ユン・ソンニョル政権下の雇用労働政策を中間総括
 ―雇用労働部

カテゴリー:雇用・失業問題労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2024年11月

雇用労働部は11月12日、ユン・ソンニョル大統領の任期の折り返し点にあたる2年6カ月が経過したのを機に、同政権下の雇用労働政策の主な成果と、今後の政策推進計画を発表した。労使関係の安定や高い就業率の達成などの成果があったと評価し、今後の計画には労働弱者支援や労働災害対策の強化などを挙げている。

労使関係の安定や高い就業率の達成などで成果

雇用労働部によると、過去2年6カ月の間に、法律の制定に基づく現場の労使関係の安定、高い就業率の達成などで目に見える成果が表れており、子育て支援や賃金未払い、労働災害の分野などで課題解決に向けた政策的努力を続けたとしている。同部による評価の主な内容は以下のとおり。

1 法制度に基づく現場の労使関係の安定

◆労働現場の違法慣行の改善
建設現場で黙認されてきた労組組合員の採用の強要や月例費(注1)の要求、工事妨害などの違法慣行を改善した(注2)

採用における不公正是正のため、長期勤続者の子や労働組合推薦者の優先採用等を盛り込んだ特別採用条項を是正させた(1,057件を調査し63の団体協約違反を指摘)ほか、労働組合専従者への労働時間免除を規定する「労働時間免除(タイムオフ)制(注3)」関連法に違反した事業場に監督(202社を監督、107事業場是正)を行うなど、法令違反を継続的に改善した。

◆労働組合会計の公表制度を導入
労働組合の運営を可視化するため、組合員税額控除と連携した労働組合会計の公表制度を初めて導入。大多数の労働組合が参加し、2024年の公示率は90.9%に達した。

◆労働損失日数、労使紛争継続日数の大幅な減少
2023年は金属や医療保健など、主要な産別労組のストライキの影響により、労働争議件数自体は増加した。しかし、労使関係法に基づく労使間の対話により早期解決するケースが増え、労働損失日数は前政権時代の半分以下に減り、労使紛争継続日数も、2015年以降最も少ない9.4日を記録した。

2 賃金未払いへの迅速な対応と制裁強化

景気の影響を受け、建設業などを中心に賃金未払い(支払い滞納)の増加が続いている。このため、全国の未払い事業主への強制調査を行い、清算支払いを指導した。現場点検や監督による即時清算指導、支給金・融資支援の拡大などにより、2024年9月時点で、未払い賃金1兆5,224億ウォンのうち、77.9%にあたる1兆1,856億ウォンが清算された。また公共工事への参加制限や懲罰的損害賠償などに加え、名簿公表事業主への不処罰罪の適用除外、出国禁止などの経済制裁強化を内容とする勤労基準法の改正により、賃金未払いを防止する制度基盤を整えた。

3 労働弱者保護の基盤づくり

労働弱者保護を強化するため、以下の新規事業を実施した。

◆「労働者つながりセンター(イウムセンター)」を全国6カ所(ソウル、平澤、清州、大邱、釜山、光州)に設置し、賃金未払いや不当解雇、失業給付などに関する無料の法律相談や、雇用労働サービスとの連携、コミュニケーションの場の提供などを行った。

◆労働弱者の声を政策に反映するため、「労働弱者円卓会議」を全国各都市で10月までに7回開催した。

◆労働弱者支援政策を強化するため、6月に雇用労働部に「未組織労働者支援課」を新設した。

4 低出生を反転させるための子育て支援

2023年に過去最低の0.72を記録した出生率を向上させるため、関係省庁と連携し「低出生傾向反転のための政策」を実施。子育て支援3法(男女雇用平等法及び仕事・家庭両立支援法、雇用保険法、勤労基準法)を改正し、支援策を以下のとおり大幅に拡充した。

◆妊娠期労働時間短縮期間を4週間拡大(「妊娠12週以内、36週以降」を「同32週以降」へ)。

◆パパ出産休暇を10日から20日へ、育児休業を最大で1年6カ月へ拡充。

◆育児休業中の給与を月150万ウォンから最大250万ウォンへ引き上げ、両親ともに育児休業する場合は最大で年2,960万ウォンを支給。

◆育児休業者の代替人材支援金を引き上げ(80万ウォン→120万ウォン)、業務分担支援金の新設(20万ウォン)により企業負担を緩和。

5 雇用の安定供給と若年者などの脆弱層保護

雇用の安定に関しては著しく改善した。就業率(15~64歳)は2024年9月現在、69.9%で過去最高水準を記録し、失業率も過去最低の2.1%を達成した。青年層の失業率や就業率、女性のM字カーブも改善され、着実に政策の成果が表れている。

