基礎情報:ベトナム(2017年)
3. 能力開発・キャリア形成支援

3-1 職業教育

ベトナムの学校教育は、初等教育(小学校)5年間、前期中等教育(中学校)4年間、後期中等教育(高校)3年間の5・4・3制を採用している。

高等教育の専門短期大学は、専攻分野により2~3年制、大学の学士課程は専攻分野によって4~6年制、修士課程は1~2年制、そして、博士課程は大卒者が4年制、修士課程修了者が2~3年制となっている。5歳児の幼児教育から小学校、中学校までが「普及教育」、すなわち義務教育として規定されている。

学校教育と職業教育は、教育訓練省(MOET)が所掌し、職業教育を実施する施設として中級専門学校がある。中級専門学校には、高校卒業者を対象とした1~2年間の課程と中学卒業者を対象とした3~4年間の課程がある。前者は、修了時に中級専門学校修了証書(デプロマ)が取得でき、短大や大学への進学の道が開けている。後者は、修了時に中級専門学校修了証書(サーティフィケート)が取得できる。

3-2 職業訓練

職業訓練、職業能力評価及び認定等に係る業務は、労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の職業訓練総局(GDVT)が、所掌している(2006年職業訓練法)。

職業訓練は、義務教育修了後、あるいは高校卒業後の若年者に対して職業能力を付与し、スムーズな就職に結びつけることを大きな目的としている。

職業訓練には3つのレベルがある。上位から短大レベルの職業訓練(短大課程の職業訓練)、中級レベルの中級職業訓練及び初級レベルの初級職業訓練である。

職業短大は高校卒業者を対象とした2~3年間の課程で、修了時に職業短大修了証書(デプロマ)を取得できる。中級職業訓練には、高校卒業者を対象とした1~2年間の課程と、中学卒業者を対象とした3~4年間の課程とがある。前者は、修了時に中級職業訓練修了証書(デプロマ)が取得でき、職業短大への編入の道が開けている。後者は、修了時に中級職業訓練修了証書(サーティフィケート)が取得できる。

初級職業訓練は、若年者や無技能者を対象とした3カ月~1年間の課程で、修了時に初級職業訓練修了証書(サーティフィケート)が取得できる。入学要件については、特に設定されていないので誰でも受講することができる。

職訓練施設として、短大レベル(短大課程)の職業訓練、中級レベルの職業訓練及び初級レベルの職業訓練を実施することができる職業短大(Vocational College)、中級レベルと初級レベルの職業訓練を実施することができる中級職業学校(Vocational Secondary School)及び初級レベルの職業訓練を実施することができる職業センター(Vocational Center)がある。

職業訓練施設数の過去3年間の推移をみると、職業短大は微増、中級職業学校は微減であるのに対して、職業センターは大きく数を増やしている。

2014年における職業訓練施設の合計は1481校である。その内訳は、職業センターが1009校で全体の68.1%を占めている。以下、中級職業学校は301校で20.3%を占めており、職業短大は171校で全体の11.6%を占めている。このことから、国は初級職業訓練を拡充させて、若年失業者や無技能者を減らすことに力を入れていることがうかがえる。

参考資料:GDVT:Vocational Training Report-Viet Nam,2013-2014

3-3 能力評価(資格)制度

ベトナム政府は、2008年にドイツのドイツ国際協力協会(GIZ)の協力を得て、コンピテンスベースの国家職業技能基準(NOSS)の開発に着手し、2016年9月時点で191職種のNOSSを開発している(すでに公表済みのもの189職種、公表に向けて手続き中のもの2職種である)。NOSSに基づいて2011年に鉱山掘削技術職種が第1号の国家技能評価試験(国家技能検定)として実施された。2016年9月現在、国家技能検定は、溶接、工業電気、工業電子、メカトロニクス、自動車技術、CNC金属加工等22職種に拡大し、2015年の受験者数は2700人を超えるほどになっている。

NOSSは、職業訓練内容の構築や労働者の職務遂行能力を評価・認定する際に活用できる人材育成の重要なツールである。このNOSSに基づいて、職業訓練カリキュラムの編成・作成、技能評価の枠組みの構築及び技能評価試験の問題・課題の開発等を行うことができる。

NOSSの開発手順は、まず、GDVTが作成したNOSSの開発計画指針に基づいて、関係省庁が所掌する関連分野の職種のNOSSを開発する。そして、発行(公表)するためにMOLISAを経てGDVTへ提出される。GDVTは、NOSSの構成・内容を審査した後、当該NOSSを発行(公表)するという手続きを踏む。

2016年9月末までに開発された公表済みNOSS189職種の内訳は、以下の通りである。

  1. 商工省が開発したNOSS
    製造、発電・電力、加工、工業技術、商業、IT等の関連分野のもの79職種
  2. 交通運輸省が開発したNOSS
    運輸、道路・橋梁建設等の関連分野のもの36職種
  3. 農業省が開発したNOSS
    農業、水産、家畜、林業等の関連分野のもの32職種
  4. 建設省が開発したNOSS
    建築・建設関連分野のもの27職種
  5. 文化省が開発したNOSS
    旅行、ホテル、レストラン、文化・スポーツ等の関連分野のもの8職種
  6. 保健省が開発したNOSS
    薬剤技術及び医療機器分野のもの5職種
  7. 通信省が開発したNOSS
    「電波送受信装置所のメンテナンス」、「情報端末の設置」の2職種

国家技能検定は、NOSSに基づいてその枠組みが構成されている。したがって、国家技能検定のレベルは、NOSSの作業レベルに対応しており、最上位のレベル5から最下位のレベル1までの5段階に区分される。最上位のレベル5は、熟練した技能や専門知識に加えて、分析・判断能力、管理能力が求められ、自己責任での業務遂行能力が求められる。最下位のレベル1は、基本的な知識があって、日常的な単純作業が遂行できる能力である。

参考資料:GDVT:Vocational Training Report-Viet Nam,2013-2014

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