法定最低賃金(SMIC)と活動手当の引上げ
―黄色いベスト運動への対応
フランスの法定最低賃金(SMIC)が2019年1月から時給10.03ユーロに引上げられた(注1)。併せて、低所得の就業者(自営を含む)を対象とする活動手当(La prime d'activité)も増額された。
時給10.03ユーロに引上げ
フランスの法定最低賃金(SMIC)の引上げが12月19日に公表され、2019年1月から10.03ユーロとなり、前年の9.88ユーロから1.52%の増額となった。図表1は2001年以降の最賃額と引上げ率の推移である(注2)。最近10年間はほぼ1%前後の小幅は引き上げ率になっている。
図表1:最賃額と引上げ割合の推移(2001年~2018年)
出所:国立統計経済研究所資料(INSEE, Salaire minimum interprofessionnel de croissance (Smic) en 2019, Données annuelles de 1980 à 2019)より作成。
最賃水準で就労する者の割合は雇用労働者全体の10~11%である。2018年1月の時点で、最賃水準で就労する者が198万人おり、民間部門の雇用労働者の11.5%に相当する(注3)。2017年1月の引上げ時には165万人で10.6%だった。ここ数年、この割合はおおよそ10%~16%の間で推移している(図表2参照)。
図表2:最賃水準就労者の割合の推移(1987年~2018年)
出所:労働省調査・研究・統計推進局(DARES)資料より作成。
低所得者向け手当の増額
今回の最賃引上げに際して、低所得の就労者向けに政府から支給されている活動手当の支給も引き上げられた(注4)。これは、11月下旬から全国的な広がりをみせた燃料価格高騰とディーゼル燃料課税強化に対する抗議行動(黄色いベスト(gilets jaunes)運動)への対応措置としてとられたものである。活動手当は、世帯構成や収入額に応じて支給されている。平均で月額158ユーロ。子供がいない独身世帯で収入が月額1550ユーロの場合の支給月額は133ユーロであり、2019年1月から月額100ユーロ増額されることになった(注5)。
注
- SMICとは、Salaire minimum interprofessionnel de croissance(「業種間一律スライド制最低賃金)の略称。 政府発表「Relèvement du salaire minimum de croissance, Compte rendu du Conseil des ministres du 19 décembre 2018」参照。(本文へ)
- フランスの最低賃金の引上げは物価上昇に基づいて決定されるため、物価上昇が著しい場合には年に複数回引上げられる。改定率は物価と賃金の変動などに基づき決定される。ここでの物価とは、消費者物価指数(indice des prix a la consommation)のことだが、タバコの価格の変動は除かれている。(本文へ)
- Alban GUICHARD et Christine PINEL (2018) «La revalorisation du Smic au 1er janvier 2018», DARES résultats, décembre 2018, N°052.(本文へ)
- 国別労働トピック「フランス」2016年9月「活動手当制度の創設による若年低賃金労働者の支援」(本文へ)
- 労働省ウェブサイト(Mesures d’urgence économiques et sociales, Revalorisation de la Prime d’activité)参照。
ちなみに、フルタイムで週35時間就労した場合の月額最賃は1522ユーロである。(本文へ)
(ウェブサイト最終閲覧:2019年5月13日)
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=122.68円(2019年5月16日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
2019年5月 フランスの記事一覧
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