基礎情報:ベトナム(1999年)・続き1

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 労働時間
  2. 労使関係
  3. 労働行政

1.労働時間の概要

1998年の110社の外資系企業に対する調査によると、多くの外資系企業が5日から5.5日の労働日を適用していることで、平均して5.8日の労働日となる。1年の時間外労働は、極めて長く(78.6時間)、とくに建設業では123時間となっている。

一方、国営企業の1日当たりの実労働時間(1998年)をみると、セメント製造が最も短くて7.42時間、ついで炭鉱業が7.70時間、電気供給業8.02時間、石油卸売8.03時間、天然ゴム製造8.13時間、鉄道9.60時間、水産品加工業14.16時間となっている。水産品加工業の労働時間が極めて長いのは、長時間沖合で労働するからである。

表:外資系企業の労働時間 (1998年)
  労働日(週) 労働時間(日) 時間外労働(年)
重工業 5.7 8.1 80.6
軽工業 6.0 7.7 85.5
商業・貿易 5.7 8.0 67.3
サービス業 5.9 7.9 71.3
電子製造業 5.5 7.7 43.0
建設業 5.9 7.9 123.0
その他 5.6 8.0 93.7
平均 5.8 7.9 78.6

出所:Survey on 110 Foreign-invested Enteprises in 1988, Ministry of Labour,Invalid and Social Affairs

2.労働時間に関する法律

通常の労働条件、労働環境における労働時間はつぎのとおりである。

  • 1日の労働時間は8時間
  • 1週の労働時間は48時間

有害作業の労働時間は、保健省および労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)が発行した職業リストにより1~2時間短縮された。下記の時間は有給労働時間に含まれる。

  • 交替勤務間の中断時間
  • 職種による中断時間
  • 必須中断時間
  • 1歳未満の子供を持つ女性労働者は、1日60分の休憩を与えられる。
  • 女性労働者は、生理期間中30分の休憩を与えられる。
  • 労働者に原因のない、停止労働時間。
  • 労働安全衛生に関する研修時間。
  • 使用者が許可した研修、会議に参加する時間。

時間外労働時間は、1日の法定労働時間の50%を超えることはできない。時間外労働の合計が、1年に200時間を超えることはできない。

3.有給休暇の概要

労働者は、8日の休日がある。毎年の休暇はつぎのとおりである。

  • 通常の労働環境で働く者について12日。
  • 危険な作業に従事する者、18歳未満の労働者に対しては14日。
  • 極めて危険な作業に従事する者は14日。
  • 年次休暇の日数は、勤続年数にしたがって追加される。
    • 勤続 5~10年、1日追加
    • 勤続10~15年、2日追加
    • 勤続15~20年、3日追加
    • 勤続20~25年、4日追加
    • 勤続25~30年、5日追加
    • 勤続30~35年、6日追加

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1.労使関係概況

労使関係において最も重要なのは労働協約と団体交渉である。労働協約を締結し団体交渉を行うことは、各企業にとって義務とされている。

労働協約について

政府の調査結果によれば、国営企業の82%、外国企業の95%、非国営企業の約40%が労働協約を締結している。労働協約でカバーされていない労働者の数が少ないことは明らかである。近年、労働協約の締結は、多くの企業で成功裏に実施されてきた。しかし、残念ながら多くの企業で労働協約は重要と考えられておらず、協約の内容は貧弱であり、協約内容の理解が難しい場合が多い。多くの使用者、特に外国人使用者は労働法典を十分理解していない。したがって、調印した労働協約を実施していないケースが多くみられる。

団体交渉

さまざまな地域からの報告によれば、1997年の中頃までに、国営企業の56%、外資系企業の36%、非国営企業の20%のみが、団体交渉協定に調印している。この数値はあまり高いものではない。団体交渉協定が締結された企業においては、従業員の権利は維持され、企業の生産力は高く、労働争議の数も減少した。対立が生じたときに、迅速に解決できるからである。多くの企業が団体交渉協定に調印していない原因は以下のとおりである。すなわち、新たに事業を開始したばかりの企業が多く、そこでは労働組合が設立されておらず、団体交渉の内容が両者で合意されずまたは十分理解されるほど明確になっていないことがある。場合によっては、労働法典で定められた必要な内容が団体交渉協定に含まれていないこともある。

