男性の「育休」受給率、過去最高の43.5%
連邦統計局がこのほど発表した資料によると、2019年における父親の育休手当(両親手当)受給率は、連邦レベルで43.5%であった。前年より1.4ポイント上昇し、過去最高を記録した(注1)。
父親の2人に1人以上が受給する州も
父親の両親手当受給率を州別に見ると、最も取得率が高かったのはザクセン州の54.8%で、2人に1人以上が受給していた。逆に、最も低かったのはザールラント州の32.2%で、地域によって差が見られた(表1)。
連邦州・都市州 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
バーデン=ヴュルテンベルク | 20.6 | 24.6 | 27.4 | 30.5 | 33.4 | 36.7 | 39.2 | 40.9 | 42.2 | 43.7 | 45.4 | 46.7 |
バイエルン | 27.4 | 30.7 | 33.5 | 36.5 | 38.6 | 40.5 | 42.2 | 44.8 | 46.5 | 47.7 | 49.3 | 50.7 |
ベルリン | 27.5 | 30.7 | 32.2 | 33.7 | 35.5 | 37.9 | 39.7 | 40.9 | 42.9 | 43.8 | 45.2 | 46.1 |
ブランデンブルク | 25.5 | 27.3 | 28.1 | 30.2 | 32.4 | 34.8 | 36.6 | 40 | 42.5 | 44.9 | 45.8 | 48.4 |
ブレーメン | 18.3 | 19.9 | 19.3 | 21.7 | 22.9 | 25.8 | 27.1 | 28.1 | 31 | 33.4 | 35 | 36.3 |
ハンブルク | 22.9 | 27.4 | 28.5 | 31.1 | 33.7 | 36.2 | 38 | 40.2 | 41 | 42.5 | 44.8 | 45.9 |
ヘッセン | 20.3 | 23.3 | 25.3 | 27.2 | 29.4 | 30.8 | 33.1 | 34.4 | 35.8 | 37.3 | 38.5 | 38.9 |
メクレンブルク=フォアポンメルン | 20.5 | 23.3 | 23.5 | 21.3 | 25.3 | 26.5 | 28 | 31.2 | 35.2 | 36.5 | 38.4 | 39.9 |
ニーダーザクセン | 19.5 | 21.6 | 23.2 | 25.3 | 26.9 | 29.3 | 31.5 | 34.5 | 36.7 | 38.4 | 40.6 | 42.9 |
ノルトライン=ヴェストファーレン | 16.8 | 18.5 | 19.7 | 20.9 | 22 | 25.6 | 27.5 | 29.4 | 31.7 | 33.4 | 35.3 | 36.7 |
ラインラント=プファルツ州 | 17.5 | 20.1 | 21.7 | 23.6 | 25 | 27.3 | 30.3 | 31.9 | 33.5 | 35 | 37 | 39.4 |
ザールラント | 12.9 | 14.6 | 16.4 | 18.8 | 19.1 | 21 | 24.1 | 25.3 | 28.5 | 28.4 | 29.2 | 32.2 |
ザクセン | 26.9 | 31 | 33 | 36 | 38.5 | 41.1 | 44.7 | 47.5 | 49.1 | 51.9 | 53.5 | 54.8 |
ザクセン=アンハルト | 17.6 | 17.9 | 20.1 | 22.2 | 23.2 | 25.9 | 28.6 | 31.7 | 35.1 | 36.8 | 38.8 | 40.1 |
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン | 18.4 | 19.9 | 22 | 24 | 24.7 | 27 | 29.4 | 30.8 | 33.4 | 34.6 | 36.5 | 37.9 |
テューリンゲン | 25 | 28.4 | 29.4 | 32.1 | 34.6 | 37 | 40.6 | 43.3 | 45.2 | 47.6 | 49.1 | 50.2 |
ドイツ全土 | 21.2 | 24 | 25.9 | 28 | 30 | 32.6 | 34.8 | 36.9 | 38.8 | 40.4 | 42.1 | 43.5 |
出所:Statistisches Bundesamt(2022).
「両親手当」、「両親手当プラス」の導入
ドイツは2007年に「両親手当(注2)」を導入し、それ以前は3%に過ぎなかった父親の両親手当受給率が、2008年には21.2%に上昇した。その後も伸び続け、今回43.5%(2019年)に達した。
「両親手当」は、片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給される。もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。追加の2カ月分は「パートナー月」と呼ばれ、もう1人の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツでは、この受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が育児休業を取得して両親手当を受給するケースが多い。
2015年には、制度の柔軟性をさらに高めた「両親手当プラス」が導入された。従来は、両親手当受給期間中に早期に職場復帰をして時短勤務をした場合、そこで得た収入の分だけ両親手当の受給額が減る仕組みだった。「両親手当プラス」は、時短勤務で得た収入を減らすことなく手当を受給できる仕組みを整え、早期の復職を希望する親を支援している。新制度ではパートナー月を含めて受給月額を半額にすると最長28カ月まで受給期間を延長できる。さらに、母親と父親双方の育児と仕事への関与を促すため、両親が同時に4カ月間、週24~32時間の幅で働くと、パートナーシップボーナスとしてさらに4カ月が追加される。
注
- ドイツの育児休業制度は、連邦両親手当及び両親時間法(BEEG)で定められており、日本とは、制度・定義・算出方法が異なる点に留意されたい。(本文へ)
- 「両親手当(Elterngeld)」は、育児のために休業もしくは部分休業(週32時間以内の時短勤務も受給可能)をする親の所得損失分の67%を補填する制度である。2007年以前は「育児手当(Erziehungsgeld)」(定額制)があったが、原則300ユーロ(月額)と少額で、多くの親には効果的な所得保障とならず、一家の稼ぎ手であることが多い父親の育休取得の困難さなどが指摘されていた。「両親手当」はこのような課題を解決し、育児期の働く親を支援する目的で導入された。(本文へ)
参考資料
-
Destatis Pressemitteilung(Eine Million Personen bezogen Elterngeld für im Jahr 2019 geborene Kinder
)、Väterbeteiligung: Bundesländer, Jahre(22922-0030)ほか。
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=136.54円(2022年8月17日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
2022年8月 ドイツの記事一覧
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