「非私営企業」の平均年収が10万元を突破
―2021年、国家統計局
中国国家統計局はこのほど、全国都市部における国有企業など「非私営企業」における2021年の平均年収に関する統計を発表した。それによると、コロナ禍で落ち込んでいた平均年収の対前年比の伸び率が回復し、初めて10万元を突破した。ただし、業種や地域によって平均年収や水準に大きなばらつきがみられる。
年収の伸び率が回復
コロナ禍で「非私営企業」(国有企業、集団企業、共同経営、株式制、外商投資企業、香港マカオ台湾投資企業等を含む)における従業員1人当たりの平均年収(注1)の伸び率(対前年比)は、2020年に7.6%増と前年の9.8%増を2.2ポイント下回った。しかし、2021年には回復し、9.7%増(前年比2.1ポイント増)の10万6,837元だった(図表1)。物価上昇分を除いた実質の賃金上昇率は8.6%増となっている。「非私営企業」の形態別に見ると、最も平均年収が高かったのは外商投資企業で、12.4%増の12万6,019元と平均を上回った。
図表1:全国都市部における非私営企業の平均年収の推移(2009~2021年)
出所:中国国家統計局(2022)。
情報通信関連と金融で伸びが顕著
業種別にみると、2020年の前年比伸び率が最も高かったのは、「情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業」で、13.5%増の20万1,506元だった。次いで、「金融業」が13.1%増の15万843元となっている(図表2)。
業種 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | ||
年収(元) | 前年比 | 年収(元) | 前年比 | 年収(元) | |
情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業 | 201,506 | 13.5% | 177,544 | 10.0% | 161,352 |
科学研究・技術サービス業 | 151,776 | 8.5% | 139,851 | 4.8% | 133,459 |
金融業 | 150,843 | 13.1% | 133,390 | 1.5% | 131,405 |
衛生・社会事業 | 126,828 | 9.9% | 115,449 | 6.0% | 108,903 |
電気・熱供給・ガス・水道生産・供給業 | 125,332 | 7.4% | 116,728 | 8.3% | 107,733 |
文化・体育・娯楽業 | 117,329 | 4.7% | 112,081 | 4.1% | 107,708 |
教育 | 111,392 | 4.6% | 106,474 | 9.0% | 97,681 |
公共管理・社会保障・社会組織 | 111,361 | 6.6% | 104,487 | 10.7% | 94,369 |
交通運輸・倉庫・郵政業 | 109,851 | 9.2% | 100,642 | 3.7% | 97,050 |
鉱業 | 108,467 | 12.2% | 96,674 | 6.2% | 91,068 |
卸売・小売業 | 107,735 | 11.6% | 96,521 | 8.4% | 89,047 |
賃貸・商業サービス業 | 102,537 | 10.3% | 92,924 | 5.4% | 88,190 |
製造業 | 92,459 | 11,7% | 82,783 | 5.9% | 78,147 |
不動産業 | 91,143 | 8.8% | 83,807 | 4.6% | 80,157 |
建築業 | 75,762 | 8.3% | 69,986 | 6.7% | 65,580 |
水利・環境・公共施設管理業 | 65,802 | 3.0% | 63,914 | 4.5% | 61,158 |
住民サービス、修理その他サービス業 | 65,193 | 7.4% | 60,722 | 0.8% | 60,232 |
農業、林業、牧畜、漁業 | 53,819 | 10.9% | 48,540 | 23.4% | 39,340 |
宿泊・飲食業 | 53,631 | 9.8% | 48,833 | -3.0% | 50,346 |
出所:中国国家統計局(2022)。
平均年収額の上位3業種は「情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス業」、「科学研究・技術サービス業」、「金融業」で、その順位はコロナ禍前と変わっていない。近年、デジタル化に取り組む企業が増え、コロナ禍で在宅勤務やオンライン教育、オンラインショッピングなどが急速に普及している。こうした当該分野の人材需要の拡大が、賃金の大幅な上昇につながったとみられる。
また、新型コロナウイルス感染症の影響を直接受けた対人接触型サービス業の平均年収の伸び率も回復した。コロナ禍で大打撃を受けた「宿泊・飲食業」の平均年収は2020年に3.0%減の4万8,833元となったが、2021年には9.8%増の5万3,631元と大幅な上昇に転じた。ただし、「宿泊・飲食」、「住民サービス・修理その他サービス業」等の労働集約型サービス業は、他の業種と比べて平均年収が低い。
北京市は19万元台の高水準
上海市、湖北省、チベット自治区を除く地域では、2021年の全国都市部の非私営企業従業員1人当たりの平均年収を発表している(図表3)。
それによると、最も高いのは北京市で、前年比9.2%増の19万4,651元となった。天津市、浙江省、広東省、江蘇省、青海省などが10万元台で続く。最下位の河南省は7万4,872元で、北京市と比較して11万9,779元の差があった。対前年比の伸び率を見ると、浙江省、江蘇省、福建省、海南省、山西省が10%を超えている。
地域 | 2021年 | 2020年 | 伸び率 |
北京市 | 194,651 | 178,178 | 9.2% |
天津市 | 123,528 | 114,682 | 7.7% |
浙江省 | 122,309 | 108,645 | 12.6% |
広東省 | 118,133 | 108,045 | 9.3% |
江蘇省 | 115,133 | 102,621 | 12.2% |
青海省 | 109,346 | 101,401 | 7.8% |
寧夏回族自治区 | 105,266 | 97,438 | 8.0% |
重慶市 | 101,670 | 93,816 | 8.4% |
雲南省 | 98,730 | 93,133 | 6.0% |
福建省 | 98,071 | 88,149 | 11.3% |
海南省 | 97,471 | 86,609 | 12.5% |
四川省 | 96,741 | 88,559 | 9.2% |
山東省 | 94,768 | 87,749 | 8.0% |
貴州省 | 94,487 | 89,228 | 5.9% |
新疆ウイグル自治区 | 94,281 | 86,343 | 9.2% |
安徽省 | 93,861 | 85,854 | 9.3% |
陝西省 | 90,996 | 83,520 | 9.0% |
内モンゴル自治区 | 90,426 | 85,310 | 6.0% |
広西チワン族自治区 | 88,170 | 82,751 | 6.5% |
遼寧省 | 86,062 | 79,472 | 8.3% |
湖南省 | 85,438 | 79,122 | 8.0% |
甘粛省 | 84,500 | 79,730 | 6.0% |
江西省 | 83,766 | 78,182 | 7.1% |
吉林省 | 83,028 | 77,995 | 6.5% |
河北省 | 82,526 | 77,323 | 6.7% |
山西省 | 82,413 | 74,739 | 10.3% |
黒龍江省 | 80,369 | 74,554 | 7.8% |
河南省 | 74,872 | 70,239 | 6.6% |
出所:人社通、各地域の人的資源・社会保障局(2022)。
注
- 平均年収は時給、出来高給、賞与、手当・補助、残業代、特殊状況下の給与等の総額であり、税込みで、社会保険・住宅積立金の個人積立分を含む。(本文へ)
参考資料
- 中国国家統計局
- 人社通、人民網、中国中央人民政府、日本貿易振興機構、各ウェブサイト
参考レート
- 1中国人民元(CNY)=20.34円(2022年10月4日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
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