総選挙の評価「イタリアはユーロから脱落のおそれ」
「10年以内に、債務返済不能とユーロから脱落のおそれ」。先の総選挙におけるロマーノ・プローディの勝利後、フィナンシャル・タイムス(FT)紙に掲載された記事は、極めて悲観的であった。FT紙は、「ロマーノ・プローディ率いる中道左派連合の危うい勝利は、イタリアが2015年以降もユーロ圏にとどまる可能性の観点からみて、想像しうる最悪の結果である」「世界の投資家は、プローディ政権が続く間、イタリアのユーロ参加に関して投機的な賭けをしなければならない。この賭けとは、政府がユーロ脱落を迫られるような経済状態になりうることに対する賭けである」と指摘した。
この懐疑に対して、欧州委員会のスポークスマンは、「ユーロは現実であり、これからもそうあり続けるだろう。イタリアが、ユーロから脱落することはありえない」と回答した。
しかし、FT紙は、「イタリアの経済が、深刻な状態にあることは誰もが知っている。イタリアの場合、雇用ポストの増加は顕著であるが、低い経済成長率に悩まされている。イタリアの問題は、通貨同盟に身をおく準備ができていないことにある」と主張する。
FT紙は、諸問題と提案された解決策との間の深刻な混乱について、「1999年のユーロ誕生以来、イタリアでは通貨交換率が重大な影響を及ぼしている。単位労働コストはドイツに比べ20%も増加した。また、ドイツの賃金が需要に対して反発したのに対し、イタリアの賃金は年3%の割合で増加し続けている。イタリアはまた、多くの経済部門で価格競争の問題も抱えている。経済改革は、賃金交渉と財やサービスの市場における規制に集中すべきである」「穏健派、社会主義者および共産主義者による小政党の連合が、上院でかろうじて多数派を維持している状況から、中道左派連合が十分な計画を達成できないおそれがある。かりにイタリアがマクロ経済における競争力を失い続けるとすれば、大衆運動によって、ユーロからの離脱を図る動きが出てくる可能性もある。我々は、思いもよらないことが起こる可能性を想像し、将来のイタリア政府がリラへの復帰を選択することも想定しておかねばならない。現在GDPの106.5%にも達するイタリアの政府債務残高に、何が起こりうるだろうか。イタリアが、投資家に対する債務を完全に返済することができないことは明白である。こうした負債は、投資家にとって不利な交換率でリラに転換されるか、あるいは公然と支払い不能が宣言されることさえあるかもしれない」と指摘する。
FT紙は、さらに「投資家は、プローディ政権が続くとして、今後10年間も同様に楽観的でいられるだろうか?イタリアのリスクプレミアムが今後5年間で上昇する可能性も十分ある。また、投資家がイタリアの金融破産のリスクに備える結果、スワップが増加することも予測できる。欧州通貨制度からイギリスを離脱させたように、金融取引を通じて、ある国が通貨統合から離脱するように金融市場が要求することはできない。しかし、投資家は、通貨同盟内で、ある国を困難な立場に追いやることができる」「今日のイタリアと1992年のイギリスとは線で繋がっているのである。当時、欧州通貨制度に関するイギリスの負担が重かったように、プローディにとってはユーロが負担となる。1992年のイギリスは、経済的にも政治的にも半固定の通貨交換制度に対応する準備ができていなかった。イタリアのユーロへの参加は、同じく危うい土台に立脚している」と警告している。
出所
- Corriere della Sera紙(2006年4月18日付)
2006年6月 イタリアの記事一覧
- ビアジ改革により不安定雇用は増加せず
- ビアジ法に関して再び左派が対立
- 総選挙の評価「イタリアはユーロから脱落のおそれ」
関連情報
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