基礎情報:ベトナム(2017年)
5. 社会保障
5-1 社会保険制度
ベトナムにおいて、広義の社会保険は大きくわけて(1)社会保険(狭義)、(2)健康保険、(3)失業保険、(4)労働災害・職業病保険の4つであり、労働者を雇用する場合は原則としていずれも強制加入となっている。
保険料の労使負担割合は以下のとおりである。(決定第959/QD-BHXH、政令第37/2016/ND-CP)
保険の種類 | 使用者負担分 | 労働者負担分 | 計 |
---|---|---|---|
(1)社会保険(狭義) | 17% | 8% | 25% |
(2)健康保険 | 3% | 1.5% | 4.5% |
(3)失業保険 | 1% | 1% | 2% |
(4)労災・職業病保険 | 1% | 1% | |
保険料計 | 32.5% | ||
※労働組合経費 | 2% | (組合員のみ1%) | 2% |
負担計 | 34.5% |
なお、(1)~(4)の保険はいずれも3カ月未満の期間を定める労働契約による場合を適用対象外としており、使用者が脱法的に3カ月未満の労働契約を多用する原因となっている。ただし、2018年1月1日以降はそのいずれについても1カ月以上の期間を定める労働契約にまで適用対象が拡大されることになっている。
(※本項は2-2「失業保険制度」、5-2「労災補償制度」も参照のこと)
(※社会保険料とは性質を異にするが、労働組合経費についても記載した。内容については6-1「労働者代表」の項目を参照。)
5-2 労災補償制度
労働災害・職業病保険制度については、社会保険法第2条及び、労働安全衛生法第43条1項により、強制保険の対象として無期契約や3カ月以上の有期契約のベトナム人労働者などが含まれる。なお、2018年1月1日から1カ月以上3カ月未満の有期契約のベトナム人労働者のほか、労働許可証を有する外国人労働者も対象となる。
保険料として、被用者の給与基金の1%のあたる金額がこれに充てられ、使用者が納付する義務を負う(社会保険法第86条1項)。労働者が複数の使用者と労働契約を締結している場合、各使用者が個別に当該義務を負う(労働安全衛生法第43条2項)。
労災手当を受給する条件として、(1)職場で勤務時間中に発生した災害、(2)雇用主の指示により職場以外、または労働時間外に発生した災害、または(3)住居と職場の往復で発生した災害による労働能力の5%以上の低下と規定されている(社会保険法第43条、労働安全衛生法第45条)。また、職業病手当を受給する条件として、(1)保健省(大臣)が発行するリストに記載された職業病に罹患したことで、(2)労働能力が5%以上低下した場合と定められている(社会保険法第44条、労働安全衛生法第46条)。条件を満たす労働者は、労働能力の喪失の度合いなどに従って、給付金その他の支援を受けることができる。
なお、関連法令として、労働安全衛生法の細則を定める政令第37/2016/ND-CP号がある。
5-3 育児休業制度
出産休暇として、出産前後に原則として合計6カ月取得可能である(2012年労働法典第157条1項)。ただし、出産前の休暇は2カ月を超えてはならない(同項)。女性労働者が使用者と合意した場合は、6カ月よりも早期の復帰が認められるが、最低4カ月の経過と復帰が健康上問題ないことの医師の診断書が必要となる(2012年労働法典第157条4項)。出産休暇を取得する女性労働者は、出産休暇期間中、社会保険制度に基づく給付を受けることができる(2012年労働法典第157条2項)。産休の後、女性労働者は元の業務に就くことが保証されている(2012年労働法典第158条)。
上記産前産後の休業の後、職場へ復帰した日から30日以内であって健康がまだ回復しない女性労働者は、5日から10日間の健康回復、リハビリのための休暇を取得することができる(社会保険法第41条1項)。職場復帰をした後、満12カ月未満の子供を養育している女性労働者には、1日あたり60分の育児休憩(有給)が認められている(2012年労働法典第155条5項)。
出産する妻がいる男性労働者について、妻の出産後30日以内に原則として5日(所定の場合に該当すれば最大14日)の休暇が認められる(社会保険法第34条2項)。
なお、育児期間等に関連して、使用者は、妊娠7カ月以上や12カ月未満の子どもを育てている女性労働者を深夜、時間外や遠隔地の仕事に従事させてはならないとされている(2012年労働法典第155条1項)。また、結婚、妊娠、産休取得、満12カ月未満の子供の育児を理由として女性労働者を解雇(または一方的に労働契約を終了)してはならない(同条3項)。さらに、妊娠期間や、社会保険法等に基づいて出産に関する休暇を取得している期間、12カ月未満の子どもの育児期間については、女性労働者は労働紀律処分(懲戒処分)を受けないことが規定されている(同条4項)。
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