基礎情報:ベトナム(1999年)・続き2

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 労働法制
  2. 労働災害
  3. その他の関連情報

1.労働市場の概況

労働関係について最も一般的な法律は、1994年に国会で成立し、1995年1月1日から正式に施行された労働法典である。労働法典は17章194条で構成されているが、第1章総則と第17章施行規則を除く15章はそれ以前に個別の法律や政府決定で定められていた規定を法典としてとりまとめたものであり、以前の規定と大きく異なるところはほとんどない。法典の第1の意義はそれまでバラバラに出されていた労働関係の法律、規則を体系化し、集大成したことにあるといえる。法典の第2の意義は、はじめて労働者のストライキ権が容認されたことである(第172~179条)。

労働組合に関する最も一般的な法律は、国会で1990年に成立した労働組合法である。さらに、ベトナム政府、労働・病弱者・社会問題省その他の省から、多くの法令や省庁通達が出ている。

2.ベトナム社会主義共和国労働法典の目次

  • 前 文
  • 第1章 総則(第1~11条)
  • 第2章 雇用(第12~19条)
  • 第3章 実習訓練(第20~25条)
  • 第4章 労働契約(第26~43条)
  • 第5章 労働協約(第44~54条)
  • 第6章 賃金(第55~67条)
  • 第7章 労働時間・休懇(第68~81条)
  • 第8章 労働規律・物的責任(第82~94条)
  • 第9章 労働安全衛生(第95~108条)
  • 第10章 女子労働に関する特別規定(第109~118条)
  • 第11章 未成年者およびその他の労働者に関する特別規定(第119~139条)
  • 第12章 社会保険(第140~152条)
  • 第13章 労働組合(第153~156条)
  • 第14章 労働争議の解決(第157~179条)
  • 第15章 労働の国家管理(第180~184条)丁
  • 第16章 労働法親違反に対する国家の労働制裁監査(第185~195条)
  • 第17章 施行規則(第196~198条)
第55条

労働者の賃金は、労働契約の当事者双方の合意により、労働生産性、労働の質、および効率性に応じて支払われる。労働者の賃金は国の定める最低賃金以下であってはならない。

第56条

最低賃金は、生活コストを基礎とし、正常な労働条件の下で最も単純な業務を行う労働者が、その単純労働を回復させ、かつ労働の拡大再生産のために蓄積することを保証するものでなければならない。この最低賃金は、他の労働形態の賃金算定の基礎として用いられる。政府は、ベトナム労働総同盟および使用者代表と協議した後、各期ごとの共通最低賃金、地域別最低賃金、部門最低賃金を決定し、公布する。生活費指数の上昇により労働者の実質賃金が低下したとき、政府は、実質賃金を保証するために最低賃金を再調整する。

第57条

政府は、ベトナム労働総同盟および使用者代表と協議した後、社会保険および医療保険制度の運用、時間外労働・深夜労働に対する特別賃金の算定、休業、年次休暇およびその他の休暇の基準として、賃金等級と賃金表を公表する。

