懸案の労働2法案を廃止、新法案の作成で労使合意

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2002年9月に成立が予定されていた「労使紛争解決法案」と「労働者保護法案」の2法案は、労使の強い反対により10月の国民議会に持ち越されることが決定していた。しかし、10月21日に行われた国会第7委員会と労組代表との協議で、同2法案を見送り、新たな法案を作成しこれらの代替とすることが決まった。

旧2法案反対の理由

労使紛争解決に関する1957年第22号労働大臣令(以下労使紛争解決法案)と、労働者保護に関する1969年第14号労働大臣令(以下労働者保護法案)の改訂版は、7月にも成立する見込みであったが、労使(特に使用者側)の強い反対により、8月、9月と審議延期を余儀なくされた(詳細は本誌2002年9,10月号を参照)。

労使紛争解決法案は、労働争議が起きた場合には、従来の労働争議調停委員会(P4P、P4D)ではなく、地方裁判所に産業争議裁判所を設け、そこで調停を行うこととなっていた。この法案に関しては、制度の実現可能性に関して疑問点などが挙げられてはいたが、特に大きな反対はなかった。

一方の労働者保護法案に関しては、労使双方からの強い反対があり、特に使用者から「労働保護の観点が強調されすぎている」との声が強かった。

具体的にはストライキ中の賃金の支払い、違法行為による解雇、解雇時の退職金の支払い、勤続報奨金の支払い、就業時間の規定などの点に関して、経営者から厳しすぎるまたは、不合理との意見が出されていた。

2法案の破棄による変化は

新法案が法令化されるまでは、従来と同様に、労働争議の解決をP4PやP4Dを仲介して労使の協議を重ねて行くことになるが、それには解決までに長い時間を要するという欠点があり、その点は今後も続くことになろう。

さらに、労働者保護法の延期によって、解雇に関する法律は、先に問題となっていた2000年労働大臣令第150号が効力を発することになり、すでに経営者から批判の声が挙がっている(詳細は2001年9月号参照)。

労使紛争が問題化している同国だけに、この問題に関して早急な法令化が、各分野から望まれているといえよう。

新法案は、2003年初めにも国会での成立が見込まれている。

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