基礎情報:アメリカ(2000年)
7. 労働法制

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

7-1. 主な労働法制

アメリカの労働関係法は、連邦法と各州法によって規定されている。労働関係の主な法律を以下に概説する。

解雇

アメリカではコモン・ローによる解雇自由原則が確立されている。したがって、それに反対の契約がないかぎり、解雇に関する法的規制はない。

しかし、連邦法やいくつかの州法が人種、宗教、性別、出身国、年齢あるいは組合活動を理由とする解雇から労働者を保護している。

雇用差別の禁止

1964年公民権法の第7編(いわゆるタイトル・セブン)が最も包括的な差別禁止立法であり、人種、皮膚の色、性、宗教、出身国に基づく雇用差別を禁止している。

障害差別の禁止

1990年に制定された「障害を持つアメリカ人法」(ADA)は、障害を理由とする雇用差別を禁止するものである。企業は基本的にタイトル・セブンの場合と同様の責任を負う。

外国人の就労資格の確認

1986年の移民法改正により、使用者は就労資格のない外国人を雇用することを禁じられるとともに、採用にあたって就労資格を確認することが義務づけられている。

賃金・労働時間

賃金・労働時間に関しては、連邦の公正労働基準法(FLSA)が最も重要である。この法律は、最低賃金、時間外賃金(週40時間で1.5倍)のほか、男女同一賃金および年少者労働の規制についても定めている。

労使関係

労組結成、団体交渉、不当労働行為などに関しては全国労働関係法が定めている(詳細は労使関係の項参照)。

育児・介護・病気休暇

1993年に制定された家族・医療休暇法(FMLA)は、育児・養子縁組・家族介護または本人の傷病のために、年間12週の無給休暇を取得する権利を保障している。この法律は、50人以上の雇用者を有する使用者に適用され、当該使用者に12カ月以上雇用され、かつ直近の12カ月間に1250時間以上勤務した雇用者は、休暇を取得する権利を与えられる。

労災補償

労災補償は、業務上の傷病であれば、使用者に過失の有無にかかわらず一定の補償を義務づけるものであり、アメリカでは各州の法律によって制度が設けられている。いずれの州でも、労働災害に関する使用者の責任は、労災補償だけに限られるとのルールが採用されている。労災補償につき使用者に無過失責任を負わせる(実際上は事前の保険加入が義務づけられている)代償として、それを超える部分については、たとえ使用者に過失があっても損害賠償責任を免除するからである(ただし、故意による場合は免責されない)。

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