韓国の総人口は3年ぶりに増加、高齢化が進み高齢者の4割が働く

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  • 国別労働トピック:2024年11月

韓国の総人口は、3年ぶりに増加したものの、外国人と高齢者が牽引しており、人口の高齢化が進んでいる。65歳以上の高齢者の約4割が働き、収入や資産は増加し、新しい価値観を持つ高齢者層が出現している――最近の複数の調査結果からこうした実態が明らかになった。

2023年の総人口は外国人が牽引し5,177万人に増加

韓国統計庁によると、2023年の韓国の総人口(11月1日時点)は5,177万人で、前年より0.2%増加した。総人口は21年から2年連続で減少していたが、3年ぶりに増加に転じた。

総人口の増加は、外国人(韓国国内に3カ月以上滞在するか、3カ月以上滞在する目的で入国した外国人)が牽引した。外国人は193万5,000人で、前年比で10.4%増加した。内訳は、韓国系中国人が53万2,000人で最も多く、以下、ベトナム人(24万7,000人)、韓国系以外の中国人(22万1,000人)が続く。外国人の増加について、統計庁は、外国人雇用許可制の拡大や、コロナ禍の収束が影響したものと分析している。

一方、韓国人の人口は、2021年から3年連続で減少した。2022年に4年ぶりに5,000万人を割り込んだ(4,994万人)が、2023年はさらに減少し、4,984万人となった。

高齢者が増加し子どもは減少、世帯数は増える

年齢別にみると、子どもや15~64歳の生産年齢人口が減少する一方、65歳以上の高齢人口が増加し、高齢化が一段と加速した。生産年齢人口は3,655万人で前年比14万人の減少、0~14歳の人口も562万人で24万人減少した。一方、65歳以上の高齢人口は、961万人と46万人増加し、1,000万人の大台に迫った。

世帯数は2,273万世帯で、前年に比べ1.5%の増加となった。世帯人数別には、単身世帯が35.5%で最も多く、2人世帯(28.8%)、3人世帯(19.0%)、4人以上世帯(16.8%)と続く。

働く高齢者の割合は10年で1割増加

また、保健福祉部が10月17日に発表した「2023年高齢者実態調査」によると、韓国の65歳以上の高齢者のおよそ10人に4人が働いている。

調査は、2008年以降3年ごとに実施しているもので、2023年9~11月にかけ10,078人を対象に、韓国保健社会研究院(注1)及び(株)韓国ギャロップ調査研究所が実施した。

調査によると、仕事をしている高齢者の割合は39.0%で、時系列でみると、2017年が30.9%、2020年が36.9%と上昇が続いている(図1)。2014年の28.9%と比べると、1割ほど増加した形だ。

図1:仕事をしている高齢者の割合 (単位:%)
画像:図1

出所:保健福祉部「2023年高齢者実態調査」

職種別にみると、「単純労務」が33.0%、「農林漁業熟練労働」が20.3%、「サービス従事者」が14.4%、「販売従事者」が12.5%などとなっている。

高齢者の年収や金融資産は大きく増加し、相続の価値観も変化

高齢者世帯の年間所得は平均3,469万ウォンで、2017年の2,590万ウォン、2020年の3,027万ウォンから、大幅に増加している。「個人所得」は2,164万ウォンで、「金融資産」は4,912万ウォン、「不動産資産」は3億1,817万ウォンだった。いずれも、調査を開始した2008年以降、増加傾向にある。

世帯収入の構成比は、「勤労所得及び事業所得」が53.8%、「公的移転所得(年金や各種手当、保険給付など)」が25.9%、「私的移転所得(子や親族の援助など)」が8.0%、「不動産所得」が6.7%などとなっている。

高齢者の世帯構成については、「夫婦世帯」が55.2%、「単身世帯」が32.8%、「子どもと同居」が10.3%などとなっている。「単身世帯」の割合は、2020年の前回調査(19.8%)から13ポイント増と急増している。平均世帯員数は1.8人で、前回(2.0人)から減少した。

また、財産の相続に関する価値観についても聞いた。「自分および配偶者のために使用する」との回答が24.2%と、前回調査(17.4%)から大幅に増加している。また、「長男に多く相続する」という割合は、2008年の21.3%から2023年には6.5%に大幅に減少している。

保健福祉部は「今回の調査を通して、所得の増大や価値観の変化が確認でき、新しい高齢者層が登場している」と分析し、勤労意欲を持った高齢者に働く機会を提供していく方針である。保健福祉部は2023年7月、超高齢社会に備え、2027年までに高齢者人口の就業を10%水準に増やすことを目標に、公益活動の雇用を安定的に提供することなどを盛り込んだ「第3次高齢者雇用・社会活動支援総合計画('23~'27)」(注2)を発表している。

60歳以上の就業者数が初めて50歳台を上回る

統計庁が10月16日に発表した9月の雇用動向状況によると、2024年9月の60歳以上の就業者数は、1982年の統計開始以来、初めて50歳台を上回った。60歳以上の就業者数は、すべての年齢層の中で最も多くなった(図2)。

就業者比率でも60歳以上層が過去最高を記録した。9月の就業者比率は60歳以上が23.4%で最も高く、以下、50歳台(23.3%)、40歳台(21.5%)、30歳台(19.0%)、20歳台(12.4%)、15~19歳(0.5%)と、年齢が低くなるほど割合も低くなっている。

図2:年齢階級別・就業者数(2024年9月)
画像:図2

出所:統計庁「2024年9月の雇用動向」

高齢者団体は「高齢者定義の75歳への引き上げ」を提案

このように進展する高齢化と高齢者の就業状況を踏まえ、社団法人「大韓老人会」(注3)の第19代会長に就任したイ・ジュングン(李重根)氏は、10月21日の就任式で、高齢者福祉や生産年齢人口の減少に対する懸念を表明。高齢者の定義(注4)を現在の65歳から75歳に引き上げるよう、政府に対して提案した。現在60歳以上である定年年齢を延長する必要性にも言及した。これに対して、ハン・ドクス(韓悳洙)首相は22日、「老人会の提案を、重要な問題としてしっかり検討していく」との考えを示した。

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