(香港特別行政区)失業率7.8%、最悪記録更新続く

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

政府が2002年8月19日に発表して労働市場統計によると、5月-7月期の失業率は7.8%、失業者数は27万5000人を記録し、ともに最悪記録をさらに更新した。不完全雇用率は2.9%で、前月比で0.1ポイント低下した。この同じ時期の労働力人口は3万5900人増加して349万6000人に達し、雇用者数は2万4300人増加して322万1000人だった。労働力人口の増加は、主にこの時期に大卒と中等教育終了者が労働市場に参入したことに起因している。

香港の労働市場では過去最悪記録の更新が続いており、7月発表の4月-6月期も、失業率が7.7%、失業者数が26万4000人で、それぞれ前期の7.4%、25万2700人の従来の最悪記録を更新していた。この7月に、2002年3月から6月にかけて入手可能な失業統計を得て(国によって統計の発表の回数等が異なるため)、サウス・チャイナ・モーニング・ポストが失業率の国際比較を行ったところ、香港の失業率は欧州先進国レベルになっていた。この比較を示すと以下のようになる。

  • アジア・太平洋地域:タイ2.6%、韓国3.2%、中国3.6%、マレーシア3.7%、シンガポール4.5%、台湾5.02%、ニュージーランド5.3%、日本5.4%、マカオ6.2%、オーストラリア6.3%、香港7.7%、フィリピン13.9%
  • 北米大陸:米国5.8%、カナダ7.5%
  • 欧州(主要国):デンマーク4.2%、英国5.2%、ドイツ8.1%、フィンランド9.2%、フランス9.2%

このように香港で失業の悪化が続く背景には、産業構造の転換や人件費の高さによる独特の高コスト体質等がある。香港では、製造業の多くが中国本土に移転し、IT等のハイテク中心の産業構造への転換を急いでいるが、高い不動産価格や周辺諸国と比べた高賃金に加えて、ハイテク産業を担う人材不足という問題を抱えている。これに加えて、従来の貿易・金融の拠点としての役割でも、成長著しい上海の猛烈な追い上げにあっていることも状況を苦しくしている。(注1)

他方、観光客数の伸びが鈍化していることと消費の落ち込みの影響で、香港では小売業の売上が落ち込んでおり、6月には前年同期比で7.7%減少した。背景には、物価の安い隣接する広東省の深「せん」で買い物や食事をする香港市民が最近頓に増加していることもあり、この煽りも受けて、レストラン業の不振が目立ち、大型レストランの倒産とそれによる失職も目立っている。さらに、個人破産件数も増加の一途をたどっており、2002年上半期だけで1万173件に達し、2001年全体の9151件を超えたが、7月にはさらに増加し、1月-7月期の合計は1万2407件に達し、前年同期比で186%の増加となった(海外労働情報2002年9月号II参照)。

このように厳しい状況の中で、アントニー・リョン財務長官は、香港の失業率の悪化がいつピークに達するかを予測することは困難だと述べているが、地元エコノミストの中には、8月発表の統計で5月-7月期の雇用者数が2万4300人増加したことを、雇用市場に現れた積極的な兆候だと評価する者も存在している。

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