(香港特別行政区)政府、ディズニーランド誘致を決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

21世紀香港観光業の目玉として交渉が続いていたディズニーランド建設につき、特別行政区政府とディズニー社が合意に達し、サー董建華長官が11月2日、ディズニーランドの香港誘致決定を発表した。

合意内容とそれによる経済効果等の予測は概略以下のとおりである。

  • 所在地はランタオ島、完成・開園2005年、敷地面積は開園時126ヘクタール(その後180ヘクタールに拡張)。
  • 建設関連費277億ドル(1ドル=13.49円)、このうちテーマパーク建設費141億ドル、埋め立て・インフラ整備・交通網関連費136億ドル。
  • 建設関連費中、政府負担229億5000万ドル、ディズニー社負担24億5000万ドル、金融機関融資等23億ドル。
  • テーマパーク建設・経営のために合弁会社香港インターナショナルテーマパーク社を設立、同社の株式所有は特別行政区政府57%、ディズニー社43%、開園後軌道に乗った時点で政府所有株式を民間に売却。
  • 観光客収容施設として1400室のホテルを建設、開園後軌道に乗れば2100室に拡張。
  • 入場料は、大人250ドルから300ドル、小人はさらに決定する。
  • 年間入園者数は、開園時500万人、20年後1000万人。
  • 観光客の支出は、最初の1年が83億ドル、20年後以降168億ドル。
  • 向こう40年間の純益は、投資利益の25%に相当する1480億ドル。
  • 雇用創出効果は、開園時まで1万8400人、20年後までは3万5800人、主に地元の労働力を雇用し、テーマパークの従業員は殆ど地元の労働力を雇用。

この香港ディズニーランドは、米国外では、東京ディズニーランド、パリのユーロ・ディズニーランドに次ぐ3番目のもので、後2者の入場料、年間入園者数を香港と比較すると次のようになる。

東京ディズニーランド:入場料、大人390ドル、小人267ドルから344ドル、年間入場者数1700万人;ユーロ・ディズニーランド:入場料、大人274ドル、小人212ドル、年間入園者数1260万人(ちなみに老舗の米国アナハイム・ディズニーランドでは、大人308ドル、小人245ドル。これは米国内の他のディズニーワールド等でも同じ)。

このような香港観光の将来を左右する巨大プロジェクトに対して、各方面から以下のような様々な反応が出ている。

観光業界、航空業界、小売業会、ホテル業界等は歓迎の意を表明している。香港観光業協会は、1999年度は1040万人の観光客の来訪を予測して(前年比9%増)、香港返還後の観光業の低迷から復活の兆しを見ているが、ディズニーテーマパークは中国本土と東南アジアからの観光客の増加にさらに資すると歓迎しており、キャセイ・パシフィックも航空業界の活性化につながると歓迎の意を表明している。

政党も、親北京派や経済界に近い政党等、概ね政府決定を香港経済の活性化に資すると支持しているが、リベラル派の民主党は、政府がディズニー社に対して、合弁会社の株式保有率や建設費用負担等で、譲歩し過ぎたのではないかと疑問を呈している。また雇用についても、現地の労働力が雇用される確実性につき、問題視する向きもある。

また環境保護団体からは、特に建設に伴う埋め立てにより、香港の自然環境が破壊される可能性があり、近海に棲息する白イルカなどの生態系に深刻な影響が出るとの懸念が表明されている。

これに対して董建華長官、アンソン・チャン政務官をはじめとする政府当局者は、アジア経済危機の後の香港市民に対する心理的効果としても、アジアで2番目のディズニーランドの建設は大きいとしており、また経済効果が過大評価されているとの一部学会やエコノミストの指摘に対しても、政府予測は控え目な数値であり、特に136億ドルの政府支出はインフラ整備と交通網整備など、テーマパークだけに資するものではなく、香港にとって永続的価値をもつとしている。また、ヴァーチャル・リアリティー効果を駆使するハイテク設備をテーマパークの目玉にすることにつき、これは政府の香港産業ハイテク化構想とも一致するとしている。さらに雇用についても、地元の労働力を優先させる旨再度表明しており、環境に対する影響についても、ディズニー社がコメントを出し、世界各地のディズニーランドで経験を積んでおり、その経験を十分に生かして香港でも開発に取り組むとしている。

董建華長官は、近い将来のユニバーサルスタジオの香港導入等についても、米国からの問い合わせに言及しており、今回のディズニーランドに限らない香港観光業の一層の推進を示唆している。ただ、21世紀の香港観光業の発展にとっての鍵は、中国本土からの観光客の一層の増大であるとされており、この関連で現在の中国本土からの旅行者の人数制限の手続的緩和が問題になっている。この点につき、銭其シン中国副首相が11月22日、香港ディズニーランド開園に向けて中国本土からの旅行者の人数制限の手続きを緩和する旨表明しており、このような中国政府の姿勢からも、香港観光業は21世紀に向けて大きな一歩を踏み出したと言えそうだ。

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