その上で、以下の残課題について改善に向けた施策を講じた。

◆慢性的な人手不足となっている地域・業種については、外国人労働力を迅速に活用するため、全体の受入割当数だけでなく、事業所別雇用限度人員を拡大した。優秀な外国人労働者が継続勤務できるよう、同じ事業所で長期勤続した外国人労働者が出国・再入国せず働き続けることができるようにする法改正案が国会で審議されている。

◆求職断念を含む若年層の「休息」の増加は、構造的な問題や短期的要因が複合的に作用しているため、大学や関連機関と連携して先行して対象者を発掘し、彼らの日常生活、心理的回復、就職支援、職場適応などを段階的に支援する一方、採用傾向に沿った相談、就業体験支援など、若年層の労働市場参加のための事業を拡充した(「大学雇用プラスセンター」の就職相談、就業体験支援、デジタルトレーニング、「休息青年」の支援など)。

6 重大災害の減少傾向の継続

2023年の1万人あたりの労災事故死亡率は0.3台、労災事故死亡者数は500人台と、減少傾向が続いている。今年から、重大な労働災害の処罰法の適用対象を拡大する(これまでの50人以上規模から、5人以上50人未満企業にも適用)など、企業の安全衛生能力の向上に注力している。

また、中小企業向けに技術・財政支援を強化し、特に50人未満企業も危険性評価を行えるよう点検を実施し、リスク要因を把握し改善を促した。その結果、50人未満事業場でも重大災害が減少するなど効果が表れた。

しかし、2024年6月24日に発生した華城リチウム電池工場火災事故以後、危険性評価の認定基準をより厳格化し、1万6,000あまりの危険性評価認定事業場を対象に事後点検を行い、より厳しく改善を確認する予定である。

7 社会的対話の正常化

2023年6月を最後に5カ月以上中断していた政労使の社会的対話を、政労使の努力により同年11月に再開した。今後も、持続可能な雇用や人口構成の変化への対応などについて、定期的にスピード感のある社会的対話を続けていくことで合意している。

今後の政策計画で労働弱者支援や労働災害対策を強化

雇用労働部は「今後の政策推進計画」として、以下のとおり、労働弱者支援や労働災害対策の強化などをあげている。

1 労使を問わない現場の法治対応の確立

労働時間免除(タイムオフ)制度の違法運用を根絶するための監督の継続、賃金未払い事業主に対する強制捜査の強化、対話と合意による現場の労使関係安定のための行政努力を継続する。特に、賃金未払いについては、その40%を退職金が占めるため、退職年金を段階的に義務化することで未払いを防止する法案の作成を計画している。退職年金の段階的義務化は、年金改革と連携して推進する予定である。

2 柔軟で活力のある労働市場の実現

柔軟で活力ある労働市場を実現するため、労働者の選択権を確保し、健康にも配慮した労働時間制度の改善を推進する。また、社会的関心の高い高齢者の継続雇用問題については、若年雇用との兼ね合いや賃金体系の改編などを含む、合理的な選択肢を提供するため、政労使および専門家による議論を行う。

3 労働弱者の保護及び支援に注力

国会で審議中の「労働弱者支援と保護のための法律(仮称)」の迅速な制定に向けた取組みを進めるとともに、当該事業予算を拡大・改編する計画である。

また、求職者の権利保護と採用手続きの公正・透明性を確保するため、「採用手続きの公正化に関する法律」について今年の国会で審議を予定している。

5人未満の事業所への勤労基準法の適用は現実的には困難であるが、段階的に適用するという原則のもと、労働現場の実態を詳細に調査・分析しながら、社会的対話を通じて代案の作成を支援していく。

4 積極的労働市場政策の強化

雇用安定センターを中心に、国民が希望する仕事に迅速に就職できるよう、積極的労働市場政策を強化していく。若年層や就職困難層などの対象者の選定、心理プログラムの実施、個別雇用サービスの提供などのより効果的な支援を行う。

5 重大な労働災害の減少のための危険性評価を中心とした産業安全政策の推進

重大な労働災害を無くすため、現場を最もよく知る労使が主体となり、自己規律予防の危険性評価を中心とした産業安全政策を継続しつつ、点検・監督など現場での事故防止に実効性ある取り締まりを継続的に実施する。

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