16年ぶりのストライキが終結
 ―ボーイング社、4年間に38%の賃上げで労使合意

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2024年11月

米航空機大手のボーイング社の労働組合(国際機械工・航空宇宙労働組合(IAM)が組織)は11月4日、組合員投票を行い、4年間で賃金を38%引き上げることなどを内容とする会社側提案の受け入れについて賛成多数で了承した。これにより9月13日から続いていたストライキが終結することになった。同社でのストライキは16年ぶりのことで、約3万3,000人の機械工が参加した。ストライキ突入後、会社側は妥結案を組合側に示したが、組合員投票で否決されるなどして、ストライキが長期化していた。

賃上げ交渉が難航

労働協約改定をめぐるボーイング社の労使交渉は、賃上げをめぐって難航した。会社側と労働組合の執行部は9月12日、4年間に25%の賃上げで暫定合意したものの、組合側当初要求の40%引き上げとの隔たりが大きく、一般組合員は執行部が譲歩したと反発。組合員投票で約95%が反対票を投じ、暫定合意は否決された。このため労組は9月13日、同社で16年ぶりとなるストライキに突入。ワシントン州シアトル郊外やカリフォルニア州、オレゴン州にある工場の組合員約3万3,000人が参加し、ボーイング777、767、737MAXの機体の製造などに影響が出た。

その後の労使交渉で会社側は9月23日、4年間で賃金を30%引き上げることなどを提案したが、組合執行部は物価高を十分に反映した額になっていないと拒んだ。ボーイング社のケリー・オルトバーグCEOは10月11日、今後数カ月間に世界で従業員全体の10%に相当する1万7,000人程度を削減する計画を発表。削減対象は一般従業員のほか、経営幹部、管理職らを含み、最新777型の導入は延期することとした。

三度目の組合員投票で承認

バイデン政権はストライキの長期化を懸念し、スー労働長官代行を同社に派遣する形で仲介に乗り出した。これを受け、ボーイング社は10月19日、4年間で35%の賃上げ(1年目12%、2年目8%、3年目8%、4年目7%それぞれ引き上げ)、年間最低4%のボーナス支給、協約承認時のボーナス7,000ドルの支給などを内容とする新たな妥結案を提示した。組合執行部はこれを受け入れ、同23日に承認のための組合員投票を再度実施。だが、組合員の約64%が反対して否決された。

労使交渉はさらに続き、会社側と労組の執行部は10月31日、賃上げ水準を38%(1年目13%、2年目9%、3年目9%、4年目7%)に、協約承認時のボーナスを1万2,000ドルにそれぞれ引き上げることなどを内容とする妥結案に合意した。組合側は11月4日に三回目の組合員投票を実施。組合員の約59%と過半数が賛成票を投じ、暫定合意案の受け入れを承認した。これにより7週間以上に及ぶストライキに終止符を打つことになった。

労使合意に対する評価

ストライキを実施したIAM支部(751地区及びW24地区)の会長は11月4日、組合員による暫定合意の承認を受けて声明を発表した。それによると、「家族を養い生活できる賃金と福利厚生は欠かせないものであり、選択の余地はない。今回のストライキは、その現実を浮き彫りにした。(暫定合意による新たな)協約は、ボーイング社の労働者とその家族の生活に、前向きで、世代を超えた影響を与えるだろう。私たちは、この成果が他の労働者を刺激し、組合の結成、加入を促進するよう望む」との見解を示している(注1)

ボーイング社では2024年1月に飛行中の機体に穴があく事故などが発生し、安全管理上の問題が相次ぐなど、事業経営に関する課題を多く抱える。オルトバーグCEOは同日、「この数カ月は、困難な時期だったが、私たちは全員同じチームの一員だ。(お互いに)耳を傾け、協力し合うことでのみ前進できる。ボーイングを象徴的な企業にした卓越性を取り戻すには、まだ多くの課題が残っている」とするコメントを発表し、組合員らに今後の企業経営への協力を求めた(注2)

また、バイデン大統領は「(バイデン政権の)過去4年間、私たちは団体交渉が機能することを示してきた。良い契約は、労働者、企業、消費者に利益をもたらし、中間層から底辺層まで米国経済を成長させる鍵である」と、今回の労使合意を歓迎するコメントを発表している(注3)

参考資料

  • 国際機械工・航空宇宙労働組合(IAM)、日本貿易振興機構、ブルームバーグ通信、ボーイング社、ホワイトハウス、各ウェブサイト

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