第58条
  1. 使用者は、時間によって定められた賃金(時給、日給、週給、月給)、出来高給または請負払いの賃金の支払い方法のうち1つを選択することができるが、一定期間その選択した方法に従い、かつ労働者にこの支払い方法について通告しなければならない。
  2. 労働者は、労働後ただちに時給、日給または週給制め賃金を受領するか、もしくは当事者双方の合意に従い」括の支払いを受ける。一括払いは、遅くとも労働15日ごとに1回なされなければならない。
  3. 月給制の労働者は、毎月1回または半月に1回賃金の支払いを受ける。
  4. 出来高により、または一括制度によって賃金が支払われる労働者は、当事者双方の合意による賃金支払いを受ける。業務が何カ月にも及ぶときは、月ごとに達成する業務の量に応じて毎月賃金の前払いを受けるものとする。
第59条
  1. 賃金は直接労働者にその全額を一定の期日に職場で支払うものとする。何らかの事由で賃金の支払いが遅れる場合、1カ月を超えてはならない。この場合、使用者は賃金支払い時期に少なくとも国立銀行の発表する利率に相当する補償を労働者にしなくてはならない。
  2. 賃金は通貨で支払われる。小切手またはその他国の発行する郵便為替による賃金の一部支払は、労働者に損害あるいは不便を与えないということを条件として、当事者双方が合意するものとする。
第60条
  1. 労働者は、賃金の控除のすべての事由を知る権利を有する。労働者の賃金控除を行う以前に、使用者は、そのことに関し単位労働組合執行委員会と協議しなければならない。控除は月給の30%を超えてはならない。
  2. 使用者は、制裁の方法として労働者の賃金カットをしてはならない。
第61条
  1. 時間外労働の賃金については、以下のように定められる。
    1. 通常日の時間外労働賃金は、通常の労働日の時間給の少なくとも150%に相当すること。
    2. 週休日もしくは祭日の時間外労働賃金は、通常の労働日の時間給の少なくとも200%に相当すること。深夜時間外労働については、労働者は、本条第2項に定める付加給を受ける。労働者がその後に、時間外労働の時間に相当する代替休暇をとる場合、使用者は勤務時間の賃金と勤務時間外の賃金の差額のみを労働者に支払う。
  2. 本法典第70条に定める深夜労働を行った労働者は、昼間労働をした場合に受ける賃金の少なくとも30%相当の付加給を受ける。
第62条

労働中断(休業)中の賃金の支払いは、以下の通りである。

  1. 休業が使用者の責任に帰する場合、労働者は賃金の全癒の支払いを受ける。
  2. 休業が労働者の責に帰する場合は、賃金は支払われない。労働を停止しなければならない同じ作業単位に属する他の労働者は、当事者双方の合意による賃金の支払いを受けるが、最低賃金以下であってはならない。
  3. 休業が使用者の責に帰さない停電、断水、その他不可抗力による場合、当事者双方の合意により賃金を支払わなければならないが、最低賃金を下回るものであってはならない。
第63条

手当、賞与、昇給制度およびその他の報奨制度は、労働契約、労働協約において定められるか、または事業体の定款によって定められる。

第64条

使用者は、政府の規則に従いかつ各業種の特徴に応じて、事業体に1年以上勤務した労働者に報いるために、事業体の年間収益控除をする責任を有する。

第65条
  1. 請負人もしくはそれに類する仲介者の性質を有する人を使用するところでは、常に事業主である使用者はこれらの請負人の氏名、住所の完全なリストを、その下で働く労働者のリストと一緒に所持していなければならない。使用者は、この請負人もしくはそれに額する仲介者に労働賃金、労働安全・衛生に閑する法律の規定を遵守させなければならない。
  2. 請負人またはそれに類する仲介者を有する人が、労働者に賃金の全額支払いを怠ったり、あるいはその他労働者の権利を保障しない場合、事業主である使用者は、労働者に賃金の支払いをし、かつその他の権利を保障する責任を有する。この場合において、事業主である使用者は、請負人またはそれに類する仲介者に労働者に補償をするよう要求するか、もしくは所轄の関係機関に法律に定める争議解決を要求することができる。
第66条

事業体の合併または、分割、所有権・経営権または事業の財産使用権の移転があった場合、継承する使用者は、労働者の賃金支払いならびにその他の権利を保障する責任を有する。事業体が破産した場合においては、労働者の賃金、退職手当、社会保険、ならびにすでに締結されている労働協約や労働契約に記載されている労働者のその他の権利は事業体が債務を清算する際の第1の優先項目である。

第67条
  1. 労働者は自分もしくはその家族が困難な状況に遭遇した場合、当事者双方の合意による条件で賃金の前払いを請求することができる。
  2. 使用者は、労働者が公民としての義務の履行のために労働を一時休止しなければならない場合は、賃金の前払いをしなくてはならない。
  3. 一時拘留・監禁されている労働者に対する賃金の前払いは、政府の定めによる。
  4. 労働法典「第7章 労働時間・休憩」
第68条
  1. 労働時間は1日8時間、1週48時間を超えないものとする。使用者は、1日または1週間ごとの労働時間のスケジュールを立てることができるが、労働者にその旨事前通告しなくてはならない。
  2. 2日の労働時間は労働・戦傷病者・社会福祉省および公衆衛生省の発表する過重、危険、有害作業リストに定められる作業に従事する労働者に対しては1時間から2時間短縮される。
第69条

