ラジャスタン州労働関連法の改正
―中央政府が承認

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2014年12月

インドにおける労働分野の行政は、連邦政府と州政府の共同管轄事項(Concurrent List)となっている。連邦法が基本となるが、州法で独自の特別法を設けることもできる。企業誘致に積極的であり、日系企業も多く進出しているラジャスタン州では労働争議法や工場法などの改正が進んでいる。2014年7月に州政府議会で法案が可決され、施行のために必要となる中央政府の承認を求めていたが、11月7日、プラナブ・ムカジー大統領はこの申請を承認した。

進みはじめた労働法制改革

インドでは1940年代に制定された労働者保護規制が今もなお残っている。1980年代以降、主に産業界から法改正を求める声が上がっていたが、ほとんど実現されてこなかった。1990年代に経済改革が行われたことに伴って、労働者保護規制によってインド労働市場が企業競争の妨げになっているとの考えが大きくなり、2000年代以降には労働法制の改革への関心が強まっていた。2002年には第2次全国労働委員会(SNCL:Second National Commission of Labour)によって労働法改革の具体的な取り組みが勧告(注1)されたが、改革は前マンモハン・シン政権まで、ほとんど手つかずのままになっていた(注2)。そのような中、インド西北部に位置するラジャスタン州議会では13年12月に行われた選挙で、インド人民党(BJP)(注3)が199議席中162議席を占めており、第二党の国民会議派の21議席を圧倒していることもあって、他の州に先立って州法レベルの労働法制の改革が進んでいる。

解雇規制の緩和と工場法適用対象を狭める改正

今回改正された主な法律は、1947年労働争議法(the Industrial Disputes Act, 1947) 、1948年工場法(the Factories Act, 1948)、1970年請負労働(規制及び禁止)法(the Contract Labor (Regulation & Abolition) Act ,1970)である。いずれも適用対象の基準となる従業員規模が拡大されることによって、適用対象となる事業所が狭められ、規制が緩和されることになる。使用者にとっては、企業経営をしやすくなる改正である。

インドでは、経済的理由による解雇、つまり人員整理の場合の規制があり、年間平均100人以上雇用する事業所については、労働当局等による認可が必要であり、事業所閉鎖の場合には90日前に認可を得ることが必要である(注4)。1947年労働争議法の第25K節に記された従業員規模100人以上という規定が(注5)、今回のラジャスタン州の法改正では、従業員300人以上に改正された(注6)。また、労働組合登録に必要な最低労働者数は従来、企業内の15%とされていた(注7)が、この割合が30%に引き上げられた(注8)

現行の1948年工場法の適用対象は、従業員規模10人以上、動力を使わない場合は20人以上の労働者を雇用している事業所となっている(注9)。今回のラジャスタン州での法改正では、従業員規模20人以上、動力を使わない場合は40人以上の労働者を雇用している事業所が適用対象に改正された(注10)

さらに、1970年請負労働 (規制及び禁止)法は、請負労働を活用できる範囲を限定することを目的としているが、現行法では20人以上の請負労働者を雇用する事業所と、20人以上の労働者を雇用する請負業者に適用になる)(注11)。改正法では、それぞれ50人以上が適用対象となり、50人未満まで制限なく請負労働を活用できるようになった(注12)

法改正による影響と効果

今回の改正に対する業界関係者の評価は概ね高い。とりわけインドの人材派遣連盟(Indian Staffing Federation)(注13)の上級副会長・共同設立者のリトゥパルマ・チャカルボルティ(Rituparna Chakarborty)氏は、この改正は他の州での法改正を促すきっかけになるだろうとしている。インド国内の各州知事がこの問題について議論するようになれば、雇用創出につながる可能性があると評価する。ラジャスタン州のヴァスンダラ・ラージェー(Vasundhara Raje)首相は150万人雇用創出を見込んでいる(注14)。また、中央政府でも労働改革が進められている。労働基準に関する分野の改革は具体的な動きはないが、職業訓練を強化するための労働改革に進展が見られる。モディ首相による改革によって中央政府においても労働関係法が改正されれば製造業を中心とする雇用が創出されると見られている(注15)

だが、労働組合側の見方としては、ラジャスタン州での労働法改正は、労働者を傷つける改革でしかないとする。インド労働組合(Bharatiya Mazdoor Sangh:BMS)の同州事務局長(state general secretary)のラジベバリ・シャルマ(Rajbehari Sharma)氏によれば、現行の労働法は貧しい労働者を保護することを目的としていたが、政府は企業側にたって政策を行っているという。現在行われている政策立案の方向性が継続されて、従来の労働者保護の政策がなくなれば、インドは請負労働者で溢れかえり、正規労働者がほとんどいなくなってしまうと主張する(注15)

ラジャスタン州へ進出している日系企業は2013年10月現在で79社 (拠点)とされている(注16)。フェーズIIIが日系企業専用として開発されたニムラナ工業団地をはじめ、14年2月に自動車メーカーのホンダが四輪車完成車工場で生産を開始したタプカラ工業団地などがラジャスタン州にはある(注17)

  1. Acts of Rajasthan新しいウィンドウ
  2. THE INDUSTRIAL DISPUTES ACT, 1947(PDF:164.6KB)新しいウィンドウ
  3. 工場法(現行法、3ページ参照)(PDF:179.4KB)新しいウィンドウ
  4. 請負契約法(現行法)(125.6 KB)新しいウィンドウ

参考資料

(ホームページ最終閲覧:2014年12月11日)

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