企業の社会的責任(CSR):オランダ
CSR報告書における従業員に関する調査

オランダでは最近、企業の社会的責任(CSR)に関する報告書を公表する企業の数が増加している。多くの企業がCSRに関する経済的および(従業員を含む)社会的観点を広く取り上げている一方で、もっぱら環境問題にのみ焦点を当てている企業もある。CSR報告書を作成する企業は、報告書が企業組織の広範な目標達成の進捗状況に関する情報を広報するのに役立つと考えている。Lexis Nexis Irs発行の雑誌「European Industrial Relations Review(2005年10月号)」に掲載されたオランダ企業のCSR報告書の作成状況に関する調査結果について紹介する。

マーストリヒト大学のハロルド・ハシック教授は、アムステルダムの証券取引所に上場している企業139社を対象にCSR報告書の内容に関する調査を実施した。139社のうち26社がウェブ・サイトでCSR報告書を公表していた。調査は、これら26社の報告書の従業員に関する情報を、1)労働力構成と労働移動、2)従業員の権利と労働条件、3)安全衛生、4)教育訓練、能力開発――の4分野に分類して分析。従業員に関する部分は、平均で6頁から成り、様々な項目を含んでいた(表1)。

調査対象企業139社の中で、従業員2万5001人以上の企業20社のうちの16社(80%)、従業員1万1人以上2万5000人以下の企業16社のうち6社(38%)が独立したCSR報告書を公表していた。他方、従業員500人以下の小規模企業46社のうちCSR報告書を公表していたのは1社(2%)のみであった。調査は、企業規模がCSR報告書の作成に影響していると分析する。

労働力構成と労働移動に関しては、ほとんどの報告書(24件、92%)が従業員総数を、多くの報告書がジェンダー(18件、69%)、地域(17件、65%)、雇用形態(フルタイム、パートタイム、臨時または正規の雇用)(11件、42%)などの労働力構成を記載していた。労働移動に関しては、転職率(7件、27%)、合計の雇用減少数(11件、43%)、事業再編に伴う解雇数(12件、46%)などを記載。12社(46%)が解雇した労働者に対する再就職支援策を盛り込んでいた。

従業員の権利と労働条件に関しては、7件(27%)が従業員報酬に関する方針を、6件(23%)が賃金総額を記載していた。多様性政策については、14件(54%)が取り上げ、そのうち13件(50%)が管理職の女性比率を記載していた。労働者参加に関しては、調査結果への従業員の関与(10件、39%)、労働組合に加入している労働者の割合(8件、31%)が最も多く、人権政策および児童労働政策については、9件(35%)が言及していた。

安全衛生に関しては、18件(69%)が取り上げ、病気休暇に関する情報(15件、58%)従業員1000人当たりまたは100万労働時間当たりの労働災害発生件数(14件、54%)などを記載。教育訓練、能力開発に関しては、従業員の職務技術研修(18件、69%)、管理職研修(11件、42%)、管理職候補者研修(8件、31%)や訓練受講者数(10件、39%)などを取り上げていた。

表1

出所

  1. 「European Industrial Relations Review(2005年10月号)」(Lexis Nexis Irs発行)

2006年2月 フォーカス: 企業の社会的責任(CSR)

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