使用者および労働者は、時間外労働について合意をすることができるが、その時間は1日について4時間、1年について200時間を超えないものとる。

第70条

深夜労働時間とは、政府の定める気候地帯に応じて、午後10時から翌日の午前6時まで、または午後9時から翌日の午前5時までである。

第2節 休憩

第71条
  1. 労働者は、継続して8時間労働する場合、少なくとも30分の休憩時間を取ることができ、それは労働時間の中に含められる。
  2. 夜間に勤務する労働者は少なくとも45分の休憩時間を取ることができ、それは労働時間に含められる。
  3. 夜間に勤務する労働者は、次の交替勤務の開始される前に少なくとも12時間の休憩時間を取ることができる。
第72条
  1. 労働者は、毎週少なくとも1回の休日(継続24時間)を取ることができる。
  2. 使用者は週休日を日曜日またはその他の特定の日に定めることができる。
  3. 労働周期のため、休日を1週間について取りきめできない特別な場合、使用者は、労働者に対して少なくとも月平均4日の休日を与えるようにしなければならない。
第73条

労働者は、以下の祭日には休養でき賃金の全額支払いを受ける。

  • 元旦(太陽暦):1日
  • 陰暦による新年:4日(大晦日と新年の最初の3日間)
  • 戦勝記念日:1日(4月30日)
  • 国際労働日:1日(5月1日)
  • 建国記念日:1日(9月2日)

上述の祭日が週の休日にあたる場合、労働者は、翌日1日振替休日をとることができる。

第74条
  1. 同一の事業体もしくは同一の使用者のところで12カ月勤務した労働者は、以下の規定に従い、年次有給休暇を付与され、賃金を100%保証される。
    1. 通常の条件の下で働く者に対しては12日。
    2. 過重・危険・有害業務もしくは過酷な生活条件の場所で働く者および18歳未満の年少者に対しては14日。
    3. 著しく過重・危険・有害な業務もしくは著しく過重・危険・有害な生活条件の場所で働く者に対しては16日。
  2. 年休に含まれない旅行時間は、政府の定めるところによる。
第75条

年休の日数は、1事業体もしくは1使用者のところで勤務する年数ごとに、5年に1日の割合で増すものとする。

第76条
  1. 使用者は、単位労働組合執行委員会と協議したのち年休の暦を定める権利を有するが、それを事業体の全員に事前通告しなくてはならない。
  2. 労働者は、使用者との合意の上で年休を何回かに分割することができる。遠隔の辺境に勤務する者は、希望により2年分の年休を一度にまとめてとることができる。3年分の年休をまとめてとりたい場合は、使用者の同意を得なくてはならない。
  3. 離職またはその他の理由により年休を取得していないかもしくは年休の付与日数のすべてを消化していない労働者は、未使用有給休暇日数に対して賃金が支払われる。
第77条
  1. 年休取得中の労働者は、少なくとも休暇日数の賃金に相当する額の前払いを受けることができる。旅費および旅行中の労働者の賃金は、労使当事者の合意による。
  2. 勤務年数が12カ月未満の労働者は、労働の期間に比例する日数の休暇を取ることができ、この休暇は現金で支払いを受けることもできる。

第3節 私用に関する休暇・無給休暇

第78条

労働者は、次に掲げる状況の下では、私用に関して有給休暇を取ることができる。

  1. 結婚:3日
  2. 子女の結婚:1日
  3. 両親(夫または妻の両親を含む)の死亡、妻または夫の死亡、子女の死亡:3日
第79条

労働者は、使用者と合意の上で無給休暇を取ることができる。

第4節 特殊業務従事者の労働時間・休憩

第80条

海上、坑内労働、その他特殊業務に従事する労働者の労働時間および休暇は政府の定めるところによる。

第81条

1日未満もしくは1週間未満の契約または請負契約で働く労働者の労働時間および休憩は労使双方の合意による。

前文

社会主義革命における労働組合の役割を発揮させ、労働者の民主的権利および利益を保証するため、ベトナム社会主義共和国憲法第10条、第32条、第83条、第86条および第106条に準じて本法は、労働組合の機能、権限および義務に関して規定する。

