バリ島テロ事件でさらに悪化が懸念される失業問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

2002年10月12日に起きたバリ島クタにおける爆弾テロ事件により、経済面、雇用面での悪影響が心配されている。特に同島の観光業界が海外からの観光客の激減に悲鳴をあげている。ホテルの稼動率も3割程度と急落しており、土産物店やガイド、旅行代理店などへの負の波及効果は大きい。

テロ事件が経済に及ぼす影響

爆弾事件が起きた10月12日の直後から対米ドルとの為替レートは、1米ドル=9010ルピアから9313ルピアに下落した(10月13日)。また、総合株価指数も事件直前の376から、337まで急落し、スハルト政権崩壊直前の1998年4月以降最低の株価指数を記録した(注1)

経済成長率も、観光業や繊維産業、手工業などの伸び悩みによって、事件前に予想されていた6~7%と予測されていたが、最終的には3%程度に留まるのではないかと悲観視されている。

今回の事件で最も影響の大きかった観光業での収益は、民間研究所INDEFの試算によると3割減となる見込み。インドネシア大学のイクサン氏は、観光収益の減少を7億5000万ドルと推定している。

バリ経営者協会の発表によると、同島のホテル稼働率は、事件前が80~85%であったのに対して、事件後は30~40%と急落しているという。

また、観光客の現象に伴い土産物、主に手工芸品売上の急落と、海外からの買い付けバイヤーの減少などの被害が出ているという。

バリ島の13万人が失業に陥る可能性

上記のような事態を受けて、ヤコブ労・移相は「このまま観光客の減少が続くとバリ島の13万人の雇用が喪失する可能性がある」と発表した。政府は同島に対して、4億8000万ルピア(5214万米ドル)の緊急経済支援を行っているが、観光が同島の経済のバックボーンとなっているために、厳しい状況が続いている。

ヤコブ労・移相は事件後の同島を訪問し、13万人の雇用喪失も、インフォーマルセクターの労働者を含めた場合、過小評価であるだろうと述べている。そのため、経営者は労働時間の短縮などに努め、安易な解雇を行わないように努力して欲しいと呼びかけた。

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