(香港特別行政区)繊維業界の外国人労働者導入計画に労働側強く反発

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年11月

香港の繊維業界での外国人労働者(大陸を含む)導入問題は、1998年12月にも1万人導入論が失業の増大を招くとの労働側の強い反発を招いたが、「繊維・衣類業再活性化委員会」が8月5日に外国人導入案を董建華長官に提出して以来、労働側の強い反発とともにこの問題がまたクローズアップされている。

同委員会は繊維業経営者グループからなり、1995年から1997年にかけて繊維業界の総労働者数が9万3724人から5万8341人に37.8%減少し、また21歳から30歳までの労働者が同業界で4%に過ぎないことを今回の提言の背景としてあげている。そしてこの導入案の実現で、7~7.5%の成長と3万2000人の雇用創出を見込め、2005年に世界貿易機関(WTO)によって予定されている繊維製品の輸出枠撤廃までに380億ドル(1ドル=13.56円)の増収を見込めるとしている。導入される外国人労働者の人数枠は提示されなかったが、提言の内容は概ね以下のとおりである。

労働局と繊維産業会議によって設立される中央当局に、労使双方が登録する新たな制度を設ける。使用者側は求人数を、労働者側はこの職種に対する経験の程度について登録し、労働者には技能テストを行い、合格者は雇用され、不合格者は更に2カ月間の訓練を受ける。この登録過程を経て求人枠を満たせなかった使用者は、外国人労働者の採用について当局に申請できる。その際、地元労働者と外国人労働者の割合は、労働者50人未満の工場では1対1とし、50人以上の工場では2対1とする。地元労働者と外国人労働者は仕上げる衣服の数に応じて同じ賃金を支払われる。そして、1年後若しくは外国人労働者が8500人に達したときに制度の見直しを行う。

この提言に対して香港商工会議所は賛成し、イアン・パーキン主席エコノミストは、特定業界に外国から熟練労働者を導入することは香港の経済成長と雇用創出に必要で、同会議所は従来からこの問題に柔軟な態度で臨むように提言してきたと述べている。また、13の使用者団体からなる「労働状況に関する共同企業者グループ」は、8月10日に至り提言に対する支持を表明している。

他方、労働側と諸政党はこの提言は地元労働者を犠牲にして業界の利益をはかるものだと強く反発している。民主党は反対の署名キャンペーンを計画し、工連会(FTU)は、政府の7月の統計で繊維業界の失業者数9100人に対して求人数848人だったことを挙げ、同業界における労働の需給について新たに調査を行うとしている。衣類製造貿易労働者連盟は、既に政府統計でも8.8%に達している同業界の失業率が更に上昇し、5人に1人が職を失うことになる可能性があり、地元の熟練工にも致命的な打撃を与えることになると批判している。さらに同連盟は、賃金水準が使用者の決定に任されているので、提言の実現によって地元労働者の低賃金化につながる危険も指摘し、政府が補充的にのみ外国人労働者を導入する1996年制定の「補充労働計画」制度を維持すべきだとしている。

このような動きに対し、ケネス・ファン「繊維・衣類業活性化委員会」委員長はこの提言は7カ月の周到な準備の後に行われたもので、外国人労働者の導入という側面だけに焦点を当てないで、香港の繊維業界を活性化させる提言の具体的な内容にもっと注目して欲しいと述べている。

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