父親の育児休業取得率、23.6%
連邦統計局の5月19日発表によると、育児休業を取得して「両親手当」を受給した父親は、2009年の場合、15.7万人で、新生児数の66.5万人に対する受給率は23.6%に当たる。受給者の大半はいわゆる「パートナー月」に該当する2カ月のみの短期支給。母親の「両親手当」取得率は96%で、そのうち9割は12カ月間の受給だった。
育休期間が2カ月の父親は75%
両親手当(Elterngeld)は、育児のために休業もしくは部分休業(週30時間以内の時短勤務も受給可能)をする親の所得損失分の67%(注1)を補填する制度で2007年に導入された。それ以前には定額制の「育児手当(Erziehungsgeld)」があったが、支給額が原則300ユーロ(月額)と少額のため多くの家族にとって効果的な所得保障となり得ず、そのため一家の稼ぎ手であることが多い父親の育休取得の困難さなどが指摘されていた。両親手当はこのような課題を解決し、子育て期の働く親を支援する目的で導入された。
両親手当は、どちらか片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給されるが、もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。この追加の2カ月分は「パートナー月(Partnermonate)」と呼ばれ、二人目の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツの場合、受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が両親手当を受給するケースが多い。実際、2009年に受給期間が2カ月だった父親の割合は75%を占めたが、この割合は前年の72%より若干増加している。なお、ひとり親の場合や片方の親が病気等で育児ができない場合は、最初から最大14カ月間支給される。両親が同時に取得する場合は各々最大7カ月間、また、毎月支給額を半額にした場合、期間が2倍に延長される。
このように父親の育休期間は大半が2カ月間と短いものの、同制度の導入によって2007年以前には3%に過ぎなかった男性の育休取得率が大幅に増加し、父親の育児参加が進んだ。また、連邦家族省(BMFSFJ)が研究機関に委託して家族政策に関する国民の意識や評価を調査した「家族モニター2010(Familienmonitor 2010)」によると、調査対象者の73%が2007年に導入された両親手当を好意的に評価している。
最高はザクセン州の30.7%
表1は、2009年1月~12 月の1年間に生まれた新生児に対する両親手当の申請状況を示している。それによると、父親の両親手当取得率が最も高かった州はザクセン州の30.7%で、次いでバイエルン州の30.2%、ベルリン州の29.6%と続いた。逆に最も低かったのはザールランド州の14.0%だった。また、両親手当の平均受給額(当初月)は、父親が1171ユーロと、母親の861ユーロより約36%高かった。このほか父親の平均受給額が2008年から40ユーロ増加(+3.5%)したのに対し、母親は17ユーロの増加(+2.0%)にとどまった。
連邦州・都市州 | 新生児数合計 | 父親の 両親手当取得 |
両親手当の平均額 (当初月、ユーロ) |
|||
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認可件数 | 割合 | 両親とも | 父親 | 母親 | ||
バーデン= ヴェルテンベルク州 |
89678 | 21593 | 24.1 | 970 | 1248 | 872 |
バイエルン州 | 103710 | 31372 | 30.2 | 988 | 1236 | 883 |
ベルリン | 32104 | 9516 | 29.6 | 984 | 1158 | 907 |
ブランデンブルク州 | 18537 | 4994 | 26.9 | 872 | 1007 | 825 |
ブレーメン州 | 5481 | 1002 | 18.3 | 906 | 1102 | 843 |
ハンブルク | 16779 | 4476 | 26.7 | 1038 | 1218 | 969 |
ヘッセン州 | 50744 | 11589 | 22.8 | 992 | 1227 | 912 |
メクレンブルク= フォアポンメルン州 |
13014 | 3000 | 23.1 | 825 | 988 | 774 |
ニーダーザクセン州 | 62228 | 13187 | 21.2 | 899 | 1153 | 820 |
ノルトライン= ヴェストファーレン州 |
145029 | 26271 | 18.1 | 956 | 1198 | 887 |
ラインラント= プファルツ州 |
30881 | 6072 | 19.7 | 924 | 1179 | 848 |
ザールラント州 | 6927 | 967 | 14.0 | 908 | 1253 | 833 |
ザクセン州 | 34 093 | 10475 | 30.7 | 838 | 973 | 783 |
ザクセン= アンハルト州 |
17144 | 3241 | 18.9 | 814 | 951 | 775 |
シュレースヴィヒ= ホルシュタイン州 |
21923 | 4306 | 19.6 | 873 | 1145 | 800 |
テューリンゲン州 | 16854 | 4749 | 28.2 | 820 | 960 | 768 |
ドイツ全土 | 665126 | 156810 | 23.6 | 941 | 1171 | 861 |
出所: 連邦統計局(2011年5月)
家族相、両親手当の成果を強調
シュレーダー連邦家族相は「23.6%という父親の育休取得率は両親手当の効果の現れで、より多くの父親が育児に参加するようになってきている」として、同制度の成果を強調した。しかし、連立相手の自由民主党(FDP)からは多額の財源を必要とする両親手当の費用対効果を疑問視する声も上がっている。
2009年の新生児数(66.5万人)は、統計を取り始めた1946年以降最低で、最多だった1964年の約半分。合計特殊出生率も前年(2008年)の1.38から1.36に低下した。連邦統計局ではこの理由を出産可能年齢(15歳~49歳)の女性の人口が減少したためとしており、このまま少子化が続けば今後50年間のうちに約1700万人(人口の約2割強に該当)の人口が減少すると予測している。出生率低下の発表を受けてメルケル首相は、ドイツ政府は今後両親手当を含め、一層の積極的な少子化対策を実施する必要があるとしている。
注
- 両親手当(Elterngeld)は、2007年1月1日に施行された「連邦両親手当及び両親休暇法(Bundeselterngeld- und Elternzeitgesetz (BEEG))」に基づき、子どもの出生前1年間の平均月額所得の67%を補填する制度で、上限支給額は月額1800ユーロである。最低支給額は月額300ユーロで、子どもの出生前に就労による収入がなかった親に対して支給される。また、年間課税所得が1人25万ユーロ、もしくは夫婦の年間課税所得の合計が50万ユーロを超える高額所得者は同手当の請求ができない。なお、2011年1月から、新たに2011年予算関連法(HBeglG 2011)に基づき、平均月額所得が1200ユーロを超えた場合、超過2ユーロにつき0.1%ずつの下限65%まで補填率が引き下げられた。また、同法に基づき、失業給付II、社会扶助、および児童加算の受給者に対しては、給付算定時に両親手当を追加的な収入として考慮することになった。(それまでは、上記の給付と両親手当は別個のものとして対象者に支給されていた)。
参考資料
- Statistisches Bundesamt Deutschland (Press release No. 195 dated 05/19/2011)、Deutsche Welle (03.09.2010、12.11.2010)、BMFSFJ (Fr 17.12.2010 )Das Elterngeld
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=116.30円(※みずほ銀行
ホームページ2011年6月29日現在)
2011年7月 ドイツの記事一覧
- 労働協約で年休30日、手当は最大2058ユーロ ―WSI 調査
- 父親の育児休業取得率、23.6%
関連情報
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