「非私営企業」の平均年収が10万元を突破
 ―2021年、国家統計局

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2022年10月

中国国家統計局はこのほど、全国都市部における国有企業など「非私営企業」における2021年の平均年収に関する統計を発表した。それによると、コロナ禍で落ち込んでいた平均年収の対前年比の伸び率が回復し、初めて10万元を突破した。ただし、業種や地域によって平均年収や水準に大きなばらつきがみられる。 

年収の伸び率が回復

コロナ禍で「非私営企業」(国有企業、集団企業、共同経営、株式制、外商投資企業、香港マカオ台湾投資企業等を含む)における従業員1人当たりの平均年収(注1)の伸び率(対前年比)は、2020年に7.6%増と前年の9.8%増を2.2ポイント下回った。しかし、2021年には回復し、9.7%増(前年比2.1ポイント増)の10万6,837元だった(図表1)。物価上昇分を除いた実質の賃金上昇率は8.6%増となっている。「非私営企業」の形態別に見ると、最も平均年収が高かったのは外商投資企業で、12.4%増の12万6,019元と平均を上回った。

図表1:全国都市部における非私営企業の平均年収の推移(2009~2021年)
画像:図表1

出所:中国国家統計局(2022)。

情報通信関連と金融で伸びが顕著

業種別にみると、2020年の前年比伸び率が最も高かったのは、「情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業」で、13.5%増の20万1,506元だった。次いで、「金融業」が13.1%増の15万843元となっている(図表2)。

図表2:非私営企業の業種別平均年収(2019年~2021年)
業種 2021年 2020年 2019年
年収(元) 前年比 年収(元) 前年比 年収(元)
情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業 201,506 13.5% 177,544 10.0% 161,352
科学研究・技術サービス業 151,776 8.5% 139,851 4.8% 133,459
金融業 150,843 13.1% 133,390 1.5% 131,405
衛生・社会事業 126,828 9.9% 115,449 6.0% 108,903
電気・熱供給・ガス・水道生産・供給業 125,332 7.4% 116,728 8.3% 107,733
文化・体育・娯楽業 117,329 4.7% 112,081 4.1% 107,708
教育 111,392 4.6% 106,474 9.0% 97,681
公共管理・社会保障・社会組織 111,361 6.6% 104,487 10.7% 94,369
交通運輸・倉庫・郵政業 109,851 9.2% 100,642 3.7% 97,050
鉱業 108,467 12.2% 96,674 6.2% 91,068
卸売・小売業 107,735 11.6% 96,521 8.4% 89,047
賃貸・商業サービス業 102,537 10.3% 92,924 5.4% 88,190
製造業 92,459 11,7% 82,783 5.9% 78,147
不動産業 91,143 8.8% 83,807 4.6% 80,157
建築業 75,762 8.3% 69,986 6.7% 65,580
水利・環境・公共施設管理業 65,802 3.0% 63,914 4.5% 61,158
住民サービス、修理その他サービス業 65,193 7.4% 60,722 0.8% 60,232
農業、林業、牧畜、漁業 53,819 10.9% 48,540 23.4% 39,340
宿泊・飲食業 53,631 9.8% 48,833 -3.0% 50,346

出所:中国国家統計局(2022)。

平均年収額の上位3業種は「情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業」、「科学研究・技術サービス業」、「金融業」で、その順位はコロナ禍前と変わっていない。近年、デジタル化に取り組む企業が増え、コロナ禍で在宅勤務やオンライン教育、オンラインショッピングなどが急速に普及している。こうした当該分野の人材需要の拡大が、賃金の大幅な上昇につながったとみられる。

また、新型コロナウイルス感染症の影響を直接受けた対人接触型サービス業の平均年収の伸び率も回復した。コロナ禍で大打撃を受けた「宿泊・飲食業」の平均年収は2020年に3.0%減の4万8,833元となったが、2021年には9.8%増の5万3,631元と大幅な上昇に転じた。ただし、「宿泊・飲食」、「住民サービス・修理その他サービス業」等の労働集約型サービス業は、他の業種と比べて平均年収が低い。

北京市は19万元台の高水準

上海市、湖北省、チベット自治区を除く地域では、2021年の全国都市部の非私営企業従業員1人当たりの平均年収を発表している(図表3)。

それによると、最も高いのは北京市で、前年比9.2%増の19万4,651元となった。天津市、浙江省、広東省、江蘇省、青海省などが10万元台で続く。最下位の河南省は7万4,872元で、北京市と比較して11万9,779元の差があった。対前年比の伸び率を見ると、浙江省、江蘇省、福建省、海南省、山西省が10%を超えている。

図表3:非私営企業の地域別平均年収(2020年~2021年) (単位:元)
地域 2021年 2020年 伸び率
北京市 194,651 178,178 9.2%
天津市 123,528 114,682 7.7%
浙江省 122,309 108,645 12.6%
広東省 118,133 108,045 9.3%
江蘇省 115,133 102,621 12.2%
青海省 109,346 101,401 7.8%
寧夏回族自治区 105,266 97,438 8.0%
重慶市 101,670 93,816 8.4%
雲南省 98,730 93,133 6.0%
福建省 98,071 88,149 11.3%
海南省 97,471 86,609 12.5%
四川省 96,741 88,559 9.2%
山東省 94,768 87,749 8.0%
貴州省 94,487 89,228 5.9%
新疆ウイグル自治区 94,281 86,343 9.2%
安徽省 93,861 85,854 9.3%
陝西省 90,996 83,520 9.0%
内モンゴル自治区 90,426 85,310 6.0%
広西チワン族自治区 88,170 82,751 6.5%
遼寧省 86,062 79,472 8.3%
湖南省 85,438 79,122 8.0%
甘粛省 84,500 79,730 6.0%
江西省 83,766 78,182 7.1%
吉林省 83,028 77,995 6.5%
河北省 82,526 77,323 6.7%
山西省 82,413 74,739 10.3%
黒龍江省 80,369 74,554 7.8%
河南省 74,872 70,239 6.6%

出所:人社通、各地域の人的資源・社会保障局(2022)。

参考資料

  • 中国国家統計局新しいウィンドウ
  • 人社通、人民網、中国中央人民政府、日本貿易振興機構、各ウェブサイト

参考レート

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