公共分野の賃金交渉が妥結

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2023年5月

連邦政府や地方自治体に従事する約250万人の労働者が影響を受ける公共分野の賃金交渉が4月22日、妥結した。これまで、物価高騰や地方自治体の逼迫した予算状況等を背景に労使の折合いがつかず、各地で警告ストライキが頻発していた。今後は妥結の可否を問う組合員投票を経て、2023年1月から遡及適用される見込みである。

交渉の経緯

公務員系の2労組 ―「統一サービス産業労働組合(ver.di)」と「ドイツ官吏同盟協約連合(dbb)」は物価高騰を受けて、23年初頭から開始した賃金交渉で10.5%、少なくとも月額500ユーロ以上の賃上げを要求していた(注1)。また、職業訓練生等についても月額200ユーロの賃上げを求めていた。交渉相手の雇用主である政府は、27カ月で二段階にわたる計5%の賃上げと、物価上昇を踏まえた非課税一時金1000ユーロ(1回限り)の支払いを提示していた。

労働協約は22年末で失効し、予め23年1月、2月、3月末の3回の協議が設定されていたが、いずれも労使の主張は平行線をたどり、交渉期間中は延べ50万人の労働者が参加し、各地の公共交通機関や保育園、病院、ゴミ処理場などで近年稀に見る大規模な警告ストライキが頻発した。最終的に3日間続いた3回目の労使交渉は妥結に至らないまま、3月29日に終了した。4回目は開催せず、第三者による調停委員会(Schlichtungsstelle)で解決を図ることになり、4月半ばに調停案が出され、4月22日にその内容を労使がほぼ受入れて妥結した。

なお、ここでいう「調停委員会」は、協約紛争解決のために事前に労使(当事者)が任意で取り決めた規則に基づいて実施される調停手続き(自動的に、または当事者の一方の呼びかけによる)のことで、労働裁判所が裁定するものではない。また、調停期間中は争議行為を行わないという「平和義務」が労働組合側に課されている。

主な妥結内容

今回妥結された主な協約内容は以下の通りである。

◎協約期間:2023年1月1日~2024年12月31日まで(24カ月)

◎物価上昇を踏まえた非課税一時金(ボーナス)支払い(注2):総額3000ユーロ

  • -2023年6月:1240ユーロ
  • -2024年7月~2024年2月まで:月額220ユーロずつ(計1760ユーロ)

◎賃上げ

2024年3月1日~:月額200ユーロ増+賃金5.5%増

  • ※合計で月額340ユーロに達しない場合、増加額は340ユーロに設定される。
  • ※なお、職業訓練生等は別途、2023年6月に620ユーロ/2023年7月~2024年2月まで月額110ユーロの非課税一時金に加えて、2024年3月から月額150ユーロ増

労使の反応

今回の妥結について、雇用主代表であるのナンシー・フェーザー連邦内務相は、緊迫した政府予算への留意の必要性を改めて強調した上で、「技能労働者を惹きつけるためにも公共分野の職業をより魅力的にすることは重要だ」と述べ、交渉担当者として労使合意に至ったことを歓迎した。今回の妥結により、今後2年間で増加する人件費は、地方自治体が総額170億ユーロ、連邦政府が49.5億ユーロと見積もられている。

他方、労働者側であるdbbとver.diの交渉担当者は、「この妥結は、過去数カ月にわたる多くの警告ストライキと多数の組合員の参加なしには実現しえなかった」として、労働者の力で勝ち取ったことを強調した。今後は、妥結案を受入れるかどうかの組合員投票を経て、5月15日に正式に協約が締結される見込みである。

なお、年初から警告ストが続く鉄道や空港職員の団体交渉は未だ妥結にいたっていない。

参考資料

関連情報

参考レート

2023年5月 ドイツの記事一覧

関連情報