ビアジ改革により不安定雇用は増加せず

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

イタリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年6月

ビアジ法(労働市場改革法)を、不安定雇用を増加させるものとして批判する者は、その標的を誤っている。2001年から2005年の間に、雇用全体に占める有期契約の割合は、12%から14%に増加したにすぎない。これは、1990年代の増加ペースと同じである。おそらく、不安定雇用に長期間携わった者の数は増えているだろう。労働者間の生産性格差は広がり、最弱者層が標準的な雇用から追いやられるという罠にはまっている恐れはある。

ある政府高官は、イタリアで新たに創出された150万の労働ポストは、ビアジ改革の功績であると主張している。他方、プローディ新政権のスポークスマンは、ビアジ改革が不安定雇用増加の主要要因であると述べている。しかし、データに基づいて判断するならば、この2つの見解のいずれも鵜呑みにするわけにはいかない。

ISTAT(国立統計局)のデータからは次の2つのことが分かる。第1は、1998年を境にイタリアで始まった雇用の順調な増加である。イタリアの雇用増は、2001年には2.6%増まで達した。2002年から2005年の間も、それに比べて低調とはいえ、雇用の増加自体は続いている。かりに、時期が一致していることと法律による成果との因果関係を肯定しうるならば、雇用増加の成果は、2003年のビアジ法よりは、1997年の「トレウ法」に帰すべきことになろう。データから導かれる第2の点は、雇用全体に対する有期雇用の割合が12%から14%に増加したことである。ただし、これは1990年代の増加ペースと同じであり、最近の立法には関連しない。CISL(イタリア労働者組合同盟)およびUIL(イタリア労働連合)との合意によって実施された2001年の改革(CGIL(イタリア労働総同盟)は拒否)は、ベルルスコーニ政府が当時予定した有期契約の自由化という法的効果を何ら生じさせなかった。

最近の立法により、連携的継続的協働労働は「プロジェクト労働」(注1)という新しい名称に変更されたが、この法律は、こうした労働形態の自由化を規定するものではなく、むしろこれを厳格に規制するものである。いずれにせよ、このような不安定な雇用形態は、ここ2年間は拡大しておらず、むしろ減少してさえいる。「呼出労働」や「参入契約(注2)」に至っては、企業側から無視されているに等しい。

これらのデータから引き出しうる結論は、ベルルスコーニ政権によってとられた労働政策が、政府が自ら課した市場の自由化の効果も、反対派が主張した不安定化の効果も生み出さなかったということである。一方で、労働政策が、イタリアの労働市場のパフォーマンスに決定的な改善をもたらしたと判断することはできず、他方で、好むと好まざるとに関わらず、不安定雇用という現象が、評価に値するほど発生したとか進んだと断定することもできない。

統計において著しい増加が見られないことが確認されたとしても、不安定雇用が、従来に比べてより重大な問題として受け取られているのはなぜかという問題は残る。イタリア銀行の最新データによると、2004年には無職だったが、2005年に従属労働ないし独立労働に移行した人々のうちの40.5%が、有期契約、派遣労働またはプロジェクト労働の形態で職を見つけたと答えている。この割合は、ここ数年で徐々に増加している。しかし、こうした不安定雇用形態全体の割合は雇用全体の20%未満に抑えられており、その3分の2は、期間の定めのない労働形態に比較的速やかに移行している。

問題は、不安定雇用が安定的な雇用へのアクセス路としての役割を果たしていることを誰も議論しないことである。知られているのはこれ以外のケース、つまり、労働者が不安定雇用の罠に長期間はまっている場合である。こうしたケースの増加速度は、不安定雇用全体の増加速度よりも速いかもしれない。しかし、このような不安定雇用が問題だとしても、これらはトレウ法やビアジ法によって生まれたものではない。むしろ、脱工業化社会における個人間の生産性の不平等が増大したために生じた現象である。この問題は、弱者層の職業能力を強化し、より適切な職を見つける手助けをすることによってのみ対処しうるものである(このため、キャリアの開始当初に柔軟な移動を可能にする段階を設けることが不可欠である)。一方、こうした人々に関する労働コストを増加させることは、彼らを失業に追いやるおそれがある。

プローディ新政府が提案しているように、有期労働という選択肢を急激に減らすことや、そのコストを増加させることは、労働市場における若年者の弱者層の状況を困難にすることになりかねない。安定的な雇用か失業かという選択肢しかなかった1977年に、まさに若年者の労働市場への参入を促す目的で、訓練労働契約(実質的には1年ないし2年間の有期契約で賃金は低い)が労働組合と左派の政治勢力によって導入されたことを忘れてはならない。この20年間で、毎年何万という若年者がこの「入り口」を通過したが、その3分の2は期限切れのときに通常の雇用形態に移行した。新政府は、こうした経験を忘れるべきではないだろう。

出所

  • Corriere della Sera紙(2006年4月26日付)

2006年6月 イタリアの記事一覧

関連情報