高齢者介護・保育サービスに対する支援策

カテゴリー:高齢者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2022年10月

政府の国家発展改革委員会、民政部、国家衛生委員会など関連13部門は8月31日、「養老・保育サービス業の困難解除への支援に関する若干措置(以下:措置)(注1)」を発表した。長引くコロナ禍で高齢者介護・保育サービス施設が受けたダメージを軽減するために、家賃の免除・減免、社会保険料や税金の減免、防疫支援などの包括的な支援策を打ち出している。以下に主な概要を紹介する。

主な概要

(1)家賃の免除

中小零細企業や個人事業主に属する高齢者介護・保育サービス施設が国有物件を借りる場合、2022年末まで家賃が免除される。また、非国有賃貸物件の保有者が家賃減免を実施した場合、当該者の住宅賃貸増値税・不動産税を減免する。

(2)税金の減免

各地方政府は、高齢者介護・保育サービス施設に対する「六税二費」(6つの税金と2つの附加費用:①資源税、②都市維持建設税、③不動産税、④城鎮土地使用税、⑤印紙税、⑥耕地占用税、⑦教育費附加、⑧地方教育費附加)を、50%の範囲で減免する。さらに、高齢者介護・保育サービスの納税事業者に対して、月ごとの増値税控除留保税額(注2)の増加分を全額還付する。水道、電気、ガス、暖房の料金についてもさらなる減免優遇を行い、「料金の不払いによる供給停止の禁止」や「一定期間の支払い猶予」、「滞納金の免除」などの特例を実施するよう地方政府に対して呼びかけている。

(3)社会保険料の支援

雇用保険と労働災害保険の料率を段階的に引き下げる政策を延長し、従業員を解雇しないか、解雇人数が少ない高齢者介護施設を対象に、雇用保険金の還付を行う。さらに、コロナ禍で一時的に経営が困難になった施設に対して、社会保険料の段階的な支払い猶予の申請を認める。また、高齢者介護・保育サービスに従事するフレキシブルワーカー(注3)に対する社会保険料の一時支払い猶予等の支援策も明確にした。

(4)金融支援

「包摂的高齢者介護特別再貸出(注4)」の試行地域範囲を拡大する。中小零細企業や個人事業主に属する高齢者介護施設に対し、金融機関が融資の元利金返済猶予を実施するよう指導する。地方政府は高齢者介護・保育サービス施設に金利の優遇支援を行う。また、高齢者向けのサービス企業の多様な資金調達ルートを拡大するため、社債の発行を支援する。

(5)防疫支援

地方政府は、物資の配達、移送・隔離、医療処置などの疫病予防と治療において、高齢者サービス施設を優遇する。また、高齢者介護施設の運営補助金の適時・完全支払いを推進する。

背景に「一老一小」サービス問題

少子高齢化が止まらない中国では現在、「一老一小(高齢者と就学前児童)」に対する公的サービスの提供や社会福祉保障の支援などが極めて重要な政策課題になっている。

国家統計局が発表した「2021年国民経済と社会発展統計公報」によると、2017年以降、出生数は5年連続で減少しており、2021年は1,062万人(出生率7.52%)と過去最低を記録した。一方、60歳以上の人口は2億6,736万人と総人口の18.9%を占め、うち65歳以上の人口は2億56万人(総人口の14.2%)に上る。

「一老一小」に対するサービス環境改善のため、政府(国家発展改革委員会、民政部、国家衛生健康委員会)は2021年6月に「第14次5カ年計画における人口高齢者対応と託児施設建設の実施方案」を発表し、2025年を目処に、高齢者介護・保育施設の建設、サービスの供給拡大、地域コミュニティとの連携強化などを進めている。

同年8月には「一老一小特別プロジェクト」を新たに開始し、公的高齢者介護サービスの強化支援や特別な困難を抱える高齢者に対するサービス需要を満たすため、同プロジェクトに対する中央政府の資金支援を決定した。2021年の予算額は70億元で、介護ベッドを新たに17万床追加し、乳幼児用ベッド数を6万床追加した。また、1組の夫婦に対する3人目の出産を認め、産児制限に違反した夫婦などに科してきた罰金を廃止し、保育サービスも拡充した。

さらに、国務院が2022年2月に発表した「第14次5カ年計画における国家高齢者事業の発展と介護サービスシステム計画」では、2025年までの高齢者介護サービス施設のベッド数目標を900万床以上に設定し、高齢者向けの介護サービスの供給拡大やニーズの多様化への対応促進、関連法の整備などを行っている。

参考資料

  • 人民網、中国国家発展改革委員会、中国新聞網、中国政府網、日本貿易振興機構

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