第1章 総則

第1条
  1. 労働組合とは、ベトナム共産党の指導の下に、自主的に組織されたベトナムの労働階級および労働者(合わせて労働者と呼ぶ)の広範な政治・社会団体をいう。それは、ベトナム社会主義共和国の政治体系の構成メンバーであって、労働者の社会主義学校である。
  2. 各経済セクターに所属する生産・経営組織、外資系企業、その他の事業単位、国家機関および社会団体(以下、「単位」、「機関」、「団体」と略)に雇用されるすべてのベトナム人労働者は、ベトナム国の労働組合条例の枠内において、労働組合を組織し、それに加入することができる。法の規定に従って労働者が創設する組合はいずれも、労働組合の連合体に加入することができる。労働組合を設立する場合、業務関係を樹立するため関係政府機関または組織団体に、通知するものとする。労働組合の組織および運営への自主的参加の原則の妨害、それに違反する行為および労働組合への加入、活動をもって労働者を差別することを禁止する。
  3. 単位レベル以上の各労働組合は法人資格を有する。
  4. ベトナム労働総連合およびベトナムの産業別労働組合団体は、同様の目的を有する国際労働組合団体に加入することができる。
第2条
  1. 労働組合は、労働者の権利および合法的正当な利益を代表し、かつ保護する。それは国と連携して生産の発展を図り、雇用を創出し、かつ労働者の物質的・精神的生活水準の改善を図る責任を有する。
  2. 各労働組合は、労働者を代表し、組織して機関、単位、組織の管理、社会経済の運営、国家の管理に参加する。労働組合は、その機能の範囲内において、法の規定に従って、機関、単位および組織の活動検査・監督する権能を行使する。
  3. 労働組合は、労働者を組織し、教育し、労働者に国の主人公として公民の義務を遂行させ、祖国社会主義ベトナムの建設と防衛に努めさせる。
第3条
  1. 労働組合は、その活動壷行うにあたって、憲法と法令を遵守しなければならない。国家機関、ならびに単位および組織の長は、独立した実体としての組合の権利およびその他本法で定める権利を尊重しなければならない。
  2. 国家機関、ならびさ妄単位、組織およ-び労働組合の長は、国家建設と労働者の利益擁護のために、これら国家機関、単位および組織の強化を目的とするすべての活動において協力関係を強化する。意見を異にする問題がある場合には、話し合い、交渉し、法の定めるところに従って解決するようにする。国家機関ならびに単位および組織の長は、組合活動に必要な条件を創出する責任を有する。
  3. 閣僚評議会は、ベトナム労働総連合の同意の上、国家機関、単位・組織・組合の長と各級労働組合との間の、関係および運営を具体的に規定する。

6.労働法典「第13章 労働組合」

第153条
  1. 労働組合が未結成の現在操業中の事業体に対しては、本法典施行後遅くとも6カ月以内に、そして新設の事業体では、操業開始後遅くとも6カ月以内に、省級労働組合連合は、労働者および労働者団体の権利と利益を代表し、l保護するために、事業体に暫定労働組合組織を結成しなければならない。
  2. 暫定労働組合の活動は、政府がベトナム労働総連合と協力して定める。
第154条
  1. 労働組合法および労働組合条例に従って労働組合が結成された場合、使用者は、これ牢認めなければならない。
  2. 使用者は、労働組合と密接に協力し、本法典および労働組合条例の規則に従って、労働組合の活動のための有利な条件を創出しなければならない。
  3. 使用者は、労働者が労働組合を結成すること、または労働組合に加入すること、もしくは労働組合の活動を行うことをもって不利益な取り扱いをしてはならず、また、労働組合の組織恵ょび活動に介入するために経済措置、その他の措置を用いてはならない。
第155条
  1. 使用者は、労働組合活動に対し、必要な活動手段を保証する責任を有する。
  2. 非専従労働組合職員は、労働組合の用務のために労働時間中その時間の-部を用いることができ、かつ使用者から賃金の全額支払いを受ける。この時間は、事業体の規模および使用者と単位労働組合執行委員会間の合意によるが、1カ月3労働日未満であってはならない。
  3. 専従の労働組合職員の賃金は、労働組合基金により支払われるが、事業体の規定や団体協約により、事業体の他の労働者同様の権利、集団福利の恩典を享受する。
  4. 使用者は、単位労働組合執行委員会の委員である労働者を解雇したり、その労働者との労働契約を一方的に解除する場合、当該労働組合執行委員会の同意を得なければならない。当該者が執行委員会の委員長である場合は、直接上部の労働組合の同意を得なければならない。
第156条

