基礎情報:ベトナム(1999年)
※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
1.一般項目
- 国名
- ベトナム社会主義共和国(ベトナム、アジア)
- 英文国名
- Socialist Republic of Viet Nam
- 人口
- 7671万人(1997年推定)
- 面積
- 33万1688平方キロメートル
- 人口密度
- 227人/平方キロメートル(1996年)
- 首都名
- ハノイ
- 言語
- ベトナム語
- 宗教
- 大乗仏教、カトリック
- 政体
- 社会主義共和制
2.経済概況
- 実質経済成長率
- +8.8%(1997年) +9.3%(1996年) +9.5%(1995年)
- 通貨単位
- ドン(Dong: D) US$1=D12,985 1ドン=0.008円(1999年10月)
- GDP
- 254億米ドル(1997年) 235億米ドル(1996年) 203億米ドル(1995年)
- 1人当たりGDP
- 308米ドル(1997年) 311米ドル(1996年) 272米ドル(1995年)
- 消費者物価上昇率
- +2.9%(1997年) +4.5%(1996年) +12.7%(1995年)
- 主要産業
- 鉱業(原油、石炭など)、製造業、農業(米、キャッサバなど)
3.対日経済関係
- 対日主要輸入品目
- 集積回路、自動車、プラスチック類、繊維二次製品、石油製品、通信機器など
- 対日輸入額
- 1327百万ドル(1998年)、1284百万ドル(1997年)、1140百万ドル(1996年)
- 対日主要輸出品目
- 衣類、魚介類、石油、家具、石炭、加工食品、カバン類
- 対日輸出額
- 1741百万ドル(1998年) 2199百万ドル(1997年) 2020百万ドル(1996年)
- 日本の直接投資
- 381.4億円(1997年) 359.1億円(1996年) 102.4億円(1995年)
- 日本の投資件数
- 45件(1997年) 65件(1996年) 54件(1995年)
- 在留邦人数
- 2334人(1997年10月)
出所:Statistical Year Book in 1997、Vietnam Economic Time, January 2, 1999、
[日本]大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留法人数調査統計)
4.労働市場
ベトナムの人口は、1997年末で約7671万人であり、その79.2%が農村に住んでいる。農村地帯には手工業はあるが、労働市場は十分に開発されていない。人口に占める女性の割合は50.2%である。労働・傷病兵・社会問題省(MLISA)が1998年行った労働・雇用調査によれば、15歳以上人口は総人口の67.97%を占めていた。このうち55.74%が農村に住んでいる。15歳以上でフルタイムの仕事(勤務日が年183日以上)についている者の割合は71.43%である。
失業率は都市部で6.85%であり、女性の失業率は6.55%である。大都市であるハノイおよびハイフォンでは、失業率は極めて高く、それぞれ9.09%、8.43%である(女性の失業率はハノイで9.30%、ハイフォンで7.68%)。1998年の失業率は、1997年に比べて0.84%増加した。失業率はベトナムのすべての都市で増加している。
農村部では、15歳以上人口が全員就労した場合の計算上の総労働時間のうち実際に労働力として投下された労働時間の割合は70.88%であり、1997年に比べて2.02%減少。15歳以上の女性労働力の投下労働時間は70.93%である。
一般に、ベトナムの各農村間の投下労働時間にほとんど差違はないが、農村部における労働力の未投下労働時間は都市と比較して相対的に長い。これは政府が対策を急いでいる1つの重点事項であり、政府は農村部の開発のため、さまざまなプロジェクトによる新しい非農業雇用の創出に取り組んでいる。同プロジェクトの中心はインフラストラクチャーの改善、農村部の人々が自前の小規模事業を始めるための融資などである。こうした政策はベトナム女性同盟、ベトナム農民協会などの社会団体に強く支持されている。
専門化について
1997年に技能を持たない労働者が労働力人口の87.81%を占めていた。技術的経験を持つ労働者は労働力人口のわずか12.19%に過ぎない。このうち、5.85%が技能労働者(テクニシャン)である。技術専門学校(technical college)を卒業した者は3.8%に過ぎず、大学卒業者数は2.54%に過ぎない。
都市部では、労働力のうち熟練労働者の割合は29.37%であり、うち12.14%が技能労働者で、技術専門学校卒業者は8.34%、大学卒業者が8.89%である。この数値が明確に示すことは、十分な訓練を受けた労働力は、ベトナムでは非常に少ないことである。したがって、技能労働者不足は、ベトナムの工業化にとっての大きな課題となっている。ベトナムは1999年に経済成長率5~6%を期待しており、2000年においても工業およびサービス業の割合を高め、農業の割合を低め、高い成長率の達成を計画している。この政策の一環として、1998年7月に労働者を訓練し、経済成長と要件を満たすことを目的に、総合職業訓練局(General Department of Vocational Training)が政府により設置されることになった。
雇用構造
農業および水産業に携わる労働者の数は、労働力人口の68.78%である。労働者の12.52%は建設業で、18.7%はサービス業で働いている。労働者の大半は農業、水産業で働いているが、これらの産業から生み出されるのはGDPの26.22%に過ぎず、建設業の31.23%、サービス業の42.55%と比べ相対的に低い。
労働市場関連情報
- 労働力人口
- ベトナムでは総人口の57.2%を占める。都市部の労働力人口は総人口の62.64%であり、農村部では総人口の55.74%である。
- 労働力率
- 都市部では93.15%、農村部では71.13%である。
- 失業率
- 農村部では6.85%であり、農村部では住民全員就労した場合の計算上の総労働時間のうち実際に労働力として投下されなかった労働時間が28.87%ある。
