(香港特別行政区)外国人家政婦自動車運転禁止を巡り波紋

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

1999年9月以来、政府は施行日を2000年1月1日として、外国人家政婦が仕事として使用者の自動車を運転することを禁止すると決めており、これは労働組合や失業している自動車運転手等から地元の運転手の職が奪われているとの主張がなされたことが背景になっていた。これに違反すると家政婦は滞留資格を剥奪され、本国に送還されることになるので、香港外国人家政婦の大半を占めるフィリピン家政婦らの猛烈な反対が表明されていただけでなく、企業グループや家政婦を雇用している「使用者グループからも、家族の生活の不便等を理由に反対のキャンペーンが展開されていた。

このような中で、自由党党首で最大の経済団体香港商工会議所代表のジェームズ・ティエン立法会議員が、香港駐在の外国企業の反対による香港の国際都市としての威信低下を憂慮して、董建華長官とアンソン・チャン政務官に禁止の再考を促す書簡を送るなど、経済界の強い働きかけがあった。その結果1999年12月14日、政府行政会議によって自動車運転全面禁止は一部特例認可に改められ、かなり細かい特例認可の為の要件・用途と違反に対する罰則が決定された。

資格要件としては,1)家政婦が香港の運転免許証を取得していること、2)家政婦が住み込みであること、3)自動車が雇用主又はその配偶者名で登録されていること、4)自動車の種類は一般乗用車または最高8座席までのミニバンであること等である。用途として認可される場合は、買い物、子弟の学校・塾の送迎などに限定され、雇用主のオフィスへの送迎や会社の商品の配達等は禁止される。

また家政婦の違反行為は滞在許可違反となり、起訴の対象となり、移民条例により強制送還措置が取られる。また違反行為を幇助若しくは教唆した雇用主も起訴の対象になり、いずれの場合も、最高罰金5万ドル、禁固2年の刑が課される。

この決定に対してティエン自由党党首は、一歩前進だが、使用者の認可申請に対する政府の措置を引き続き監視せねばならないと、一定の留保を表明している。また政府は、経済界の圧力に屈したのではなく、原則禁止の趣旨は変わっていないとしているが,職工会連盟(CTU)のリー・チュク・ヤン事務局長は、政府と経済界の結託だと厳しく非難しており、工連会(FTU)出身の幾人かの立法会議員は、議員立法で政府の決定に対抗していくと表明している。

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