ベトナム労働総同盟および各級労働総同盟は、国の行政機関および使用者の代表と協力して労働関係に関する問題を討議し、かつこれを解決する。また求職周旋、職業訓練、相互扶助、法律相談を行い、労働者のための地域社会福祉施設を設立し、かつ労働組合法と本法典に定めるその他の権利を実現する。

第172条
  1. 労働者団体は、労働仲裁協議会の裁決に同意しない場合、争議解決を人民裁判所に要請するかまたはストを行うことができる。
  2. 使用者は、労働仲裁協議会の裁決に同意しない場合、この裁決の再考を人民裁判所に要請することができる。使用者による労働仲裁協議会裁決の再考要請は、労働者の団体ストライキ権を妨げるものではない。
第173条
  1. 労働調停協議会または労働仲裁協議会が労働争議の解決を図っている間、争議のいずれの当事者も相手方の当事者に一方的な行為をしてはならない。
  2. ストライキは、労働者の過半数が投票もしくは署名で賛成した後、単位労働組合執行委員会により決定される。単位労働組合執行委員会は、最大3人から成る代表を使用者に送り、要求書を提出すると同時に、省級の労働機関と省級労働組合連合に各々通告をする。要求書と通告は、争議の問題、要求内容、ストライキ賛成の投票もしくは署名結果およびストライキ開始時期を特定しなければならない。
  3. ストライキ中、暴力行為または事業体の機械、設備、その他の資産に損害を与える行為および公共の秩序と安全を妨げるすべての暴力行為は、厳重に禁止される。
第174条

政府の定めるリストに規定される、公衆の用命に応ずる、または国民経済もしくは国家の安全保障および防衛に不可欠な若干の事業体でのストライキは禁止される。国の管理機関は、労働者団体の正当な要求解決に適時助力を与えるために、当該事業体における労働者団体の代表および使用者の意見聴取を定期的に行わなければならない。団体労働争議が発生した場合、省級労働仲裁協議会が解決する。当事者のどちらか一方が、労働仲裁協議会の裁決に同意しない場合、争議解決を人民裁判所に要請することができる。

第175条

ストライキが、国民経済または公共安全を著しく危うくする恐れがあると判定された場合、首相は、ストライキの延期もしくは中止を命じることができる。

第176条
  1. 次に掲げるストは不法である。
    1. 団体労働争議から発生したものでない場合、または労使関係の範囲を超えている場合。
    2. 事業体の範囲を超えている場合。
    3. 本法典第173条の第1項および第2項ならびに第174条の規定に違反している場合。
  2. ストライキが合法的なものであるか否かの判定権限は、人民裁判所に属する。
第177条

人民裁判所はストライキ、団体労働争議に係る争議について決定権を有する。

第178条
  1. ストライキ参加者または指導者に対し、いやがらせや報復行為をすることは厳重に禁止される。
  2. ストライキ権の行使を妨げたり、または他人にストライキを強要したり、ストライキ中に不法行為を行ったり、首相もしくは人民裁判所の決定に応ずることを拒否する者は、その違反の重大度により、損害賠償を支払い、かつ行政の制裁もしくは刑事責任ⅰ追及を受けなければならない。
第179条

ストライキおよび労使関係の裁判事件の解決は、国会常務委員会の規定による。

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1.労働災害の概況

労働者の健康保護は、政府の優先事項の1つであり、したがって企業で適用される従業員のための良好な労働環境の維持について多くの強制的法令が作られている。有害な職業に従事しまたは勤労条件が厳格な安全要件を含む場合、従業員に、労働安全衛生に関する研修を受けさせることが必要である。

