(香港特別行政区)中国からの専門労働力導入に積極策
―包括的人口政策発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

香港の人口の将来の高齢化を見越して、経済活性化を企図した包括的な人口政策が過去6カ月間検討されてきたが、ドナルド・ツァン政務官は2003年2月26日、33項目からなる新たな人口政策を発表し、この中で中国本土の専門労働力の積極的な導入を打ち出した。

従来の扱いでは、一般の外国人は就業ビザを獲得すれば香港に入境でき、就業部門についての制限は課されず、家族の同伴も認められていたが、中国本土の労働力については、1999年の「人材承認計画」と2001年の「中国本土専門労働力承認計画」によって、専門労働力の導入だけが認められていた。しかも、導入を認められるのは、前者では、評価の確立した学術機関から社会的に有用な分野での博士号を認定された者に限り、後者では、情報通信(IT)部門と金融サービス部門の専門労働力に限られていた。そして、このような制限のために、今日まで中国本土から導入された専門労働力は、両計画を合わせても524人に過ぎなかった。

今回発表された政策では、中国本土からの専門労働力に対する導入制限が緩和され、就業可能な部門に関する規制は撤廃され、家族の同伴も認められ、他の一般の外国人労働力並の扱いになった。ツァン政務官は、香港が企画関連サービスのためのこの地域の中枢として競争力を維持するためには、本土からの専門労働力の導入にもっと弾力的に対処することが不可欠になると述べている。

この新たな人口政策では、香港経済の活性化に寄与すべき他の項目も盛り込まれており、外国人投資家で、香港の不動産又は株式市場に650万ドル以上を投資する者は、移民としての居住権を与えられ、また、中国本土の企業家が香港で取引を行う場合の規制(企業設立や製品販売の禁止等)の制限が大幅に緩和されている。これらの施策は、香港経済の活性化のみならず、将来的には新たな雇用の創出を生むことも企図されている。

他方、この人口政策では、社会保障の条件を従来よりも厳しく規定しており、福祉と疾病関連給付を受ける条件として、7年間の居住という新たな条件を設定している。

さらに、約24万人の大労働集団を形成している外国人家政婦については、雇用主に10月から月額400ドルの税を課するとともに、家政婦の最低賃金については4月から400ドル削減し、雇用主の税支払いに役立つようにしている。この雇用主に対する課税と家政婦の最低賃金カットは、財政赤字削減のために家政婦の最低賃金に対して課税する問題(本誌2003年3月号参照)が、フィリピン政府等との軋轢を経ながらも最終的に落ち着いた形態であるが、福祉や家政婦の団体や一部の政党が厳しく反対しているだけでなく、パトリシア・ストウ・トマス・フィリピン労働・雇用相は報復措置を考慮していると述べ、この地域におけるこの問題の大きさを改めて示している。

このように、新たな人口政策には多くの内容が盛り込まれているが、人口調査統計局によると、香港では2031年までに人口の4分の1が65才以上になると予測されており、しかもその58%(500万人)が就労人口でなくなるため、人口政策は将来の労働力との関係で政府の懸案となっていた。それだけに、今回発表された人口政策の今後の成果が注目される。

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