新型コロナ感染症回復者への雇用差別対策を強化

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  • 国別労働トピック:2022年10月

中国では新型コロナウイルス感染症からの回復者に対し、採用や解雇をめぐる差別や嫌がらせが相次いでいる。政府の人的資源・社会保障部と国家衛生健康委員会は8月1日、こうした雇用差別などを解消するため、「新型コロナウイルス感染症回復者に対する雇用差別への断固とした対策に関する緊急通知」(以下:「緊急通知」)を公布した。新型コロナウイルス感染症回復者に対する企業の雇用差別行為を禁じ、その是正策などを盛り込んでいる。

差別行為への「4つの厳禁」

「緊急通知」によると、企業または個人は、新型コロナウイルスのPCR検査の結果を無断で照会してはならない。また、就業の機会均等の権利を保障するため、新型コロナウイルス感染症回復者に対する雇用差別について、企業の以下の4つの行為を厳禁する。

  1. 新型コロナウイルス感染症回復者を差別する求人募集情報を掲載すること。
  2. 新型コロナウイルス陽性の感染歴を理由に採用を拒否すること。
  3. 職場で新型コロナウイルス感染症回復者を差別すること。
  4. 新型コロナウイルス感染症回復者を違法に辞めさせたり、解雇したりすること。

人材サービス機構(募集情報を提供する人材サービス企業など)の求人情報に、差別的な意図で記載した内容が含まれている場合、労働保障監察機構(労働者保護に関する監督・取り締まりを行う行政機関)は人材市場暫定条例第43条に基づき処分する。雇用企業による違反に対しては、行政面談(調査、ヒアリング)、ネットへの公開、行政処分などの措置を講じる。

行政と司法の連携強化

政府の人的資源・社会保障部と最高人民法院は8月10に別途、「新型コロナウイルス感染症回復者など労働者の平等な就業の権利を保障するための行政と司法の連携強化に関する通知」を発表した。

それによると、人的資源・社会保障部は今後、企業や人材サービス機構への監督を強化する。また、企業が新型コロナウイルス感染症回復者などの労働者に雇用差別を行ったり、労働者のPCR検査結果を無断で違法に照会したりする場合、労働者は就業平等権や個人情報の権益の侵害を理由に人民法院に提訴できる。人民法院は公正さの確保を前提に、効率を高め、迅速な審理を行うとともに、各地域の人的資源・社会保障部門と連携して、雇用差別に関する情報を共有し、関連する政策・施策や司法解釈を改善させる、としている。

参考資料

2022年10月 中国の記事一覧

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