出所:Survey on Labor and Employment, Ministry of Labour,Invalid and Social Affairs
5.賃金
1.賃金制度の概要
110社の外資系企業について1998年に政府が行った調査では、労働者の所得はつぎのようになっている。外資系企業の労働者に支払われる賃金は、国営企業において支払われるものとほぼ同等であるが、外資系企業の労働者の労働密度は国営企業のそれよりもしばしば高い。しかし、機械の安全装置、職場の安全対策は、外資系企業の方が国営企業よりも良かった。中小企業の賃金は、国営企業、外資系企業と比較してはるかに低い。外資系企業では管理職、スタッフと労働者の間に相当な賃金の格差があった。
2.最低賃金
ベトナムの最低賃金は経済部門ごとに定められている。例えばベトナム企業と外資系企業では異なった最低賃金が適用され、また、ベトナム企業でも工業部門と公共部門の間でも異なる。
(1) 外資系企業、ベトナムで事業活動をする外国企業、国際組織
現行法に基づき、政府は、単純労働(未熟練労働者)に支払う最低賃金をつぎのように定めている(1999年1月現在)。最低賃金は、ハノイ
業種 | 管理職 | 事務員 | 労働者 |
---|---|---|---|
重工業 | 2344 | 367 | 1210 |
軽工業 | 1339 | 213 | 764 |
商業・貿易 | 3967 | 281 | 397 |
サービス業 | 3967 | 281 | 397 |
電子製造業 | 2438 | 580 | 924 |
建設業 | 2800 | 276 | 1249 |
その他 | 2983 | 354 | 1316 |
出所:Survey on 110 Foreign-invested Enteprises in 1988, Ministry of Labour,Invalid and Social Affairs
業種 | 賃金(手当込) | 基本賃金 |
---|---|---|
セメント製造 | 1110 | 798 |
炭鉱業 | 879 | 636 |
天然ゴム製造 | 847 | 652 |
水産加工業 | 2733 | 2733 |
石油卸売 | 945 | 881 |
電気供給業 | 711 | 630 |
鉄道 | 580 | 539 |
出所:Survey on Labor and Employment, Ministry of Labour, Invalid and Social Affairs
またはホーチミン市で働く労働者に対して45米ドル以上であり、ハイフォン、ビン、フエ、ダナン、ビエンホア、カントー、ハロン、ニャチャン、ブンタウ市で働く労働者については40米ドル以上である。他の省、都市の労働者、または農業、林業および水産業の未熟練労働集約型企業で働く労働者については35米ドル以上、インフラストラクチャーが未整備の貧困地域で労働集約型産業に従事する労働者については30米ドル以上である。
(2) 国内経済部門
政府は、一般に最低賃金を14万4000ドンと定めている。公共部門の賃金も、最低賃金に基づき政府によって設定される。最高賃金(大統領)は最低賃金の10倍である。この賃金は勤務時間および官職(上級官僚、高官など)に基づいて計算され、産業間であまり異ならない。賃金は3年ごとに引き上げられる。
国家は、企業について義務的給与も設定する。賃金率も、最低賃金に基づいている。国営企業の労働者に支払われる賃金は、さらにその企業の事業効率を基礎とするが、いずれの場合にも最低賃金を下回らず、各職務および労働者の熟練度について決められている初任給の2.5倍を超えることはない。
3.賃金関連情報
時間外労働についてつぎの割増賃金が、すべての企業に適用されている。
- 通常の勤務日について1.5倍
- 週末休日について2倍
- 深夜労働(午後10時から午前6時まで)について昼間労働の1.3倍
賃金の他に、つぎのような手当が企業から支払われる。
- 地域手当:最低賃金の0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、1.0倍の8レベルがある
- 危険手当:この手当は危険な作業をともなう労働に適用される。同手当は、最低賃金の0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍の4レベルで構成されている。
- 勤務手当:最低賃金の0.1倍、0.2倍、0.3倍の3レベルで構成されている。
基礎情報:ベトナム(1999年)
- 1.一般項目、2.経済概況、3.対日経済関係、4.労働市場、5.賃金
- 続き1(6.労働時間、7.労使関係、8.労働行政)
- 続き2(9.労働法制、10.その他の関連情報)
バックナンバー
- 基礎情報:ベトナム(最新年)
- 基礎情報:ベトナム(2020年)
- 基礎情報:ベトナム(2018年)
- 基礎情報:ベトナム(2017年)
- 基礎情報:ベトナム(2015年)
- 基礎情報:ベトナム(2014年)
- 基礎情報:ベトナム(2005年)
- 基礎情報:ベトナム(2004年)
- 基礎情報:ベトナム(2003年)
- 基礎情報:ベトナム(2002年)/全文(PDF:797KB)
- 基礎情報:ベトナム(2001年)/全文(PDF:310KB)
- 基礎情報:ベトナム(2000年)
- 基礎情報:ベトナム(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
関連情報
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > ベトナム > 1999年
- 海外労働情報 > 国別労働トピック > 国別にさがす > その他の国 > ベトナムの記事一覧
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書 > 国別にさがす > ベトナム
- 海外労働情報 > 海外リンク > 国別にさがす > ベトナム
お問合せ先
内容について
調査部 海外情報担当
※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。
例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:ベトナム」