ジャカルタ特別州、最低賃金6.8%引き上げへ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2002年10月24日ジャカルタ特別州政府は、2003年度の最低賃金に関する「2002年第2200号知事通達」を発布し、同州の最低賃金(UMR)の6.8%の引き上げを決定した。これは10月21日に行われた三者賃金委員会で、政労使での合意に達したことを受けたもの。同州以外でも、タンゲラン州が7%、西ジャワ州バンドン市が14%、中部ジャワ州が12%(平均)、リアウ州バタム市が25%の引き上げが検討されている。

インフレ率とほぼ同程度の引き上げ

ジャカルタ州の場合、2002年度の最低賃金が約40%という大幅な引き上げであったため、その額の決定に際して大きな混乱があった(詳細は本誌2002年1月号を参照)。しかし2003年度の最低賃金は、最終的には推測されている同年のインフレ率約10%とほぼ同水準の6.8%の引き上げとなり、労使共にスムーズに合意に達した(2002年の59万1000ルピアから2003年の63万1554ルピアへの引き上げ)。

前年度から、最低賃金の改定に関しては中央政府ではなく各地方政府が自治権を持ち、各地方政府の三者賃金委員会がその決定を行っている。

経営者側は2003年の最賃に関して、(1)(前述のように)2002年度に大幅な値上げを行ったこと(2)10月12日のバリ島のテロ事件で外資の投資が減少し、一層経済が落ち込む可能性が高い(3)そのため、2003年度は最賃の据え置きが最も望ましい、と主張していた。また、日本やオーストラリア、フィンランドなど海外の投資家からも同様の要望があることを明らかにしていた。さらに、他国との最低賃金を比較すると、中国が42万5000ルピア、ベトナムが38万2500ルピアとなっており、インドネシアが高い水準にあることを理解して欲しいと訴えていた。

一方労組は、当初25%の最賃引き上げを求めており、最終的に6.8%の引き上げに合意しながらも、いくつかの労組からは不満の声が上がった。例えば、大ジャカルタ労組(SBJ)のセティヨソ代表は、三者構成で成る賃金調査審査会の調査を例にして、引き上げ幅が十分でないことを指摘した。というのも、ジャカルタ特別州における労働者の1カ月の支出は85万~105万ルピアと推計されており、引き上げられた63万ルピアでも、これらの6割程度でしかないためだ。

ジャカルタポスト紙による労働者に対する街頭インタビューでも、約7%の引き上げは「不十分」、「生活に変化はない」、「引き上げすぎて雇用がなくなることが怖い」などの意見があった。

また同紙の社説でも、最賃の引き上げに関して「首都で暮らすには不十分な額ではあるが、この経済状況下で最賃を無理に引き上げ、雇用・社会不安を起こすよりも、適切な決定であった」とまとめられている。

首都の最賃引き上げは、周辺部にも波及するのが恒例となっており、タンゲラン州の三者賃金委員会でも2003年1月より7%、西ジャワ州バンドン市では14%、中部ジャワ州が平均12%の引き上げが決定している。また、リアウ州バタム島でも10月23日、全インドネシア労働者福祉連合(SBSI)のバタム支所のメンバーが、25%の大幅引き上げを求める声明を出している。

今回の引き上げで賃金の支払いが困難となる企業は、2002年の12月21日までに地方労働局への届出が必要となる。申請後、企業監査が入り、企業の支払能力を調査した後に申請が受理される仕組みとなっている。2002年度に支払い不可能と判断された企業は43社(ジャカルタ州2万6000社中)となっている。

表:ジャカルタ特別州の最低賃金の推移
年度 最低賃金
(ルピア)a
上昇率
(%)
インフレ率
(%)
対ドルレート
(1米$あたりのルピア)b
a/b
1994 112,000 - - -
1995 138,000 23.2 - - -
1996 156,000 13.0 - - -
1997 172,000 10.3 8 2,909 59
1998 172,000 0 77.63 10,014 17
8月 198,500 15.4 - - -
1999 231,000 16.4 2.01 7,855 29
2000 286,000 23.8 9.35 8,422 34
9月 344,257 20.4 - - -
2001 426,250 23.8 12.55 10,261 42
2002 591,266 38.7 10 (予測値) 9,809 60
2003 631,554 6.8    

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