個人年金、受給要件などを明確化
 ―9月1日より施行

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2025年8月

人的資源・社会保障部、財政部、国家税務総局、金融監督総局、中国証券監督管理委員会はこのほど、「個人年金に関する受給についての通知(注1)」(以下:「通知」)を共同で発表し、個人年金の受給要件や受給方法などに関する具体的な運用を明確にした。本通知は9月1日から施行される。

個人年金制度の開始と全国展開の経緯

現在、中国の年金(養老保険)制度は、「基本年金」、「企業年金」、そして「個人年金:個人による貯蓄型(商業)年金」の三本柱で構成されている。第三の柱である「個人年金」は、個人口座方式を採用し、掛金はすべて加入者本人が負担する。加入者は規定に適合する貯蓄預金、理財商品、商業養老保険、公募ファンドなどの金融商品を自主的に選択して購入し、完全積立方式で運用する。その際、国家の関連規定に基づき、税制上の優遇措置が受けられる。

個人年金は、2022年4月21日に国務院弁公庁が「個人年金発展の推進に関する意見(注2)」を公表し、加入者の年間拠出上限を1万2,000元(約25万円)に設定したことから始まった。同年11月4日には、人的資源・社会保障部を含む関係5部門が「個人年金実施弁法(注3)」を発表し、加入手続きや引き出し要件、受給方法などを明確にした。さらに11月25日には、人的資源・社会保障部が個人年金制度の正式な開始を宣言し、北京、上海、広州、西安、成都をはじめとする36の都市・地域で試行が開始された。

続く2024年12月12日には、人力資源社会保障部など5部門が「個人年金制度の全面実施に関する通知」を発表し、同月15日から制度を36の試行都市(地域)から全国へ拡大するとした。同時期の2024年12月13日には、財政部と国家税務局が「個人年金の所得税優遇措置を全国で実施することに関する公告(注4)」を発表した。これにより、同年1月1日に遡って全国で個人年金の優遇措置が適用されることとなった。加入者は年間1万2,000元までの拠出金を所得から控除でき、運用で得た利益には課税されない。受給時も総合所得に合算されず、受給額に対して3%の所得税のみが課される。

受給要件の拡充

今回の「通知」では、個人年金の受給要件が拡充された。従来は、加入者が①基本年金の受給年齢に達した場合、②労働能力を完全に喪失した場合、③海外(または香港・マカオ・台湾)に定住した場合、のいずれかを満たした時のみに受給が可能であった。今回は新たに、④申請日前12か月以内に、本人または配偶者・未成年の子どもが基本医療保険の対象となる医療費を支出し、医療保険の補填を差し引いた後の自己負担額(医保目録範囲内の自己負担分)が、居住地の省(自治区・直轄市)の前年度住民1人当たり可処分所得を超えた場合、⑤申請日前2年以内に、失業保険を通算12か月受給した場合、⑥都市部・農村部の最低生活保障金を受給している場合、が加わった。なお、個人年金の加入者が死亡した場合、個人年金資産は相続の対象となる。

個人年金制度の目的は、老後や生活負担が重くなった際に、積み立てていた資金を引き出して生活を支えることである。しかし、口座を開設して入金した後は解約が認められず、その結果、実際に資金が必要な場面でも利用できないという問題が生じていた。今回の「通知」では、この問題を解消し、過重な重病医療費負担、長期失業、生活困窮といった最も資金が必要な時に個人年金を引き出せるよう、保障機能を強化した。

オンライン・対面など手続きの選択肢が拡大

「通知」によると、要件を満たした加入者が個人年金の受給を希望する場合、①国家社会保険公共サービスのオンライン窓口、②個人年金口座を開設した銀行(窓口またはオンライン)、③現在加入している基本養老年金を扱う社会保険機関、のいずれかを通じて申請する。社会保険機関が申請内容を確認・承認すると、銀行が受給額から予め3%の所得税を差し引いた額を加入者本人の社会保障カードの銀行口座へ振り込む仕組みとなっている。

この仕組みを確実なものとするため、「通知」は各地の人力資源社会保障部門に対し、情報プラットフォームとの接続を急ぎ、医療保険や民政部門と連携してシステムを改善し、加入者に便利な受給サービスを提供するよう求めている。

これにより、個人年金加入者は今後、個人年金口座の開設銀行を通じて受給申請を行う必要がなくなり、自身の利便性に応じて、機関を選んでオンラインや窓口などで手続きを行うことが可能になった。

受給後の継続納付

「通知」は、個人年金の受給開始後における口座管理についても明確化した。要件を満たす加入者が希望すれば、受給開始後も引き続き保険料を納付することが可能である。例えば、加入者が基本年金の受給年齢に達して個人年金の受給を開始した場合、その個人年金口座は「受給中」の状態に固定され、以降「積立状態」に戻ることはない。他方で、労働能力の完全喪失や海外(香港・マカオ・台湾を含む)への移住を理由として受給を開始した場合には、加入者が再び個人年金口座に拠出することで、口座は「積立状態」に戻される。この場合、年金を再受給する際には、加入者は改めて受給要件を満たす必要がある。

参考文献

  • 中国政府網、新華社、新華網、JILPT

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