「両親手当」の導入により父親の育児休業取得が増加

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  • 国別労働トピック:2008年7月

出生率の低下に歯止めをかける目的で、2007年1月に政府が連邦助成金として「両親手当」を導入して以降、1年半が経過した。ドイツ家族省は6月11日、2008年第一四半期の両親手当認可に占める父親の割合が5分の1に達したと発表。これを受けてフォン・デア・ライエン家族相は、「父親による育児参加の拡大を象徴するもの」などと語っており、同制度は父親の育児休業取得の突破口を開いたといえるかもしれない。とはいっても、父親が取得したのは最短期間の2カ月が大半で、本格化に向けてはまだ時間がかかりそうだ。

父親の申請が増加

両親手当は、育児休業を取得する一方の親に対し最長12カ月払われる。両親が育児休業を取得する場合に、この手当はさらに2カ月加算され、合計で14カ月支給される。この場合、申請に基づき、父親7カ月、母親7カ月などの支給方法も可能としている。ひとり親のケースでは14カ月支給。支給額は月額1800ユーロを上限に、受給者の直近12カ月の平均純所得の67%と定められている。なお、この制度は、就業していない親にも適用しているが、支給額は就業者に比べずっと低額で、月額300ユーロ(12カ月間)となる。

連邦統計局は6月11日、新制度導入後の2007年の新生児全体に対する同手当の認可状況を、(1)2007年1月~2008年3月までの実績、(2)2008年第一四半期実績――に分けて公表した(表1)。2008年第一四半期の実績によれば、父親への認可は全体の18.5%。とりわけドイツ東部の父親による申請が顕著で、全州で認可割合が20%を上回った。

これを受けてフォン・デア・ライエン家族相は、「両親手当受給者に占める父親の割合が18.5%に及んだのは、ドイツに家庭革命が起こっていることの象徴だ。より多くの父親が子供たちと過ごす時間を求めている。ドイツの父親は家庭参加を望んでいる」などと同制度による成果を強調した。

だが、2008年第一四半期における父親への認可比率の上昇は、父親の申請数の増加に加え、2007年生まれの新生児に対する母親の申請数が、前年に既に認可済みであるために減少したことにも起因する。2007年1月~2008年3月実績によれば、全体で約72万件に及んだ両親手当の認可のうち父親の割合は12.1%に過ぎない。また、その内訳をみても、出産前に就業していた母親の85%が12カ月間の手当認可を受けたのに対し、同じく子供の誕生前に就業していた父親のうち12カ月間の手当認可を得たのは10人に1人にとどまり、2カ月間のみの手当を選択した割合が3分の2を占めた。無業の両親についてみると、12カ月間の手当認可を受けた母親の割合は89%、父親では12カ月間が50%、2カ月間が30%であった。なお、手当の認可を受けた母親に占める出産前就業者の割合は52.5%、父親については77%であった。

出生率、若干上昇

両親手当はそもそも、連立政権率いるアンゲラ・メルケル首相が、イタリアやスペインと並んで欧州諸国中最も低水準であるドイツの出生率の改善を目指して導入したものだ。メルケル首相は、少子化を同国の喫緊の課題に位置づけ、仕事と育児の両立支援を誓約していた。父親側の育児休業取得を推進する制度設計の狙いは、両親による育児責任分担を可能とし、女性の職場復帰を促し、出産がキャリアパスの弊害になるといった意識を緩和することにあった。

家族省によると、両親手当制度がスタートした2007年の出生率は1.4と過去17年間で最高値となったものの、依然として上昇幅は僅かにとどまった。これを受けて政府は6月12日、一層の出生率の改善を目指し、児童手当及び児童扶養控除を引き上げることにより家族の経済的負担を軽減する措置を導入する方針を明らかにしている。

2008年6月11日連邦統計局新聞発表資料

出所

  • 連邦統計局新聞発表資料(2008年6月11日)
  • DEUTSCHE WELLE, 12.06.2008

参考

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