最低賃金、時間当たり8.72ポンドに改定

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  • 国別労働トピック:2020年8月

法定最低賃金の4月の改定により、成人向けの額が8.72ポンドとなったほか、各年齢層向けの額にも4~6%の引き上げが行われた。2020年までに平均賃金の6割の水準に引き上げるとの政府の目標は、これにより達成されたとみられている。政府はさらに、2024年までに平均賃金の3分の2への引き上げを図るとの新たな目標を掲げているが、新型コロナウイルスの影響などから、諮問機関は慎重な実施が必要であるとしている。

賃金上昇率以上の引き上げ

法定最低賃金制度は、成人(25歳以上)向けの「全国生活賃金」と、これを下回る年齢層に対する「全国最低賃金」として、年齢階層別に3種(21~24歳、18~20歳、16~17歳)およびアプレンティス(見習い訓練参加者)(注1)向け額の計5種類の最低賃金額で構成される(図表)。このうち全国生活賃金は、最低賃金の一層の引き上げをはかって、2016年に新設された25歳以上層向けの額だ。政府は導入に際して、2020年までに平均賃金(賃金統計における中央値)の6割の水準を達成することを目標に掲げ、これを受けて、最低賃金制度の諮問機関である低賃金委員会が毎年の改定額を政府に提言してきた。同委員会によれば、4月の改定により、この目標は達成されたとみられる。

改定額は、全国生活賃金が時間当たり8.72ポンド(対前年で51ペンス、6.2%増)21-24歳層向けが8.20ポンド(同50ペンス、6.5%増)、18-20歳層向け6.45ポンド(30ペンス、4.9%増)、16-17歳層向けが4.55ポンド(20ペンス、4.6%増)、アプレンティス向けが4.15ポンド(25ペンス、6.4%増)、など。物価や賃金の上昇率を上回る引き上げとなった(注2)

さらなる目標は平均賃金の3分の2

政府はさらに、平均賃金の3分の2の水準を新たな目標として、2024年までの達成を目指すとの方針を示している。低賃金委員会は、低賃金状況の終息という政府の目的自体には賛意を示しつつも、最低賃金額の設定には経済や雇用の状況などを考慮する必要があるとの立場から、目標値への段階的な引き上げのタイミングや、目標達成時期の遅延を判断する独立性と裁量を委員会に認めるよう求めていた。さらに、直近の新型コロナウイルスの感染拡大により不確実性が増していることを受けて、経済的損失が大きい場合には、早くもこうした提案の必要がありうる、との見方を示している。

なお、低賃金委員会は2024年時点の全国生活賃金の額について、10.69ポンド(上下30ペンスの幅あり)と予測している。今後4年間の改定の計画については、一般向けの意見聴取の後にまとめられる予定だ。

図表:最低賃金額の推移
図表:画像

参考資料

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