最近の賃金制度改革状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

共産党と政府は、企業の賃金制度改革を経済体制の改革に付随する形で指導してきた。主たる目的は、市場メカニズムによる賃金制度の調節、企業による独自の配分制度の確立、労働者の経営への民主的参加である。現在、ポスト業績連動賃金制、団体交渉制度、経営者年俸制、指標賃金制度などの新しい制度が登場し、地方政府と各企業は、試行錯誤を繰り返しながら、各企業にあった賃金制度を模索している。

1 ポスト業績連動賃金制

ポスト業績連動賃金制は、労働者のポストにより賃金を決め、さらにその達成度により業績査定をし、賃金を支払う制度である。これにはつの特徴がある。

  1. 各ポストの職能・技能的要素を明確にした。各ポストの重要度により差を設け、重要なポストの魅力を賃金により特徴づけた。
  2. 賃金基準、業績連動賃金は、単位の利益額、当該労働者の貢献度と連動する。
  3. 収入の配分格差は、責任の重さ、貢献度、危険度、重労働度により設定した。

全国で、約2から3万社がポスト業績連動賃金制を実施していると見積もられている。ポストにより賃金が変わり、当然高収入のポストに就くには競争がある。その結果、労働者が自己の労働能力を高めることに努力する。

こうした傾向は、家電・自動車製造業、電子機器製造業、IT産業といった新しい産業だけでなく、最近では、国有の鉱工業関連企業などでも採用されている。

例えば、2002年3月、安徽省の3つの国有炭鉱企業は、ポスト業績連動賃金制の採用を決定した。合計20万人以上の労働者がこの制度の影響を受けた。その結果、3つの企業の2002年の決算は、過去最高の生産量を記録し、且つ財務改善の計画目標を完全に達成した。このポスト業績連動賃金制は、3つの炭鉱の絶対的多数の労働者の賃金を増加させた。このため、現状では労働者からも支持されている。

しかし、全般的には、「大鍋飯」(大型国有企業に依存する労働者意識)の風潮は、まだ完全には払拭されておらず、人事制度と利益分配制度に更なる改善が必要と見られている。

2 団体交渉制度

現在、全国で289地域、約3万企業が、賃金を団体交渉で決定している。

一般的には、企業の総経理、労務担当経理、財務担当経理、工会会長が、まず、賃金について協議する準備委員会を設け、賃上げ案を作成し、それを労働者代表大会で協議する。

賃金の団体交渉が実施されることにより、労働者の要求が以前より実現しやすくなっているのは事実である。

3 経営者年俸制

現在、全国28地区で企業経営者の年棒制を試験的に実施しており、約7400企業が導入を試みている。すでに、10以上の地域で企業利益配分制度の試行結果を総括し、経営者年棒制試行制度を定めている。

例えば、浙江省の浙江中大集団有限公司は、1997年、経営者の労働意欲を高めるために経営者賃金年棒制度を採用したが、その結果、当該公司所属の8つの対外貿易公司の業績を年率30%以上向上させた。この企業の経営者年棒制度は、次の表のような構成から成り立っている。

名目 年俸に占める比率
基本賃金 10%
業績連動賃金 50%
株式の配当
(総株式の8%から10%を占める)
40%

4 政府が、賃金制度改革の中で指標賃金を作成

労働社会保障部は、各省の労働社会保障局と協力し、地域毎に指標賃金が作成しつつある。現在、労働社会保障部が、賃金制度改革を断行している実験地区は29地区に達し、108の都市で指標賃金を公表した。また、12の大都市で、標準的労働コストが公表されている。

例えば、深セン市では、2002年9月、指標賃金が公布され一般企業から歓迎された。深セン市が、指標賃金を公布したのは、今回が4回目である。指標賃金作成時のサンプル調査企業数と対象労働者数は、476企業、27万人である。指標賃金が設定された業種は、284業種に及び、2001年比25%増加した。最高年棒は、52.8万元(最高月収は4.4万元)に増額した。大学修士課程卒業者の月収は、6100元、学部卒業の最高月収は3900元である。深セン市の指標賃金は、比較的信頼度が高く、企業が賃金水準を決定する上で重要な参考資料となっている。

中電投資有限公司は、ポスト賃金制度を導入する上で、深セン市の指標賃金を参考にし賃金水準の調整を実施し労使交渉の資料に用い交渉をスムーズに進めることができたと報告している。また、深セン市航運総公司の労務担当者は、国有企業が賃金制度改革を進めている中で管理職の賃金水準を決定する上で有用な指標になっていると述べている。

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