総工会指導者が協調型労働関係を提起

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

中国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年3月

1999年、中国の労働問題は、終始「下崗」、つまり国有企業改革に伴う労働者のリストラ問題に集中していた。2000年を迎えて、中国は労働や雇用の分野でどんな課題に直面するのであろうか。労働分野の専門的研究教育機関である中国人民大学労働人事学院院長の董克用教授は、懸案の国有企業改革と同時に、特に労働関係の課題、即ち労働者の権利や利益の保護に注目している。董教授は、WTO加入後に、中国経済はグローバル経済の軌道に乗り、世界の労働市場との同一化の趨勢が避けられず、国籍、文化や社会制度が異なる企業と人の交流や融合が一層進み、労働市場や労働関係が一層複雑になると指摘し、さらに国内でも都市部と農村部、第二次産業と第三次産業の間における労働力の再配置が不可避であり、経営者と労働者の利益不一致による葛藤やコンフリクトが増加する傾向にあると予測する。董教授らは、政府側が中立の立場で労働者権利を保護するための政策を出すべきだと提案した。

社会主義市場経済を標榜して、国有企業改革を進める中国では、労働関係はもっとも微妙で神経を尖らせる問題である。1999年末に、労働組合の全国組織である中華全国総工会の「工人日報」は、 麹H会主席で共産党中央委員会政治局常務委員を勤める尉健行氏の講演をトップ記事として報道する際に、「労働組合は党と同じことをするなら、存在意義がない」との内容を掲載したところ、当日付け紙の廃棄と再発行、さらに編集長解任の処分を受けた。この問題の難しさを象徴する事件である。

その後の12月14日に、労働社会保障部はそのホームページ「中国労働ネット」の労働ニュースの中で、総工会主席尉氏の1999年12月企業視察の際の発言を取り上げ、労働関係に関する中国政府や総工会の見解を確認した。尉氏はこの発言の中で安定した協調型労働関係が、企業改革、発展と安定の重要な保証だと位置付け、協調型労働関係の確立を強調した。尉氏の解釈によれば、労働組合が労働者を代表して、法に基づき、企業側と対等に協議し、集団合同(労働協約)を結ぶことは、企業が労働関係を調整する重要な手段である。この制度の確立を通じて、企業内における法に依拠する労働関係調整のメカニズムを確立させる。企業は労働報酬、労働安全、福利厚生など従業員の切実な利益と関わるすべての問題について、労働者やその代表組織である労働組合の意見を充分に聴取し、労働組合と集団合同を結ぶべきである。尉氏は特に、経営状況が厳しい国有企業、或いは発展の勢いは良いが労働者の権利や利益の保護が弱い非国有企業に対して、協議制度や団体契約制度の実施を要求した。

2000年3月 中国の記事一覧

関連情報