開催報告(インド、要約)/第1回海外委託調査員連絡会議・国別報告会
雇用流動化時代における労使の課題
(2003年11月19日)

報告者

ヴェンカタ・ラトナム(Professor C.S. Venkata Ratnam)
国際経営研究所 教授 (Professor, International Management Institute)

要約

労働法の改正

雇用に関する特別グループは1947年労働争議法(IDA)の改正案を不必要であるとし、労働改革はゆっくり進めるよう政府に勧告していた。同グループは、IDAおよび契約労働法(CLA)への改正は長期的視野に立って展開されるべきであり、国内の当面の雇用のために行うものではないと主張していた。さらに、適切な社会保障が整っていないところにおいて労働法をオーバーホールすると、臨時雇用者の増大につながりかねない点も強調していた。

ここでさらに想起されるのは、第2次国家労働委員会(SNCL)の報告書が世に出る前にすでに、連立内閣は1000人以下の労働者を雇用する企業が政府の許可が無くても操業停止または従業員削減を行えるようにするIDA改正を基本的に決定していたことである。同時に、2002年3月には上院において、内閣の立場は「柔軟」であることも明確にした。

こうした背景において、第2次国家労働委員会(SNCL)の報告が2002年9月7日に公表されるにおよび、組合の幻滅はさらに増すばかりだった(付属書類の重要点を参照)。

労働組合は概して、「労働法改革」を正当化するまことしやかな主張――一部の意見によれば、「第2世代改革」のもとでの「事業撤退政策(exit policy)」の新用語に過ぎない――に異議を唱えてきた。実際組合は、ほとんど実体化されないままになっている以下のような主張の受入を拒んでいる。

  1. 労働法が硬直的であるため、成長を妨げている。
  2. 労働法に柔軟性があればより多くの雇用創出につながる。
  3. より多くの外国直接投資を引き寄せるには柔軟性が必要とされる。
  4. 労働法は雇用者にとってあまりに煩わしく厄介である。

労働組合はさらに、現在「労働法改革」が推進されているが、それは以下のような新戦略を採用しやすくするためだけのものではないかと感じている――

  1. リエンジニアリング(国営事業の雇用放出による経費削減を目指した施策)
  2. 要員のリストラ
  3. 早期退職
  4. 不熟練要員を熟練要員(ハイテク系が多い)に置換
  5. 臨時雇用化などによる柔軟な労働利用取決めの探求。

「ただしこれは、ある種の社会的・経済的な正当性事由を付けて提示されている」と、あるベテラン労働組合リーダーは主張する。

パートタイム、臨時、派遣労働者の増加に対する評価

これに関しては、正規雇用が国内総雇用の10分の1に満たない事実を強調しておくのがよいだろう。リストラ圧力により、正規雇用の割合は、10年前の9.6%にくらべて今や8.9%しかないことが示されている。

過去5年間における雇用者の減少は、工業ユニットの閉鎖と一連の希望退職制度(VRS)の深刻な影響を現実に反映している。

統計によると、さまざまな公共部門の事業だけでも1999~2000年に9万人近い被雇用者がVRSを利用し、2001~02年には120の公共部門ユニットでさらに5万4,000人の被雇用者が利用したことが明らかになっている。

主要企業における雇用喪失に関しては、金属工業が大きな影響を受けた。

それでも、サービス部門の雇用は過去4年間に6.3%上昇したと報告されている。

雇用者が逃げ道を探し求めた結果、自由および契約労働者の利用拡大につながって「解雇通知の時代(Age of the Pink Slip)」の到来が告げられ、そのために正規雇用が急落している。

パート等の組織化の状況

上記の傾向が示すとおり、労働組合は、パートタイム、臨時、または派遣労働者の組織化に際し骨の折れる仕事が待っていることを十分意識している。しかしながら、この方向での組合の努力がどれだけ成功したかを測る尺度は、さまざまな要因――とりわけ、政府および雇用者が三者協議および社会対話を重視し、雇用者のみならず労働者代表とも定期会合をもっているか――によって異なる。

実際、インド労働者組合(Bharatiya Mazdoor Sangh: BMS)のハスバイ・デーブ全国会長は、政府の設置するあらゆる委員会、タスクフォース、または諮問委員会において、労働組合はあちこちでメンバーから外されていると嘆いている。

ここでもまた、こうした委員会による勧告の内容は、労働者の利益に反したものになっている。

やはり、失業者はいつでも割安な賃金で働く用意ができており、それは確実に組合の交渉力に影響するため、労働組合は失業の理由を大々的に擁護しなければならないと感じている。「失業者数の増加は労働組合運動に有害だ」とあるベテラン労働組合員は警告する。「我われが未組織層で始める運動は、強化もされる。この展望を心に留めて、我われは労働組合の行動を全国に進展させていく」と、彼は断言している。

以上のようなところが、労働組合――現在までのところ、さまざまなカテゴリーの労働者、とりわけ未組織またはインフォーマル部門の労働者の組織化にほとんど成果をあげられていない――の反応である。将来彼らは間違いなく、より強力な活性化と統一行動をとらなければならないだろう。

付属書類

第2次国家労働委員会(SNCL)

勧告

  • あらゆる雇用規模の事業体におけるレイオフ、人員整理に関して事前の許可は必要ない。
  • あらゆる産業における労働者に対する賃金率決定について、法定その他の賃金委員会は必要ない。
  • 年間10日の制限公休日以外に、公休日を国定休日3日プラス2日に制限する。
  • 契約労働は中核的生産/サービス活動に対しては雇ってはならない。ただし、散発的な季節需要については、雇用者は中核的生産/サービス活動に臨時労働者を雇うことができる。
  • 「唯一の交渉機関」は、会員率66%以上の労働組合とする。
  • 20人以上の従業員を雇う組織に対する苦情処理委員会を設置する。
  • 雇用の創出ならびに保護および、貧困、組織化の欠如、恣意的解雇、最低賃金拒否からの保護を確保するために、未組織部門の労働者に対する政策の枠組みを考案し、法律の制定を導き出す。
  • 大きな力を持った国家社会保障機関――なるべくなら首相を長として――を創設する。
  • 年少者労働に対する「指示的法律」を制定し、現行の年少者労働(規制および禁止)法に置き換える。
  • 国定最低賃金に対する賛否を調査し、最低賃金の決定について適切な勧告を行うための専門家委員会を設置する。

(出典――ニュー・インディアン・エクスプレス、2002年9月8日)