ILOの援助を受けて、ベトナムは、安全衛生に関する情報ネットワークを構築した。このネットワークには174人のメンバーが関わっており、安全衛生に関する情報が収集されている。近年、労働・傷病兵・社会問題省は、保健省(MOH)およびベトナム労働総同盟と協力して、労働安全衛生活動を担当するスタッフの能力を強化するための多くの活動を実施した。

1998年の末までに、全国の企業レベルで職業安全衛生活動を担当するスタッフは14万人であった。しかし、多くの国営企業は、安全衛生法令に違反している。多くの企業は、時代遅れの機械で操業している。安全装置は、特に非国営企業において十分でない。

政府は安全衛生の問題を非常に懸念しているけれども、この分野での検査はあまり多く行われていない。

地方自治体からの報告によると、企業の30%は非常に労働条件が悪く、従業員の49%は危険な職場で勤務している。労働災害、死亡の事例は増加している。職業病にかかった患者の数もまたしかりである。労働・傷病兵・社会問題省は危険な労働、厳格な安全要件に基づく機器のリストを発行した。

2.労働災害補償制度の概要

労働法典では、労働災害を被った労働者にその状況に応じて補償が受けられると定めている。災害が従業員の過失によって引き起こされたのではない場合に、労働能力の81%以上を失った従業員および死亡者の親族に対して30カ月分以上の賃金を使用者は支払わねばならない。従業員の過失によって災害が発生した場合は、使用者は少なくとも12カ月分以上の賃金に相当する手当を当該従業員に支払わねばならない。

表:死亡を伴う労働災害件数
死亡を伴う件数 死亡者数
1995年 230件 264人
1996年 249 285
1997年 320 402
1998年1~6月 145 163

出所:Labor and Social Affairs Magazine, Volum 11,1998

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1.社会保険

現在、10人以上の従業員を雇用している企業は、以下の社会保険への加入を義務づけられている。

  • 傷病保険制度
  • 労働災害・職業病保険
  • 妊娠保険
  • 退職保険
  • 遺族保険

上記の社会保険の財源は下記のとおりである。

  • 労働者の月額賃金の15%相当額を毎月、使用者が拠出
  • 労働者は月額賃金の5%を毎月拠出
  • 政府の補助金

統計によれば、社会保険制度によってカバーされている労働者はわずか350万人である。この数値は、全国の労働者総数の12%であり、社会保険制度への加入を義務づけられる企業の従業員総数の60%に過ぎない。

また、労働・傷病兵・社会問題省は、労働者の失業給付制度を立案するよう政府の指示を受けている。さらに、農民の強制社会保険はまだ整備されておらず、一般に非国営企業はその従業員について社会保険基金に保険料を支払っていない。政府の計画では、これら非国営企業を対象とした任意保険制度を設立するとしている。

2.人的資源開発、教育訓練

人材開発制度にはつぎが含まれる。

  • 大学、技術専門学校(全国に65校)
  • 中等学校制度
  • 職業訓練学校、職業訓練センター

上記の大学、技術専門学校には公立と私立がある。

1998年に労働市場に熟練労働者が不足しており早急に技能労働者を養成する必要があるとの認識に基づき、政府は、労働・傷病兵・社会問題省の管轄下に総合職業訓練局を設置することを承認した。

2000年までに労働者の20%は訓練を受けることになると計画している。これはベトナムが当面する大きな課題の1つである。

3.一般学校教育制度

ベトナムの教育制度は以下のとおりである。

公立学校:
施設、教材などは政府が提供。
準公立学校:
政府は教育課程に責任を持ち、運営費は学生、生徒の授業料で賄う。
私立学校:
非政府組織または各種法人によって管理され、すべての運営費用は当該組織、法人が負担。

ベトナムの教育課程は3段階であり、小学校(1~5学年)、中学校(6~9学年)、高等学校(10~12学年)である。教育法によれば、小学校教育は義務教育であり、生徒は授業料を払う必要がない。

基礎情報:ベトナム(1999年)

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