2036年までに労働力人口の3割相当、1300万人が退職の見込み

カテゴリー:高齢者雇用労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2022年10月

連邦統計局によると、今後2036年までに団塊世代の1290万人が法定の年金受給年齢に達する。これは、現在の労働力人口(4300万人)の3割に相当し、進む高齢化への対策が求められている。

人口動態と就業の現状

ドイツの「団塊世代」は、第二次世界大戦後の1957年~1969年に生まれた53歳~65歳の年齢層を指す。労働力人口の3割に相当するこのボリューム層は、今後十数年のうちに次々と年金受給年齢に達する。

現在の人口動態を見ると、ドイツは高齢人口が多く、若年人口が少ない「つぼ型」であることが分かる(図表1)。

図表1:ドイツの人口ピラミッドと就業状況(15歳~79歳の年齢別、男女別、2021年)
画像:図表1
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出所:Destatis (2022).

年齢階級別の就業状況を見ると、50歳~59歳の86%が働いているが、60~64歳では63.6%に下がり、すでに退職移行期であることを示している。この2つの高齢層の人口は合計1130万人である。

他方、若年層を見ると、15歳~19歳の就業割合は29%で、大多数(67%)は教育・訓練に従事している。その上の20~24歳は逆に、大多数(71%)が就業しており、21%が教育・訓練市場にいる。この2つの若年層が教育・訓練を終えて、完全就業を達成したとしても、総人口はわずか840万人に過ぎない。

また、男女別に見ると、2021年の時点で女性の就業割合は、すべての年齢層で、男性よりも低くなっている。30~39歳の2年齢層における女性の就業率は、男性よりも11ポイント低い。そのことから、今後の女性就業率の拡大次第では、労働市場が大きく活性化する可能性を連邦統計局は指摘する。

年金受給開始年齢の引き上げ措置と近年の政策議論

かつてドイツでは、若年者や長期失業者の雇用機会拡大のため、高齢者の早期退職を勧奨していた。しかし、次第に少子高齢化に伴う「社会保障財政の悪化」や、「労働力人口の減少」が深刻な政策課題として語られるようになった。そこで、「公的年金制度の維持」や「熟練労働者不足の解消」を目的として、2007年に「年金受給開始年齢(Renteneintrittsalter)」の引き上げが決定された。措置は2012年から始まり、2031年までの長期にわたり、65歳から67歳へ段階的に引き上げられる。こうした政策等の影響により、65歳以上で働く人の割合は、2009年には4%だったが、2019年には8%になり、10年で2倍に増加した。

しかし、年金受給年齢を引き上げてもなお、少子高齢化による人材不足や年金制度の安定維持をめぐる懸念は深刻さを増している。

今春、コロナによる行動制限が解除されて以降、労働市場では記録的な求人需要(22年第1四半期、174万人)が続いているが、人材不足解消の目処は立っていない。
このような懸念に対する解決策として、新たに「年金受給年齢を70歳に引き上げる」案も出ているが、同案は、政治家にとって非常に不人気な措置で、彼らの中で積極的にこの案を導入しようとする動きは現在のところ見られない。

代替案として、足りない若年層をEU域外(第三国)から得るために新たな「技能外国人材の受入れ優遇策」が検討されている。さらに、パートタイム労働者や長期失業者等をフルタイム労働者に移行促進する案や、週労働時間を42時間に延長する案、現在は別制度になっている公務員や自営業者の年金制度を1つの制度にまとめる案、年金保険料率自体を引き上げる案など、多種多様な案が出されている。

これまでのところ決め手となる有効な解決策は出ていないが、今後の人口動態の変化に応じて、上述のいくつかの案は実際に実施される可能性がある。

参考資料

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