労働争議について

1995年から1997年までの3年間で、ストライキの回数は別表のとおりであった。

別表をみると、ストライキは外資系企業で多く発生し、国営企業での発生率は外資系企業より低いことが分かる。しかし、全般的にみてスト件数は、近年減少傾向にある。84件のストの多くは韓国系企業で発生した。ただし、韓国系企業の数は、外資系企業を国別でみた場合、第4位に過ぎない。つぎにスト件数が多いのは第2位の投資国である台湾である。ストの過半数(85.5%)がホーチミン市で発生しているが、ホーチミン市の外資系企業数の割合はベトナム全体の32.1%に過ぎない。

表:ストライキ件数 (企業形態別)
合計 国営 外資系 非国営
1995 60 11 28 21
1996 52 6 32 14
1997 48 10 24 14

出所:Survey on Labor and Employment, Ministry of Labour,Invalid and Social Affairs

表:ストライキ件数 (外資系・国別)
合計 韓国 台湾 香港 その他
1995 28 12 6 2 8
1996 32 10 15 2 5
1997 24 10 7 2 5

出所:Survey on Labor and Employment, Ministry of Labour,Invalid and Social Affairs

2.労働組合

労働者を代表する最も有力な組織が、ベトナム労働総同盟(Vietnam General Confederation of Labor:VGCL)である。小規模の労働団体が南部にいくつかあり、そのいくつかはベトナム労働総同盟のメンバーである。ベトナム労働総同盟(VGCL)は、縦型の組織である。中央レベルから、省および市のレベルまで、全国に事務所がある。この組織は、ILO年次総会に労働者代表を参加させる権利を持っている。ベトナム労働総同盟は1994年の労働法典の成立に際して大きな役割を果たした。

3.使用者団体

つぎの組織が、ベトナムにおける使用者の代表である。

  • べトナム商工会議所
  • ベトナム協同組合協議会
  • ホーチミン市工芸家協会
  • 経営者クラブ
  • 外資系企業経営者クラブ

使用者を代表する組織はいくつかあるが、ILOが推薦しているのがベトナム商工会議所(VCCI)である。首相も、この組織に対しILO年次総会に参加する代表者を指名するよう委任した。この組織の運営規則は、1997年5月12日に首相に承認され、第3回全国大会で承認されたものである。近年、ベトナム商工会議所は、ベトナム労働総同盟および労働・傷病兵・社会問題省と良い協力関係にある。労使関係関連問題の解決に努め、3者の利益のバランスを図り、調和させることを目的とした多くのフォーラム、会議を開催している。

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1.労働政策の概況

1995年の労働法典施行は、労働市場に適した労働政策の実施において重要な出来事であった。労働法典は、政府、労働組合および使用者という異なる当事者の権利義務を明確に定めている。多くの労働政策が過去に発表され、その多くが今も実施されているが、労働政策の大半は、労働法典の正式施行後に発表されたものである。これまで30件の政令が公布され、それらは労働法典の各条項の具体的な実施の指針となっている。労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)、VGCLおよび保健省が発令した100近い命令、通達は、労働法典および政令の具体的実施方針を定めている。労働法典の対象となっている諸問題は、これらの命令、通達、規則にすべて網羅されている。しかし、ベトナム政府は大きな努力を払って諸法令、規則を制定しているが、それらの規制を実施しなければならない企業にとっては大きな負担であるとの意見もある。

一般に、労働組合は、労働政策の立案に大きく関与している。政策の立案過程で、使用者が意見を主張することも歓迎されている。

2.労働関連行政機関

労働法典によれば、全国のすべての労働問題は、中央政府による国家的管理を受ける。労働・傷病兵・社会問題省は、各省および各地方において労働問題に関する国家的管理を担当する。

各レベルの人民委員会は、その地方における労働問題について、地方労働事務所の支援を受けながら国家的管理に責任を負う。

ベトナム労働総同盟(VGCL)および各レベルの労働組合は、労働問題に対する国家管理を、法にしたがって監督、監視する。労働組合は、中央レベルから地方レベルまで、同じような構造を持つ。労働組合の構造は、労働・傷病兵・社会問題省の構造に似ている。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:ベトナム」

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