労働政策研究報告書 No.207
雇用類似の働き方に関する諸外国の労働政策の動向
独・仏・英・米調査から―

2021年2月26日

概要

研究の目的

本調査研究は、厚生労働省の要請に基づき、雇用類似の働き方に係る論点整理に資するため、諸外国(ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの4カ国)の雇用類似の働き方に関する労働政策の動向を探り、日本の労働政策を構想するために有益な示唆を得ることを目的としている。

研究の方法

文献調査、現地ヒアリング調査

主な事実発見

  1. 20世紀後半にはあいまいな雇用(本調査でいう雇用類似就業)が広がり、労働者性の判断は裁判所に委ねられた。ドイツ、フランス、イギリスでは、裁判所は「労働者」を統一的概念と位置づけ、その概念を拡大する動きもあったが、結局、それほど広げることはなかった。その結果、雇用類似就業者に対して必要な保護を与えることができなかった。そこで、これらの国では、雇用類似就業者の保護は立法的解決に委ねられることになる。これに対して、アメリカでも労働者概念は基礎概念であるが、統一的に把握されているわけではなく、裁判所は、当初はコントロールを中心とする判断基準をもっていたが、その後、公正労働基準法の適用対象について経済的実態テストを用いて労働者概念を拡大した。
  2. 雇用類似就業者の保護のあり方については、各国の状況をみると、① 労働者と自営業者の間に中間的なカテゴリー(就労者、労働者類似の者など)を設けて、雇用類似就業者を中間的カテゴリーに位置づけ、労働法・社会保障法の一部を適用する方式、② 雇用類似就業者について、法律ごとにその保護目的に従い独自に定義して、必要な保護を行う方式、③ 労働者概念を拡大し、雇用類似就業者を「労働者」として位置づけて保護する方式(「誤分類の修正」)に分類することができる。
  3. さらに、近年では、プラットフォーマーを介して委託・請負で働く就業者(クラウドワーカーなど)に対して保護を図る動きがみられ、フランスでは「労働者」ではないことを明確にしたうえで一定の保護を図る立法的対応がなされたが、イギリス、ドイツでは現時点では立法的対応がなされていない。アメリカでは、カリフォルニア州で裁判所は労働者概念を広く捉え、こうした就業者を「労働者」と判断する判決が出されている。

政策的インプリケーション

  1. 日本でも、雇用類似就業者の労働者性をめぐる紛争が増加する中で、裁判所は、労働組合法上の「労働者」について労働基準法のそれよりも広く解する立場をとっているが、個別的労働関係においては「労働者」を統一的にとらえ、使用従属性を判断基準としている。学説の一部は裁判所のこうした立場に批判を加えているが、イギリス、ドイツ、フランスにおいて裁判所は労働者概念について依然として従属性、コントロールを判断基準の中核とする伝統的な立場を維持していることに鑑みると、日本でも労働者概念が個別労働法の統一的概念であることから、労働者概念の見直しにはなお多くの時間を要すると思われる。
  2. 日本の労働法は労働者と自営業者という伝統的な二分法を維持しているが、各国の動向をみると、この基本構造を見直す時期に来ていると思われる。今後の保護のあり方を考える上で、上記で示した ① ~ ③ の三つの方式は重要な示唆を与えると思われる。三つのうちいずれのアプローチをとるか、またはそれ以外のアプローチをとるかは重要な課題となろう。個別労働関係において「労働者」を統一的に捉える日本では、当面は、① ② の方式を模索するのが適当と思われる。日本は、イギリス、ドイツのような中間的カテゴリーをもたないが、家内労働法、労災保険制度における特別加入制度など、自営業者を対象とした保護の制度がある。こうした現状を考えると、労働政策のあり方として、家内労働法、労災保険制度の特別加入制度などの既存の制度を活用する方向が考えられる。
  3. 日本でもプラットフォーマーを介して委託・請負で働く就業者の保護が議論されている。各国の動向をみると、こうした就業者の保護のために明確な方向性が示されているとまではいえないと思われる。

政策への貢献

厚生労働省「第5回雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(2019年2月13日)及び「第8回雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(2019年3月22日)において、本研究会委員が現地調査に基づき、4カ国の労働政策等の動向について報告した。

また、今後も厚生労働省等において雇用類似の働き方に関する施策を検討するうえで、活用される予定である。

本文

研究の区分

研究期間

平成30年度~令和2年度

研究担当者

内藤 忍
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

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