ワイン生産地での人手不足の深刻化

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  • 国別労働トピック:2019年5月

ロワール、ボルドー、ブルゴーニュといったワイン産地のワイナリーの人手不足が深刻化している。2015年頃から問題が指摘されはじめたが、2018年はさらに厳しい状況となった。収穫期に必要な短期の季節労働者だけでなく、長期の無期熟練労働者についても人手不足が進行している。

単純労働だけでなく熟練労働者も不足

ボルドーのジロンド県では、2018年の収穫期に2150人の季節労働者を募集したが、実際に確保できたのは半数に満たない約1000人のみだった(注1)。ロワールのワイナリーでは、5月~6月の6週間に7人から10人の季節労働者を求人したが、人員の確保が非常に困難だったという。

ワイナリーでは、ブドウ収穫期に多くの人手を必要とするが、ブドウ栽培を年間にわたって担う長期あるいは無期の雇用についても人手不足が問題となっている。ブドウ畑で様々な作業を行うトラクターの運転手など単純労働だけでなく、熟練した技術を要する作業も労働力不足が顕著であるという。熟練労働者が不足になっている上に、ブドウ栽培に関する職業訓練を受けようという若年労働者が少なくなっており、将来は人手不足がさらに深刻になるだろうという見方もある(注2)

機械化できない劣悪な労働条件

人手不足の要因は、複数指摘されている。まず、ワイナリーの就労は、雨や嵐の中での重労働や農薬・除草剤など健康を害する可能性のある化学物質に曝されること、それに見合わない低賃金など劣悪な労働条件が人手不足の理由である(注2参照)。

ブドウ栽培の作業の機械化も進んできているが、剪定や樹の引き抜き、収穫といった作業などは、依然として風雨にさらされる重労働を強いられている。無農薬有機栽培が普及したことによって、農薬被害の危険性は低くなったものの、手間のかかる作業が増えたことも就労環境を悪化させた一因である(注3)

天候によって仕事量が左右され、収入が不安定であること、ブドウ収穫に係る労働契約の社会保険料免除が2014年末で廃止されたことで、手取り賃金が減ったことが求職者を減らす要因となっている(注4)

最近のフランス経済の好景気によって、他の産業、他の職種に人材が奪われているという側面も指摘されている(注5)。大学の授業開始時期が以前よりも早くなっており、学生を季節労働者として雇用することも困難になっている(注6)。ワイナリーが季節労働者に提供すべき住居の基準が厳格化されたことによって、住居を提供できるワイナリーが減っていることも要因として挙がっている。ホテルやレストラン業でも季節労働者の人手不足は続いているが、自宅からより近く、より楽な仕事を求める傾向があり、ワイナリーでの就労は避けられる傾向にある(注1参照)。

外国人労働者の受け入れによる問題も懸念

人手不足を補うため、EU諸国からの労働者派遣を手がける企業に手数料を支払って求人するワイナリーもある。ロワール地方において手作業でのブドウの収穫を行うワイナリーのオーナーは、ルーマニアを中心として外国人労働者を雇用している。だが、外国人労働者を受け入れることは、言語や習慣の違い等によって問題が起こることが懸念されている(注7)

(ウェブサイト最終閲覧:2019年5月13日)

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