基礎情報:アメリカ(2000年)
2. 労働市場
※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
- 2-1. 労働市場の概況
2-1. 労働市場の概況
失業率の動向
アメリカの2001年1月現在の軍人を除く16歳以上の人口は2億1093万人であり、労働力人口は1億4196万人、労働力率は67.3%である。
アメリカでは1991年以降景気の拡大が続いており、2000年第1四半期には拡大局面は10年目に入った。実質GDP成長率は、1995年にその拡大テンポが鈍化し、2.7%と3%を下回ったものの、雇用の伸びを背景に個人消費を中心とする内需が堅調に拡大したことから、1996年以降には再び3%超に回復した。1997年以降、アジア金融危機を発端とする新興市場危機が発生し、アメリカ経済の減速が懸念されたが、引き続き個人消費を中心に景気は順調に拡大し、2000年に入ってもその拡大は続いた。しかし、第3四半期の実質GDP成長率は2.2%に落ちこんだ。また、経済成長を牽引してきたインターネット関連企業でも、2000年5月以来一時解雇者数は増加を続け、2000年1月から9月までにその数は1万6000人余にのぼった。
2001年1月現在の失業者数は約596万人で、前月から30万人増加、失業率は4.2%である。失業率はこれまで低下傾向にあり、1998年1月の4.7%(全国平均、季節調整値)から同年12月には4.4%(同)に低下、99年に入ってさらに低下し、99年10月以来、3.9%ないし4.1%で安定的に推移していた。
雇用・失業の特徴
若年者の高失業
年齢別の失業率をみると、若年者の失業率が極めて高い。2000年12月の失業率は、年齢計では4.0%であるが、16~19歳層の失業率は13.1%、20~24歳層は7.0%となっている。
サービス業・小売業における大幅な雇用増
1990年以降のアメリカの労働市場における雇用増の多くは、サービス業および小売業において創出されている。クリントン大統領就任以降の7年間(93年1月~99年12月)における雇用者数の動向をみると、サービス業では1106万人増加して全雇用増の約58%を占めており、小売業は318万人増加し、全雇用増に占める割合は約17%となっている。
失業問題の所在
就業者数は1998年1月の1億3000万人弱(季節調整値)から2001年1月現在の1億3600万人(同)へと増加している。最近の失業率の低下と就業者数の増加にはつぎのような特徴をみいだすことができる。
- 賃金水準が相対的に低いサービス・小売業における就業者数の増加が中心であること。
- 賃金水準が相対的に低い非熟練労働者、派遣労働者、パートタイム労働者が増加していること。
アメリカの失業問題の特徴は従来から以下の点にあると指摘されている。
- 若年者の高失業。
- 黒人・ヒスパニックの高失業。
- ホワイトカラーの失業の高まり。ホワイトカラーの失業増加は、リストラによる管理・専門職の解雇並びに事務職のコンピュータネットワークへの置換えによるといわれている。
- 失業の長期化(再就職の困難性)
1993~98年の5年間において、3年以上の長期勤続者の解雇420万人。この420万人は1999年2月時点で74%が再就職をはたし、13%が失業を継続している。再就職の困難性は、女性、高齢者においてより高い。420万人中270万人がフルタイム職から解雇され、再びフルタイムに就職したのは220万人(82%)だが、以前の職より賃金水準が低下した者の数が多い。このため、就業者の5.4%(730万人)は複数の職を持っている。
第3四半期 | 第4四半期 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|
労働力人口(千人) | 140,706 | 141,208 | 141,000 | 141,136 | 141,489 |
就業者(千人) | 135,049 | 135,593 | 135,464 | 135,478 | 135,836 |
農業 | 3,430 | 3,730 | 3,675 | 3,630 | 3,883 |
非農業 | 131,619 | 131,863 | 131,789 | 131,848 | 131,953 |
失業者 | 5,657 | 5,616 | 5,536 | 5,658 | 5,653 |
非労働力人口 | 69,235 | 69,358 | 69,378 | 69,441 | 69,254 |
失業率(%) | 4.0 | 4.0 | 3.9 | 4.0 | 4.0 |
成人男 | 3.3 | 3.4 | 3.3 | 3.4 | 3.4 |
成人女 | 3.6 | 3.4 | 3.4 | 3.4 | 3.4 |
10歳代 | 13.5 | 12.9 | 12.6 | 13.0 | 13.1 |
白人 | 3.5 | 3.5 | 3.4 | 3.5 | 3.5 |
黒人 | 7.6 | 7.5 | 7.4 | 7.5 | 7.6 |
ヒスパニック | 5.6 | 5.6 | 5.0 | 6.0 | 5.7 |
非農業雇用者数(千人) | 131,619 | 131,863 | 131,789 | 131,848 | 131,953 |
生産関連 | 25,680 | 25,624 | 25,665 | 25,642 | 25,564 |
建設業 | 6,688 | 6,736 | 6,745 | 6,738 | 6,725 |
製造業 | 18,453 | 18,347 | 18,378 | 18,363 | 18,301 |
サービス関連 | 105,940 | 106,240 | 106,124 | 106,206 | 106,389 |
小売業 | 23,189 | 23,220 | 23,193 | 23,230 | 23,238 |
サービス業 | 40,553 | 40,768 | 40,696 | 40,764 | 40,845 |
公共部門 | 20,536 | 20,448 | 20,464 | 20,412 | 20,468 |
注:16歳以上人口、労働力人口には軍人を含まない(civilian population)。
出所:The Employment Situation News Release, Jan. 5, 2001, Bureau of Labor Statistics, Department of Labor
コンティンジェント労働
上述のように今日のアメリカの労働市場では、高賃金、福利厚生充実、フルタイムの正規従業員とは対照的な、いわゆる非典型雇用が増加している。アメリカではこの非典型雇用をコンティンジェント労働と呼んでいる。コンティンジェント労働は、おおまかには企業が必要に応じてフレキシブルに使用する労働者を意味し、具体的にはパートタイム労働者、一時雇い、派遣労働者、下請業者などの形態がある。
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