労働者の12%が残業
―7割超が労働時間口座を利用
連邦統計局が8月1日に発表した資料によると、2023年は約12%の労働者が残業をしていた。残業時間の扱いについては、「労働時間口座に貯蓄」が71%と大半を占めており、次いで「無償」が20%、「有償」が17%となっていた。「労働時間口座」は、労働者が残業をした場合に、その残業時間を銀行口座のように貯めておき、後日休暇などで相殺する制度である。労働協約や事業所協定等により、様々な運用がされている。
3種類の残業形態
今回の分析には、2023年のマイクロセンサス (LFS-Unterstichprobe)が用いられた。残業については、「基準週に本業(メインの仕事)において雇用契約での合意以上の時間働いた」と回答した従属労働者(注1)を抽出。合意以上の時間働いたと回答した者は、さらにこれらの残業時間について、①「労働時間口座に貯蓄」、②「残業代を受け取った(有償)」、③「残業代を受け取らなかった(無償)」のうち該当するものを選択する(複数回答)。そのため、これら3つの回答が重複している可能性もある。
それによると、残業実績のある労働者のうち、「労働時間口座に貯蓄」と回答した割合が71%、「無償」と回答した割合が20%、「有償」と回答し割合が17%となっていた。
残業の多くは週あたり数時間
2023年は、雇用労働者3930万人の11.7%に相当する460万人が雇用契約で合意した労働時間よりも長く働いたことがあった。残業実績のある労働者の性別を見ると、男性が13%、女性が同10%と、男性の比率がやや高い。
また、残業する労働者の割合が最も高かった産業は、「金融・保険産業」と「エネルギー産業」で、17%となっていた。逆に最も低かったのは、「接客業(ホスピタリティ産業)」の6%、次いで「警備や清掃」(8%)となっていた。
残業時間の長さについて、残業実績者の70%は週に10時間未満、うち40%は5時間未満と、多くの者は週に数時間以内であった。他方で、残業実績者の19%は、週に15時間以上残業していた。
労使合意に基づく残業手当
ドイツの残業手当や時間外割増賃金は、法律では明示的に規定されておらず、雇用契約や事業所協定、団体協約等によって定められている。
また、労働者は、労働時間法(ArbZG)に基づき、原則として1日8時間を超えて働いてはならない。ただし、6カ月または24週の期間の平均労働時間が1日8時間を超えない場合のみ、1日10時間まで労働時間を延長することができる。また、ごく限定的に1日10時間を超える労働時間も許容されている。例えば、緊急事態など法律で根拠が規定されている場合(州当局が1日10時間を超える長時間労働を許可する権限を保有している場合)や、労働協約等に基づく場合は、一定の要件を満たした上で例外的に認められる。
このほか労働者の健康確保の観点から、EU労働時間指令に基づき、1日の労働時間終了後、少なくとも11時間の連続休息時間が確保されなければならない(労働時間法5条)。ただし、特殊な職種(公共、介護、農業、接客業、交通運輸、オンコールサービス等)においては、休息時間の短縮に補償があることを条件に、法や労働協約等に基づく休息時間の短縮が例外的に許容されている。
なお、自己の判断で採用及び解雇を行う権限を有する者や包括代理権または業務代理権を有する者に該当する「管理的職員(leitende Angestellte)」等は、労働時間法の規制対象外となっている。
注
- 従属労働者とは、雇用契約に基づき、雇用主のために働き、その対価として報酬を受け取っている者であり、ホワイトカラー、ブルーカラー、公務員、技能実習生などが含まれる。(本文へ)
参考資料
- 連邦統計局(Pressemitteilung Nr. N039 vom 1. August 2024)、労働時間法(ArbZG)ほか。
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