直接的な救済に代わる就業機会を提供
 ―地方の貧困対策で国家発展改革委

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2022年9月

中国政府の国家発展改革委員会は7月5日、「救済に代わる主要プロジェクトを通じた就業支援の積極的な実施による地域住民の就業及び増収促進に関する作業計画」(以下「作業計画」)を発表した(注1)。地方の貧困対策として、支援金や救援物資等で直接的に救済する代わりに就業機会を提供する方針(中国語で「以工代賑」)のもとで、雇用の受け皿となる建設等のプロジェクトの実施を提唱。その内容や基準を明確化するとともに、すべての地域と関連部門に対し、当該地域の農民工(農村戸籍を持つ出稼ぎ労働者)らにこうした雇用機会を提供し、所得の増加をもたらすよう促している。

「交通」「エネルギー」など7つの分野に投資

中国政府にとって雇用の安定は経済運営のカギである。2022年5月31日に国務院が発表した6分野33項目の経済安定化対策(注2)では「農村部の労働者がその地方や近隣地域で就業できる道を拡大する」として、「大規模な建設プロジェクトでは、農村部の労働者を優先して雇用する」ことをあげている。

新型コロナウィルスの感染拡大による生産活動の停止や経済活動停滞などの影響で、農村労働者が出稼ぎで働きにくい環境が生じている。農村部での建設等のプロジェクトへの投資には、こうした労働者に地元で働く場を与え、雇用の安定をもたらすことが期待されており、同時に、地方経済を活性化させる狙いもある。

「作業計画」は、地方の貧困者を支援金や救援物資等で直接的に支援する代わりに、就業機会を提供することで救済するものである。その政策の柱として4つの方針を示している。

第一の方針は「雇用の拡大」である。政府が主要な建設等のプロジェクトの計画・実施に投資する際、すべての地域と関連部門は「できる限り、適用すべきものは適用し、使用できるものは使用する(中国語「応用尽用能用尽用」)」という原則で取り組む。同時に、民間企業などによるこうしたプロジェクトへの投資を指導、奨励する。

第二はプロジェクトを実施する範囲の明確化である。対象として、交通、水利、エネルギー、農業・農村、都市建設、環境・エコロジー、災害後の復旧・復興の7分野をあげている。「交通」は高速鉄道、都市間・郊外鉄道、都市鉄道、空港など、「水利」は貯水池、大・中規模の灌漑区域、河川洪水防止対策など、「エネルギー」は電力、石油・ガスパイプライン、再生可能エネルギーなど、「都市建設」は都市共同溝(電線、ガス管、上下水道管などを地下に埋設して収容するための施設)、低所得者向け住宅などの建設、修理をそれぞれ含む。

第三は対象の重点化である。農村労働者、都市部低所得者、就業困難者などの労働力を把握し、帰郷農民工、脱貧困者らを優先的に雇用する。

第四は投資規模の拡大である。プロジェクト投資予算に対する労働報酬(労務費)の割合を現在の15%から30%以上に引き上げる。地方政府は各種金融機関に対してプロジェクトへの融資の増加を奨励するなど、積極的な資金調達を行う。

不正防止の監督を強化

「作業計画」では、プロジェクトに参加する企業に対して、統一・標準化された労働者名簿と労働報酬の分配表を作成し、県レベルの関連部門に送付することを義務付ける方針を提示した。企業は労働報酬の基準を合理的に決定し、賃金を完全かつ適時に支払う。労働報酬の規模はできるだけ拡大する。政府は、労働報酬の支払い過程における遅延、ピンはね、詐欺行為を徹底的に防止するため、監督を強化し、不正を発見した場合は速やかに是正させる。

地方政府に対しては、主要プロジェクトの「年間リスト」を作成するよう求める。建設会社など主要プロジェクトの実施者は県レベルで必要とする職種、人数、労働時間、求められる技能などを明確にする。県レベルの政府はプロジェクト実施者と協力して地域の労働力の状況を把握し、低所得者や就労困難者を優先して雇用を進める。

職業訓練や労働安全衛生教育の実施についても重視する。プロジェクトの現場で機械設備を利用した訓練を実施するなどして訓練効果を高め、就職につなげる、としている。

参考資料

  • 国家発展改革委員会、中国政府網、日本貿易振興機構、各ウェブサイト

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