父親の育児休業取得率、34.2%
連邦統計局が6月21日に発表した資料によると、2014年生まれの子の父親が育児休業を取得した割合は34.2%だった。前年比で2.2ポイント増加しており、3人に1人以上の父親が育児休業を取得したことになる。
最高はザクセン州の44.2%
2014年生まれの子に対する父親の育休取得率を州別に見ると、最も高かった州はザクセン州の44.2%、次いでバイエルン州の41.7%、テューリンゲン州の40.5%が続く。逆に最も低かったのはザールランド州の23.0%だった(表1)。
なお、同じ子らに対する母親の育休取得率は96%だった。
連邦州・都市州 | 2014年生まれの子 | 父親の両親手当取得 | 昨年比(%) | |
---|---|---|---|---|
人数 | 認可件数 | 割合(%) | ||
バーデン=ヴェルテンベルク州 | 95,632 | 36,938 | 38.6 | 2.3 |
バイエルン州 | 113,935 | 47,557 | 41.7 | 1.8 |
ベルリン | 37,368 | 14,028 | 37.5 | 1.9 |
ブランデンブルク州 | 19,339 | 6,988 | 36.1 | 1.3 |
ブレーメン州 | 6,211 | 1,621 | 26.1 | 1.3 |
ハンブルク | 19,039 | 7,106 | 37.3 | 2.1 |
ヘッセン州 | 54,631 | 17,763 | 32.5 | 2.3 |
メクレンブルク=フォアポンメルン州 | 12,830 | 3,548 | 27.7 | 1.5 |
ニーダーザクセン州 | 66,406 | 21,183 | 31.9 | 2.9 |
ノルトライン=ヴェストファーレン州 | 155,102 | 41,573 | 26.8 | 1.7 |
ラインラント=プファルツ州 | 33,427 | 9,812 | 29.4 | 2.8 |
ザールラント州 | 7,328 | 1,685 | 23.0 | 2.9 |
ザクセン州 | 35,935 | 15,875 | 44.2 | 3.2 |
ザクセン=アンハルト州 | 17,064 | 4,753 | 27.9 | 2.6 |
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州 | 22,793 | 6,702 | 29.4 | 2.7 |
テューリンゲン州 | 17,887 | 7,251 | 40.5 | 3.6 |
ドイツ全土 | 714,927 | 244,383 | 34.2 | 2.2 |
- 出所: 連邦統計局(2016年)
2007年「両親手当」導入
ドイツでは2007年に「両親手当(注1)」を導入し、それ以前は3%に過ぎなかった男性の育児休業取得率が、2009年には23.6%まで上昇した。「両親手当」は、片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給される。もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。この追加の2カ月分は「パートナー月」と呼ばれ、もう1人の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツの場合、受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が育児休業を取得して両親手当を受給するケースが多い。実際、最新の統計では、両親手当の受給期間が2カ月だった父親の割合は79%だった。
2015年、さらに柔軟な制度を導入
このように父親の育休期間は大半が2カ月間と短いものの、「両親手当」の導入によって男性の育休取得率は大幅に増加し、父親の育児参加が進んでいる。直近の2015年7月1日には、従来の制度の柔軟性をさらに高めようとする関連改正法が施行され、「両親手当プラス」等が導入された。
従来の制度は、「両親手当受給期間中に早期に職場復帰をして時短勤務(注2)をした場合、そこで得た収入の分だけの両親手当の受給額が減る」仕組みだった。新しく導入された「両親手当プラス」は、時短勤務で両親手当の受け取り額が減っても、受給期間がその分延長されることで、早期の職場復帰を希望する親を支援する仕組みとなっている。
また、育休の取得方法も大幅な柔軟化が図られた。従来から、両親は子が3歳になるまで最長3年間の育児休暇を取得することができた。そして、使用者の同意を得れば、最後の1年分を子が8歳になるまでの期間に繰延べ可能だった。法改正後は、最長3年のうち、子が満3歳から8歳までの間に最後の2年分の育休取得(無給)が可能になり、使用者の同意も不要となった。例えば、子どもが1歳になるまで親が育児休暇を取得し、仕事に復帰するとする。新たな制度のもとでは、この親は子どもが満3歳から4歳まで1年間の育児休暇を再度取得し、小学校入学時にさらに1年間育児休暇を再々取得するなど、合計3回に分けて取得することも可能である。なお、育児休業の取得に際して、親は使用者の同意を得る必要はないが、13週間前までに育児休業の予定を使用者に通知することが必要である。
多くが政策を好意的に評価
連邦家族省(BMFSFJ)の委託を受けて、ドイツの家族政策に関する調査を行ったアレンスバッハ研究所の報告によると、調査対象者の3分の2に当たる67%が、さらに未成年の子を持つ両親に限ると4分の3に当たる73%が、2015年に導入された新しい政策を「とても良い」と好意的に評価している。
シュヴェーズィヒ連邦家族相はこれらの結果を受けて、「最近の母親と父親は、双方が“育児とキャリア”へ関与するライフスタイルを好む。昨年導入した新たな家族政策は、こうした仕事と家族に関する責任を分担しようとする両親を支援するものである。導入から1年が経過しようとしているが、現在までに多くの両親がこの新制度を活用し、ますます多くの父親が育児に参加していることを嬉しく思う」と述べ、政策の成果を強調した。
注
- 「両親手当(Elterngeld)」は、育児のために休業もしくは部分休業(週30時間以内の時短勤務も受給可能)をする親の所得損失分の67%を補填する制度で2007年に導入された。それ以前は定額制の「育児手当(Erziehungsgeld)」があったが、支給額が原則300ユーロ(月額)と少額のため、多くの家族にとって効果的な所得保障となり得ず、そのため一家の稼ぎ手であることが多い父親の育休取得の困難さなどが指摘されていた。「両親手当」はこのような課題を解決し、子育て期の働く親を支援する目的で導入された。(本文へ)
- 育児のために労働者(親)が従来の勤務時間より短い勤務時間で働くこと。(本文へ)
参考資料
- Statistisches Bundesamt Deutschland (Pressemitteilung Nr. 212 vom 21.06.2016), BMFSFJ (Pressemitteilung Nr. 061/2016) ほか
関連資料
- 海外労働情報2014年10月「父親の育児参加を促す新しい家族政策」
- 海外労働情報2011年7月「父親の育児休業取得率、23.6%」
- 海外労働情報2008年7月「「両親手当」の導入により父親の育児休業取得が増加」
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=114.34円(2016年8月2日現在 みずほ銀行ウェブサイト
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関連情報
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