基礎情報:アメリカ(2000年)
6. 労働行政

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

6-1. 雇用政策の方向性

技術革新の進展、企業のリストラ、経済のグローバル化などの影響で職場からの恒久的な離職者となる者が増え、失業問題が長期化する傾向がみられるが、このような雇用構造の変化の下では、労働者は雇用の保障を1つの企業に頼るのではなく、自分の技能を頼りに何回か転職することによって雇用をつなげていくことが求められるようになっており、雇用対策も生涯にわたって複数の企業での雇用をつなげていく労働者の再就職を支援するという方向に転換している。

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6-2. 主な雇用対策

再就職促進策

One-Stop Careerセンターの設置

企業や求職者、学生、労働者などが、雇用、教育訓練等に関する情報やサービスを1カ所で受けることができる体制の確立を全国的に展開している。

再就職のための援助プログラムの実施

個々の失業保険受給者の年齢、性別、職歴等を把握し、各々に最適な再就職の援助プログラムを実施する。

失業保険制度の改善

失業保険制度について、企業がレイオフ回避のため労働時間の短縮を行う場合、賃金カットされる労働者に手当(労働時間短縮手当)を支給する等、失業を事前に防止するための措置を講じるとともに、離職を余儀なくされる場合には、その再就職を促進するためのインセンティブを与える改善策として、再就職ボーナスの支給、自営業援助プログラム等が実施されている。

また、育児休業について、一定要件の下で休業手当が支給される枠組みが規定され、各州において導入が検討されている。

教育訓練政策

若年者の教育訓練

アメリカにおいては、若年者の失業率が高く、その雇用対策が重要となっているが、一方、企業側には新規高卒者が必要な職業能力を有していないとの不満があり、その能力向上が求められている。そのため、「School-to-Workプログラム:学校から職場への移行を円滑にするために職場で必要な知識と技能を付与することを目的とした、学校のカリキュラムとしての教育訓練」(詳細は後述「人的資源開発、教育訓練」参照)、「アプレンティスシップ・プログラム:企業との雇用関係の下、職場で必要な知識・技能を習得することを目的としたOJTと学科教育を組み合わせた教育訓練」、「Job Corps:高校中退者等、社会的に不利な立場にある若年者を対象とした合宿形式による教育訓練」等が実施されている。

職業技能基準の策定

連邦政府は、国レベルの職業技能水準の向上を目的とした全国統一的な「職業技能基準(Occupational Skill Standard)」の策定を進めている。現在、全国技能基準委員会が、「2000年の目標-アメリカ教育法」に基づいて技能基準・認証制度の策定にあたっている。

職業訓練制度改革法案の成立

連邦の職業訓練や教育などの能力開発プログラムを整理統合し、より活用しやすくするため、職業訓練制度を改革するための法案である「労働力投資法(Workforce Investment Act)」が1998年8月7日に成立した。主な内容は、(1)連邦の教育訓練プログラムを3つの交付金に統合する、(2)One-Stop Careerセンターを雇用・教育サービスのすべての窓口と位置づけ、職業訓練等の連邦の雇用・教育プログラムは同センターを通じて提供する、(3)個人訓練口座(Individual Training Accounts)を創設し、それを利用することによって、受講者が望む教育訓練プログラムを選択して受講できるようにする(バウチャー制度)、(4)産業界、教育界、地域住民、従業員グループの代表からなる協議会を創設し、その協議会において教育訓練プログラムの立案監督を行う、というものである。なお、この法は、2000年7月より施行された。

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6-3. 労働関連行政機関

連邦レベルでは労働省(Department of Labor)が労働関係行政を担っている。労働省には以下の内部部局、独立連邦法人、関係委員会がある。

内部部局

  • 長官官房
  • 行政評価委員会
  • ベネフィット評価委員会(RBR)
  • 国際労働関係局(ILAB)
  • 労働統計局(BLS)
  • 労働災害補償控訴委員会(ECAB)
  • 雇用基準局(ESA)
  • 雇用訓練局(ETA)
  • 鉱業安全衛生局(MSHA)
  • 職業安全衛生局(OSHA)
  • 行政法判事室(OALJ)
  • 総務管理担当長官補室(OASAM)
  • 政策担当長官補室(OASP)
  • 財政担当官室(OCFO)
  • 情報担当官室(OCIO)
  • 監督官室(OIG)
  • 小企業計画室(OSBP)
  • 法務官室(SOL)
  • 年金福祉局(PWBA)
  • 高齢者雇用訓練サービス(VETS)
  • 女性局(WB)

独立連邦法人

  • 年金保証公社(PBGC)

関係委員会

  • 消費者保護とヘルスケア産業の質に関する大統領諮問委員会
  • 障害者雇用に関する大統領諮問委員会

関連情報

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:アメリカ」