(香港特別行政区)社会保障給付、2003年6月から11%削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

景気と労働市場の低迷下に、香港の社会保障の要である包括的社会保障支援(CSSA)の負担が増大する中で、懸案の財政赤字削減との関連で、公務員給与の削減(I参照)とともに社会保障関連給付の削減が課題になっていたが、政府は2003年2月25日、社会保障関連給付を6月から11%削減すると発表した。

政府はすでに2002年8月、2003年3月までのCSSA関連支出の凍結を決定していたが、さらにこの数カ月間、11.1%にのぼる過去4年間のデフレに即して社会保障関連給付を削減することを提言してきた。この背景には、現在社会保障関連給付の合計が、CSSA、身障者手当、高齢者手当を含めて217億ドルに達し、公共支出の10%を占め、CSSA関連の支出に限っても、2003会計年度は160億ドルに達し、何らの処置も施さなければこの支出が2004会計年度には180億ドルに達するという予測がある。CSSA支給件数は、1997年から48%増加しており、17万9000件から26万8000件に増加している。

このような背景から、今回社会保障関連給付が11%削減されることが決定されたが、高齢者、身体障害者、疾病者に対する給付の削減は2段階に分けられ、10月から6%、2004年10月からさらに5.1%削減され、削減は2年にわたることになった。これは公務員給与の削減が2段階に分けられたこと(I参照)との均衡を保たせるためであり、公務員に対して社会的弱者と比べて対応が甘いとの経済界を初めとする世論の批判に答えるものである。これにより、例えば独身の高齢者に対するCSSA給付は、現在の月額2555ドルから10月には2400ドルに削減され、2004年10月にはさらに2270ドルに削減される。また、この決定により、政府は2003年度の支出を10億3000万ドル、2004年度は15億5000万ドル、2005年度は17億1000万ドル節約できると見積もられている。

香港の世論は、董建華長官が1月の施政方針演説で財政再建を強調したことも受けて、ある程度の福祉関連給付の削減を受けいれており、また、イェオ・エン・キョン健康・福祉・食糧長官は、今回の削減決定は福祉を後退させるというものではなく、政府は低所得層保護の姿勢を変えておらず、他に高齢者対策も施していると述べている。同長官はまた、節約された財源はもっと困窮している者の必要に当てるとしている。またカリー・ラム社会福祉局長は、この決定は物価指数に従ってなされたもので、1998年以来デフレにもかかわらず調整が行われてこなかったが、今後政府は毎年物価の変動に即して給付の調整を行うとしている。

これに対して、福祉団体やリベラル派の民主党等一部の政党は、今回の福祉関連給付の削減決定を批判しており、CSSA受給者は香港社会の最も弱い層に属するのに、この層に財政赤字削減の負担をかぶせることは不正であるとしている。また、香港の財政赤字問題の根本的な解決には経済の回復しかなく、小手先でCSSA支給額等を削減しても、将来の財政赤字削減には役立たないとの声も上がっている。

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