(香港特別行政区)政府諮問機関、香港ハイテク化を提言

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

香港では、返還とアジア金融危機を踏まえて、観光開発促進と地域のハイテク化等を中心に21世紀に向けた産業構想が練られているが、董建華長官の諮問を受けた「革新と技術に関する委員会」は1999年7月5日、新たなベンチャービジネス・研究開発の支援、政府機関の刷新を含め、将来香港を世界的なハイテク先端基地に革新していくための提言を行った。

同委員会は1998年3月に抜擢されたカリフォルニア大学のティエン・チャン・リン教授を委員長とし、77頁の報告書のなかで主に以下のような提言を行っている。

まず機構面では、財務長官を座長とする政策グループを形成し、専門科学者をスタッフとして事務局におき、このグループが政府部内の、ハイテク政策の調整に当たるものとする。政府部内の政策統合の強化を図るものである。

次に人材確保の面では、科学技術教育を振興し、中でも科学とビジネスの連携を図る大学カリキュラムを策定する。また、本土から科学・技術を修得した人材を人数枠を設けずに導入し、そのためにその家族にも香港移住権を承認し、香港の大学に在学する優秀な成績の学生には、卒業後も滞在を認める。さらにハイテク最先端の米国カリフォルニアのシリコン・バレーとの連絡を密接にし、科学技術者・起業家をスカウトし、大学とビジネスのパートナーシップの促進を図る。後者に関連して、コンピューター製造技術開発のために、シリコン・ハーバー計画を策定する。

資金面では、計画されている総額50億ドルの「革新と技術のための基金」から、中小起業家研究援助計画のために5億ドルを当て、特に最初の5年間に50~70の研究プロジェクトを援助するこの計画は米国とイスラエルのプログラムをモデルとし、スタッフ30人以下の企業に最高200万ドルまでの研究援助を与えるものである)。また同基金から、大学と産業の共同研究促進のために、2億5000万ドルを助成金として当てる。

ティエン委員長は、香港は知識主導、高技術の経済を発展させる可能性を十分にもち、3~5年の間に顕著な業績をのこせ、そこから10年以内にかなりの収穫を得られるだろうとしている。またこれを受けて董長官は、提言はハイテク開発の包括的な道筋を示したもので、政府はその内容を前向きに検討していくと述べている。

ちなみに、本土からの科学・技術修得者の導入については以前から議論があり、今回の提言に関しても、香港在住者の雇用を奪うとの議論が一部労組などからなされたが、政府関係筋は、むしろ他の諸国とこの人材導入の競争をすることが将来の問題で、香港在住者の雇用の機会が奪われることはないとしている。

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