設けている。ただ、まずは企業どうしの交渉なので、何らかの合意があるまで特別行政区政府は直接介入しない立場を取っている。

香港側の反応としては、香港テレコム従業員組合から従業員の不安が表明されており、また、立法会議員リー・チュク・ヤン職工会連盟(CTU)事務局長は、この2年間のレイオフや賃金カットのこともあり、合併によりさらに合理化が進むと、すでに低下している従業員の士気に悪影響が出ると懸念を表明している。また関係筋から、未知のSingTelにたいする不安と同時に、同社を所有するシンガポール政府が情報通信市場で突出することに対する懸念も表明されているが、エヴァ・チュン情報技術・通信副長官は、香港の情報通信法では外国人の会社所有を禁じていないし、重要なのはライセンスに伴う義務の順守であり、また独占的行動をチェックする処置も設けられているとしている。

これに対して、現地アナリストは概ね肯定的で、競争による価格の下落とサービスの向上等の好影響を指摘し、香港大和証券のステファン・チュン氏も、合併が実現すれば、アジアで最も発達した2つの市場で、より強力な基盤と支配を確立し得るとしている。

今後、さらに買収に名乗りを上げる企業が出現する可能性も予想されるが、世界の情報通信産業の合併再編の流れの中でも、今回の合併構想の行方が注目される。

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