燃料価格引き上げに伴い、バス運転手が各地で大規模な抗議デモ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2001年6月15日付の燃料価格引き上げ決定に伴い、各地で公共機関の運転手による運賃引き上げデモが展開され、バスの運賃が一斉に値上げとなった。また燃料価格の引き上げが、日用品の価格引き上げも引き起こし、経済停滞に悩まされている一般庶民に打撃を与えている。

燃料価格引き上げの経緯

経済担当ブルハヌディン調整相は、今回の燃料価格引き上げは、国家財政の膨大な赤字を削減するために必要な策であると説明、燃料補助金支出が減少することで62兆ルピアの支出削減が可能となるとみられている。というのも、2001年4月から国内企業に対して工業用ディーゼルオイルを市場価格の半額で販売するための補助金によって国家財政が圧迫されていたためである(外資系企業に対してそのような補助制度は適用されていない)。今回の燃料価格引き上げに踏み切った大きな要因は、IMFからの財政赤字削減への強い勧告があったためである。

引き上げ後の燃料価格は以下の通りとなっている(下記表参照)。 最後に燃料価格が引き上げられたのは2000年10月で、全ての利用者に平均12%の引き上げを行った。その後も燃料価格引き上げ案が浮上したが、そのたびに労働者などの暴力的なデモが展開されてきたため、今回まで延期されてきた。

公共交通の運転手のデモと運賃値上げ

燃料価格の引き上げが実施された直後の6月16日は、ジャカルタ、シプタット、パレンバン、チレボン、カラワン、サマリンダなど各地でミニバンの運転手やバス運転手らが燃料価格値上げの反対、そして運賃値上げに関するストライキを開始し、多くの通学者や通勤者に被害が及んだ。

また、各地の大学で燃料価格引き上げに反対する学生のデモが繰り広げられた。その後、ジャカルタ市内のバス運転手のデモが暴力的になり、さらに、世界各国からの参加が予定されていた祭典「ジャカルタフェア」には、政治的な混乱を懸念して欠席者が続出、また入場者も前年比の6割程度となり、観光業への影響も懸念された。

6月26日には、ジャカルタ市最大のバス会社PTマヤサリ・バクティの運転手680人は、燃料引き上げに伴うバスの25%のレンタル料金引き上げに反対する大規模なストライキを行い、数千人のジャカルタ市民の足に影響を与えた。次いで27日には、数百人のベチャ(人力車)引き運転手がデモを行った。

そのため、西ジャワ州のバンドンでは、6月17日にも25~30%のバス運賃値上げを認め、19日には東ヌサテンガラ州、西ヌサテンガラの州都マラタム、西スマトラ州都のパダムも運賃値上げを承認した。ジャカルタは20日、スティヨソ知事が、アングコット(小型バス)運賃を16.6%引き上げ、現在の1200ルピア(1ルピア=円)から1400ルピアにすることを決定した。

一方、中型・大型バスの運賃に関して、公共交通機関組織であるジャカルタ陸運業者協会(Organda)は、都市国土交通機関(DLLAJ)に対し最高60%の運賃値上げを申請したが、高すぎると却下され、運賃を引き下げての再申請を行い、7月3日付で最高30%の引き上げで運賃引き上げが施行されることが決定した。

燃料価格引き上げ後の影響とその後の政策

バスの運賃引き上げそのものが、不況下の世帯家計に大きな重荷となることは明らかであるが、燃料価格引き上げ後、首都ジャカルタの市場では、日常品の価格も平均10~25%上昇している。野菜の価格変化は見られないが、ニンニクや玉ねぎなど家庭料理に不可欠な食材の価格は上昇しており、特に唐辛子などは価格が60%も上昇した。燃料価格が食材の輸送費に反映されたためである。

また、バスを利用して通勤する労働者が多いため、使用者にとっても通勤手当の引き上げを検討する必要が出てくると予想される。

政府は、貧困者が受けるであろう燃料価格の引き上げに伴う様々な悪影響を緩和するため、22兆ルピアの予算を割り当て、120万の貧困世帯に特別価格で米の支給を行い、安全な水の配給や低額の融資、児童にワクチン接種や医療サービス、奨学金を提供する予定となっている。

燃料価格の変化(1リットルあたり)
種類 旧価格 新価格 上昇率
ガソリン 1150 1450 26.0%
灯油 350 400 14.28%
ディーゼル 600 900 50.0%

出典:The Jakarta Post、2001年6月16日

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