労働予備制度の全国展開

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

国務院は、1999年7月に全国レベルで労働予備制度を展開する通達を下した。労働予備制度とは新卒の労働者がただちに就業することを改めて、就業前に1~3年間の職業教育を受けさせ、就業を遅らせると同時に、職業の知識や技能などの人的資本を身に付けさせる制度であり、これまで個別の地域で試行してきたが、1999年から全国レベルで実施することとなった。労働予備制度の対象は、都市部の高卒や中卒で高等教育に進学できなかった者および農村部で高等教育に進学できず、農業以外の分野に就業する者、若しくは都市部に入って働く予定の者である。

中国は新規労働者に対して、学校卒業後1~3年間の職業訓練を受けさせる「先づ訓練をうけ、後に就職する」(先培訓、後就業)という方針をとっている。中国では1人っ子政策を実施しているにもかかわらず、基になる人口が大きいため、毎年の新規労働者の増加が大きな就業圧力を形成している。例えば、1998年に増加した新規労働者は1200万人となっている。このような就業圧力を緩和させるために、各種の政策が行われているが、その内の1つは労働予備制度である。中国の高等教育進学者はこの数年大幅な上昇率を示しているが、大学に進学できない者は依然として大きな数字となっている。1999年の中卒・高卒者のうち、約140万人が進学できず、労働予備制度の対象者となっている。労働社会保障部によると1999年内では、就業前の労働予備制度がこの140万人全員をカバーし、高等教育に進学しなかった中卒・高卒者の全員に教育訓練を受けさせる。沿海地域やその他経済先進都市では1999年から、その他の地域は2000年から、高等教育に進学できず A非農業生産、或いは都市部に出稼ぎに行く予定の農村部中卒・高卒者を、労働予備制度に編入することとなっている。農業生産に従事する予定の中卒・高卒者に対しては、各地域が各自に職業教育を行うこととなっている。

労働予備制度における職業訓練は基本的に入学試験を受ける必要がなく、必要経費は個人と将来の就職先が共に負担し、政府からも一定の援助を受ける。労働予備制度実施に先立って近年中国は「職業教育制度」の整備に取り組んできた。中央政府は労働予備制度の教育訓練は従来の職業教育制度における職業分類と職業技能の基準に従って行うと定めている。そのうち、技術系職種の訓練は1年以上の教育期間を必要とし、非技術系職種は2年以上の教育期間を必要としている。労働予備制度とワンセットになっているのは「就業準入制度」である。労働予備制度の下で教育訓練を受け、学習期間が満了しなければ、就業の許可が獲得できない。卒業後、一般職業に従事する者は相応の職業学校の卒業証書若しくは職業訓練合格証書を獲得し、国家と地方政府および業種内の特別規定のある職業につく者は相応の職業資格証書を獲得しなければならない。個人営業に従事する者も必要な職業訓練を受けなければならず、特に国家が就業準入制度の対象と定めた職業については、職業資格を取得しなければ個人開業が認められない。労働予備制度における教育訓練を受けていない者、或いは訓練を受けたものの相応の証書を獲得しなかった者は、今後、職業斡旋機関から職業斡旋を受けられないだけでなく、就職することもできなくなる。

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