2021年度大学卒業者への政府の就業支援策

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2022年4月

2021年の大卒者数は、過去最高の1,076万人が見込まれている。コロナ禍での厳しい雇用情勢の中、就職難が懸念されるが、中国政府は新卒を含む大卒者への就職関連政策を打ち出した。

企業への就職・就業ガイドの発行

中国における雇用の最大の担い手は中小企業である。清華大学が2021年12月に発表した「2021年卒業生就職質報告」(注1)によると、2021年卒業生(学士・修士・博士)の62.9%が企業に就職したが、民間企業への就職が最大の割合を占め、卒業生の26.8%で、国営企業が23.8%でそれに次ぎ、外資系企業は2.9%であった。

2022年1月に人力資源と社会保障部は「高等教育修了者への就職起業政策サービスガイド」(以下:「ガイド」)(注2)を発表し、企業(特に零細企業)の雇用を後押し、大卒者の中西部の農村部での就職(注3)に対する優遇対策、大卒者の起業支援、就職に関する公的支援サービスの地域範囲での拡大などを推奨した。

なかでも零細企業の雇用促進に対する支援策として、卒業2年未満の未就職卒業者を採用した零細企業(社会組織を含む)には社会保険料の補助を行う。さらに、失業登録を行い、半年以上失業している大卒者を採用した企業に、海外商品販売にかかる増値税(付加価値税)、都市維持建設税、教育費付加、地方教育費付加、企業所得税などへの減免を行う。零細企業が当該年度に大卒者を一定割合で採用した場合、最高300万元を超えない範囲で創業担保融資の申請を許可し、金利部分は政府が負担する。

また、零細企業の雇用促進については、社会保険料補助のほか、卒業2年未満の未就職卒業者や、16〜24歳の若年層失業者をインターン生として受け入れる企業に、一定基準のインターンシップ補助金を支給する。これは、インターン生のインターン期間中の基本生活費、傷害保険の加入、指導管理費用として使われる。インターン終了後の雇用率が50%超える企業には、インターンシップ補助金の額を引き上げる。

新卒者と1年以上の労働契約を結び、社会保険料を支払う零細企業に最長1年を超えない社会保険補助金を支給する。また、職業技能訓練に参加させ、職業資格証明書を取得した場合、従業員個人か企業に一定基準の職業訓練補助金を与える。

創業支援による雇用促進

2022年2月11日、中国国家発展改革委員会(発改委)など中央8部門は、「起業による雇用を動かす実証行動をさらに実施し、大卒者の起業創業を促進する通知」(以下:「通知」)(注4)を発表し、2022年度の新卒者を採用する企業へ助成金を支給するほか、大卒者の起業支援策を打ち出すことにより、200万人への「質の高い就業機会」を提供することを明らかにした。「通知」の付録で、政府は「大卒者起業就職への支援に関する特恵政策リスト」(以下:「リスト」)(注5)明記し、大卒者を雇用するように企業を奨励している。

「ガイド」でも、大学卒業生は、起業訓練に参加し、起業訓練補助金の申請を明記し、気象支援策を強調する。また、起業にあたっては、優遇税制を享受し、起業創業の一時支援金、最大20万元の創業担保融資を申請できる。さらに、「リスト」によると、政府は、投資開発したインキュベーターなどの創業支援施設の約30%を手配し、起業する大学卒業生に無料で提供するとしている。このように都市部のみでなく、地方でも起業する大卒者を対象にインキュベーション施設の賃貸料の補助を行うなど積極的支援を行う方針を明らかにしている。

大卒者の起業支援に関する具体的施策

2022年に起業する大卒者には、①大卒起業希望者は、最大20万元を超えない「個人創業担保融資」を申請でき、零細企業の場合には最大300万元まで申請が可能である。②卒業後1年以内に自営業に従事する大卒者は、3年以内に増値税(付加価値税)、都市維持建設税、教育費付加、地方教育費付加、企業所得税を、毎年12000元に減額する。③初めて零細企業を設立するか、自営業に従事する者が、1年以上正常に運営している場合には、起業創業一時補助金を与える。 また、起業の促進のための柔軟な就学制度を実施し、修業年限も緩和する。在学期間中に起業のため大学の履修を調整、休学することを認める。

大卒者が中西部で就職する場合の優遇措置

中国農村部、中西部地域の基層組織等を大卒者の就職先に指定することを大卒者基層就職という。「ガイド」により、大卒者は基層組織に就職すると、補助金の支給、高賃金基準の設定などの優遇政策を与える。契約期間満了で、大学院進学の入学試験の点数の加算、公務員試験の優遇、政府系事業組織就職への優先雇用などの政策も享受できるように支援している。

参考文献

  • 中国政府網、人的資源・社会保障部

参考レート

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